旧夢 | ナノ

▼ポル連載2

シャワーから出ると、皆部屋に集まってカードゲームをしていた。
ポルナレフがベッドの真ん中、ジョセフさんと、承太郎が端に腰掛けて、花京院が椅子に座って円を描くようになっている。
日本じゃ馴染みがないけれど、海外は家族でトランプをよくしてるらしい。持ってきたのはジョセフさんだそうだ。

髪をタオルで拭きながら観戦する。
ドライヤーをかける前にのんびりと髪を拭くのが結構好きだ。
肩から湯気が出るのを感じながらポルナレフの後ろに座る。
「なんのゲーム?」
風呂上りの匂いに花京院がドキリとするのがわかった。男の子が表情を崩すのを見るのはいい気分。
「ババ抜きだよ」
ポルナレフが承太郎の手札から一枚引く。
スペードの10だ。対になるハートの10を捨てる。
「今ついでに隣のカードも捨てちゃえば良いのに。」
「お前どういうゲームか知ってるのか?」
「トランプはイカサマを楽しむゲームよ。」
「ババ抜きはイカサマをするとすぐにわかってしまうんですよ。」
花京院に言われて少し考える。そうか、偶数じゃなくなったらすぐわかるんだ。
「あれ、でも奇数よ?誰かもうしてるんじゃない?」
「お前本当に知らないのか!?」ポルポルが信じられない、と言う風に私を見る。

「し、知らないと何か悪いの?」凄く面白くない。
私が口を尖らせて言うとジョセフさんが優しく教えてくれる。
「ジョーカーが一枚だけ入っているんじゃ。これを最後まで持っていたら負けだ。」
「で、同じ数字が二枚になったら捨てていくのね。」
意外に簡単なルールだ。
「それにしてもナマエさんが知らないとは意外ですね」
「そーぉ?大貧民とブラックジャックしかしたことないのよ。」
と続けると「大富豪じゃねーの」とポルナレフが言う。

「ねぇ次は私もやる。何か賭けよーよ」
「おっいいな賭けようぜ。じゃあ負けるごとに秘密を一つ話していこうぜ」
「よしきた」ジョセフさんも乗り気だ。
花京院も承太郎もまんざらでもない。
「あ、髪乾かすから待ってて!」

慌てて乾かして戻ると既に配られてた。
このゲーム、誰がババを持っているかの推理とポーカーフェイスがなかなか面白い。
やっていくとイカサマしてもリスクの割りに効果が薄いことがわかる。
承太郎が私のババを引く。ピクっと一瞬眉が揺れた。
ポルポル君は気がついていないようだけど、ジョセフさんが目元だけ笑う。
白熱したババ抜きは結局私がポルポルにクラブの5を引かれて終わった。

「じゃあナマエちゃ〜ん!罰ゲームの時間だぜー」
「いやーん何話せばいい?私の秘密でしょー」
「誰にも言えないような秘密ですよ」
ポルポルは勿論のこと、花京院もニヤニヤしている。

「じゃあとりあえず三つ出す。その中で聞きたいことを言って。
1、恐怖の出産ババア。2、初体験の話。3、身包み剥がされて山に捨てられた話」
「なんだよ恐怖の出産ババアって」ポルナレフが爆笑する。
時刻は11時を回っている。ジョセフは「2番が気になるの〜」とニヤニヤする。
どうせどれもエログロですよ。と心の中で思う。特に1番が。

「ぼ、僕は2番が気になります。」突然花京院が言うのでなんとなく2番になる。
実は結構みんなエロいもの好きだ。う〜ん、緊張する。
私は柄にもなく頬が熱くなるのを感じた。初体験が滞りなく綺麗に済めば秘密になんてならない。
私は最初の言葉を探した。

「…とっても素敵な人だったわ。私は高校生、彼は大学生だった。
デートの帰り道、送ってくれるって言うからお願いして、その頃の私は高校生だけど一人暮らしだったの。」

「送り狼ってやつか」ポルポルが言う。
「そう。玄関でありがとう、って言ったら突然そのまま押し倒されて。
とっても素敵な人だったから、仕方ないかもと思って。何よりキスが上手かったし。」
花京院がごくりと唾を飲む。承太郎は背を向けて煙草を吸い始めた。
「胸を弄られてとろんとしちゃって。そしたらアソコが痛くなった。」
「痛くなった?」ジョセフさんが言う。目はギンギンに光っている。なんておじいちゃんだ。
「突然彼は指を入れてきたの。私もそれなりに濡れてはいたけど、初めてだったし。
もう痛く痛くって思わず彼の下腹部に蹴りを入れたわ。渾身の力を込めてね。
スタンドもその時初めて発現したのよ。姿を見せただけだけど。彼は外の廊下に伸びちゃって。」
承太郎が肩を揺らしている。笑ってるね。笑いなさいよ。恥ずかしいから秘密なのよ。

「それで、その後はどうしたんじゃ。」
「何事もなかった振りして救急車を呼んで。彼は搬送されて行ったわ。
私は16歳だったし、彼は22歳だから警察にばれたら彼が捕まっちゃう。
だから誰にも相談できなかったし、私のアソコからは血が出てた。最悪の処女喪失だった。
トイレでさめざめと泣いたわ。彼は打撲で済んだから、今は元気にやってるんじゃないかな。」

ポルナレフもジョセフさんも腹を抱えて笑っている。
花京院だけが真面目な顔をしている。

その後も興が乗ったポルポルとジョセフさんに先導されるままババ抜きは2回ほど続いた。
次はポルポルの十代の頃の失敗、ジョセフさんがホリィさんを保育園に連れて行ったときの話。
結構な恥ずかしい失敗を抱えていてあの承太郎も過呼吸寸前だった。
ジョセフさんと高校生二人が引き上げていくと、未だ笑いっぱなしの私をポルポルが立たせた。
「ほら、いつまで笑ってんだよ。もう寝ねーと」
と言いつつポルポルも思い出し笑いをする。
「わかってる。ポルナレフ、あんたも大概ね。」
十代のポルナレフはそれはそれは無鉄砲だった。それを思い出して言う。
「おめーもな」


ポルナレフのベットを片付けて布団を捲って「一緒に寝る?」と言ってやった。
「腹蹴られても困るからな」と笑うポルポルに私も笑った。
自分のベッドに入ってサイドテーブルのランプをつける。それを見てポルナレフが部屋の明かりを消す。

「なぁナマエ。」
「なに?」
ポルナレフは真っ直ぐベッドへ入ると思っていた。
けれど彼は私のベッドに片足を乗せて私に覆い被さる姿勢をとった。
堀の深く切れ長な目。澄んだブルーの瞳が目の前で煌いて真っ直ぐ私を見つめている。
なにより、距離が近い。
「他の男にはやるなよ。お前だったら野郎共が妙な気を起こしても仕方ねーぜ。」

『一緒に寝る?』のくだりのことだ。ポルナレフの高い鼻が私の鼻の数センチ先にある。
頭と心臓がジンジンした。今の私の顔はからかわれた時の花京院をも凌ぐ赤さだろう。
ちゅ、とポルナレフは私の額に、それこそ妹にやるような口付けをして離れていった。

「ホラ、電気消せよ。」
慌てて電気を消した私の動きが迅速すぎたのか、ポルポルが笑う気配がした。
To be continued


| novel top |


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -