「この国王は死に際に自分の息子に全てを託した。だがしかし、残りの王2人は、最初、この息子を見縊っていた。…どうしてだか分かるか?」
いきなり話を振られ、あたふたする梅流
「えっと…えっと…やっぱり、お父さんと違って、力が弱かったから…とか、まだ子供だったから…とか?」
「まぁ、半分は正解だな。その息子は、元は人間だったんだ。だが、ある日を境に妖怪としての力が目覚めた」
「その息子は、決して弱くは無かった。むしろ強いくらいだったさ。それでも、王2人と父親には敵わなかった」
「王2人は最初こそ見縊っていたものの、次第にその息子の何かに惹かれて行った。…と、この辺は俺達にはあまり知らされて無いからよく分からないがな。さて、本題はここからだ」
ゴクリ、と息を飲む
流蘢が油が切れかかっている燭台に油を注ぐ
「丁度、その辺りなんだ。『アイツ』が現れたのは…」
まるで、遠い昔を見るように麓は目を細めた
「この『白狐の森』と、隣接する『銀狐の森』とは別に、もうひとつ森が隣りに有ったんだ。名前は『金猫の森』。『金華猫』という猫の妖怪が支配する森だ」
「今まで俺達とは友好的だった『金猫の森』の連中が豹変した。理由は分からない。いきなり俺達の森を襲い出したんだ」
「そして、つい先日、族長が現れた。ソイツは、あろう事か―――瑪瑠、お前の記憶を奪ってしまったんだ」
―――!!
ハッとして、梅流は頭を抱えた
何かが、頭の中で叫んでいる
「お前は、記憶を消されたまま、その姿に転生した。お前の記憶を消した張本人の名は―――『娑羅(サラ)』だ」
――遠くで、雷が落ちる音が聞こえた
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