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今日も今日とてバスケ部のみんなは厳しい練習を終えて、今は片付け中。

私も片付けを手伝いながら…あることを考えていた。

バスケ部の練習を手伝うことになってもう少しで1週間。

実は、意を決して手伝うと決めたものの正直不安だった。

裕也君とは元々仲が良いし、緑間君は中学からの後輩、先輩達もいい人ばかりで知り合いが全くいない完全アウェイな状態では勿論ない。

でもやっぱり部外者がいきなり入ってくるのは他の部員の人達には嫌がられるんじゃないかと思っていたから、それなりに覚悟もしてたんだけど…


『少しイメージと違った…かな?』

「何がっすか?」


思わず声に出た呟きに反応したのは高尾君…いつの間にいたんだろう。全然気付いてなかった。

まあ聞かれても問題ないからいいのだけど。


『いやー本当は反感持たれてたり、風当たり強いのかなと思ってたんだけど…。逆に親切というか何ていうか…少し驚いたなあって』

「ああーそれはですねぇ…み「高尾、お前ちょっと来い」…えっ、ちょっ裕也さん!?」


何か言いかけていた高尾君は何故か裕也君に連れて行かれてしまった…しかも裕也君怒ってた?

色々と疑問の残る行動に首を傾げていると


「苗字、サボってんじゃねーよ」

『宮地先輩、痛いです…あとサボってないです』


頭を小突かれたと思えば宮地先輩がそこにいた。


「ボーっとして手止まってただろ」

『…先輩よく見てますね』

「なっ…そんなわけねぇだろ!偶々だ…っ!」


私の言葉に顔を真っ赤にして怒る先輩、軽く言っただけなのに…。

でもこんな先輩は珍しくて少し可愛く見えて頬が緩む。


「…何笑ってんだよ」

『特に理由はないですよ』


ジト目になる先輩にそう答えれば腑に落ちないと言った表情…をしたかと思えば盛大に溜息を吐かれる。


「はあー…まあいい。それで何かあったのか?」

『ああ、かくかくしかじかで…』


ざっくりと内容を話すと私の言葉を聞いた先輩は――何故か青筋を浮かべていた。


「…わかった。とりあえず高尾を轢いてくる」

『どうしてそうなるんですか!?』


慌てて止めるのもむなしく宮地先輩は高尾君を探しに行ってしまった。

…とりあえず高尾君の身を案じとこう。

そう思い再び手を動かし始めると。


「苗字」

『大坪先輩!どうかされましたか?』

「いや、用はないんだが…疲れてないかと思ってな」

『大丈夫ですよ!これももうすぐ終わりますし』

「そうか。でも無理はするなよ」


私の頭を撫でながらそう言う大坪先輩は本当に優しい人だ。

練習中は勿論厳しいけどちゃんと優しさも持ち合わせている。

部をまとめることの出来るキャプテンシーが備わっているのだと思う。だからみんながついてくるのだろう。

あっもしかしたら大坪先輩なら…


『大坪先輩、少し聞きたいことがあるんですけど』

「ん?何だ?」

『実はさっき…』


先程の宮地先輩と同じ様に大まかに話す。

すると、大坪先輩は少しだけ目を見開いたかと思えば優しく微笑んだ。


「アイツらからは口止めされてたんだが…実はな、苗字が手伝うのを何人かの部員からは反対の声があったんだ」

『…やっぱりそうでしたか』

「でもそれを宮地達がな、説得したんだ。まあキレてはいたが」

『…!』


どうして?という言葉さえも出なかった。

そんな私に大坪先輩は続けて言う。


「本当なら俺の役目だったのを…宮地も、裕也も相当苗字のことを信頼しているからな、アイツらが代わりに言っちまったんだ。高尾もそれに加勢して、最後は緑間も加わって…まあそれが決定打でみんな納得したんだがな」

『そう…だったんですか…』


あまりにも嬉しすぎる事実に泣きそうになる。

私にこれを言わなかったのは私を傷つけたくないという優しさから。

先輩達も裕也君も、緑間君もみんな…本当に…


「もうー宮地さん達少しは手加減してくださいよー」

「うるせぇ高尾、埋めるぞ!」

「お前が悪いんだから自業自得だろ」


どこにいたのか、戻ってきた3人が目に入った私は――気付いたら3人の所へ足が動いていた。


「あれ名前さんどーしたんすか…って、えっ!?」

「「はあーーー!?」」


高尾君に抱き付いた私。何だろう自分でもよくわかんないけど…


『ありがとう、高尾君』

「へ?」

「オイ、高尾…お前何しt『宮地先輩もありがとうございます』…おまっ…」


次に宮地先輩を抱き締めてお礼を言い、最後に。


『裕也君も、いつもありがとう』

「お、おお…」


冷静に考えてこれってセクハラかなとも思ったけど…ありがとうって言葉だけじゃ伝えきれない。

そうなると自然に体が動いていた。

3人は何が何だかわからないって顔をしているけど、それでも…


『本当にありがとう!』


断らなくて本当に良かった。先輩も、同級生も後輩もみんな優しくて温かくて…こんな人達の手伝いを出来るなんて感謝しかない。

心から応援したい、このチームのサポートとして力になりたい。

そう思った夏の日。



(おまけ)

「…名前さんスゲー柔らかかったっすね…」

「「ああ…」」

「つーか…宮地さん達大丈夫っすか?」


未だ微動だにしない宮地兄弟にそう問う高尾。


「アイツのああいう所、本当に心臓に悪い…」

「ああー…マジでヤバい…」

「(…名前さんも中々罪な女だなこりゃ…)」


先輩達の普段見れない姿に苦笑するしかない高尾なのであった。


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