「早く、助けないと…!」

「よせ、死ぬ気か?」

火の海に飛び込もうとする麓を飛影が引き止める
しかし、麓の言う通り時は一刻を争うのだ



「――待って、麓さん!」


爆ぜる音に混ぜって少女の声が聞こえた
麓が声のした方に顔を向けると、そこには琉紅がいた
琉紅は飛影に小さく会釈をすると、炎の海の前に立った


「琉紅、」

「大丈夫。ちょっとの間眠るかもしれないけど、その時はよろしくお願いしますね」

呼び止めようとする麓にそう言って気が抜けたように笑う
それから胸の前で手を合わせて何かを祈るような体勢をとった
ゆっくりと眼を閉じると、琉紅の首飾りが白い光を放った
その光は炎の海を囲むように伸びる
光が触れた箇所から炎が鎮火していく

やがて白狐の森全体を光が覆う
枯れていた木々や倒れていた狐達が息を吹き返し、重度の火傷も見る見るうちに癒えていった

完全に森の修復が完了すると光は消えていき、フッと琉紅は意識を失った
倒れそうになる琉紅を寸での所で飛影が受け止める
耳元で規則正しい寝息が聞こえた
強大な力の反動は飛影もよく知っている

昔を思い出し、柄にもなく『微笑ましい』と、そう思った



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