旧夢 | ナノ

▼ポル連載3

アブドゥルが再び度に加わって、ンドゥールと戦うまでの間、俺達はナマエが戦う状況を避けてきた。その甲斐あってかナマエは一度も大怪我を負ったことはない。

ナマエもスタンド使いとして十分に戦えると知っていたけれど、戦闘後、能天気で悪戯な笑顔を見せてくれるだけで十分だった。
けれど今回は運悪く全員で襲撃を受け、結果ナマエは足をバックリと切っていた。
平気そうに笑ってはいるがかなりの出血だった。横抱きは足をぶつけそうだからと背負って病院へ担ぎ込んだ。

治療後。どうしても気持ちが落ち込む俺を他所に、ナマエは能天気にアブドゥルに貰った林檎を齧っている。病室のベッドで、物静かに座るナマエはいつもよりも儚げだった。
「ンドゥールは強かったね」
ポツリとナマエは俺に言う。
他の奴らは出かけていて、この病室には俺とナマエの二人だけだ。
「悪には悪の救世主が必要だって。じゃあ悪じゃない人の救世主って誰なんだろうね。そんなの居ないよね。大昔に居たって信じてる人はいるけどさ」
「今のお前には看護士さんだろうな」
「そーかも。でも結構乱暴よ。包帯巻かれた時はンドゥールにやられた時より痛かった。」
ギャーと叫ぶナマエの顔を思い出した。
確かに思い出してみればンドゥールにやられた時よりも辛そうだった。
「まぁでも、誰も死ななくって良かった。」
「そうだな。」
俺の沈みきった声に気がついたのか、そこでやっとナマエは俺の顔を見る。

「ポルポルどうしたの」
「お前そのポルポルってなんだ」
こんな状況でなんて呼び方しやがるんだこいつは。俺はいけ好かないホル・ホースの野郎を思い出す。
「いけね、間違えちゃった。」というナマエは林檎を綺麗に種部分だけ残して完食して見せた。
「…ポルナレフ、花京院もアブドゥルも無事だった。イギーっていう可愛い仲間も増えたんだし、そんなに落ち込むことじゃないよ。承太郎がイギーをぶん投げた時はびっくりしたけどね。」
「そういうことじゃねーよ。」
ナマエの肩にそっと手を置く。俺はナマエを見つめて言った。

「なぁナマエ、この旅を降りてくれねーか。」
「なにそれ。置いてかれたら寂しくって自暴自棄になっちゃうわよ」

ナマエらしい言い方に俺は笑った。
「それもそうだな。その方があぶねーや」
本当に自暴自棄になってDIOのところへ一人で行ってしまうかもしれない。
場所も知らないくせに不思議とナマエならやりかねなかった。

「私の知らないところで死んだりしちゃ嫌だな」

突然さっきまでのふざけた声をやめて、呟く。
いつも以上の艶やかさに下腹部にジンッと熱が行く。な、何て声を出すんだこいつは!
「ふふ、ポルナレフ顔赤いよ。ねぇ私甘い物が食べたいな。何か買ってきてよ」

ナマエはきっと自分を庇うな、と言いたいんだろう。
だが言ったところで俺達の性質は変わりはしない。
生きて帰ったらあいつどんな生活を始めるんだろうか。
きっと世界中を飛び回って俺や承太郎に会いに行くんだろう。
一緒にフランスに帰…、と俺は思いかけてやめた。
花嫁姿のナマエなんて想像できないからだ。

To be continued


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