旧夢 | ナノ

▼先輩ヒロイン5

学校帰り、私の興味は今更になってあの救急車に轢かれた男へズルズルと流れていった。
退屈な学生である。

退屈かというと、最近は恋愛方面が活発になってきて退屈ではないけれど、
仗助君が居ない時はやっぱり退屈だったのだ。
そもそも、友達もいないし。仗助君に飽きられたらまた退屈な日々に逆戻りだろう。
寂しさも増す、と思うと恋愛は退屈しないものだ。いいか悪いかは別として。

「ナマエ」
教室へ仗助君は迎えに来た。
ギョッとして見る女の子がチラホラ居る。これはその内虐められても仕方ないかも。
私は荷物を纏めて教室から出て、仗助君に合流した。
屋上で少し吹く風に髪を遊ばれながら昼食を食べる。

「学校では前のように呼んでくれた方がいいな。」
「なんでッスかァ」
「だって仗助君は人気者よ。その内私妬まれて虐められるわ。」
んなことしたら俺が許さねースよ、と言い返す仗助君に、
「授業中も見てられる?無理でしょ」と返すと仗助君はしょんぼりとした。

「…ごめんね、私友達も居ないからそういう時に庇ってくれる人居ないのよ。」
ああ、友達居ないって知られたら嫌われるかしら。
「んなこと知ってますって」と仗助君が言う。知ってたの。あ、そう。
「俺、ナマエのこと愛してますからねーそれくらいわかってンスよー」
ほんの数日前は全然こういうことをしなかったのに。仗助君は私の両手をとって頬擦りをした。
恥ずかしがるのすら恥ずかしい。

「だから、今日は俺の友達を紹介しようと思って」
そのうち来る、と言うのでのんびりと緊張していると億安という強面が来た。
仗助君と付き合うにあたってそれらしい人が来ることは理解していたけど、そういう人だけだったらどうしよう。
億安君は「お前ミョウジ先輩じゃねーかよ!何でこんな可愛い人と!」と過大評価で驚いている。
「いいだろー。…なあ康一たち遅せーな」と仗助君が億安君に言うのでまだ来るのだろう。

確かに私は両親からちょっといい顔を賜ったので入学当初は少し持て囃された。
でも段々と性格が残念だったことがみんなにバレて今では残念な子扱い。
仲の良かった友達も、感覚がずれてることに気がついて距離を置かれた。私は変人らしい。
同学年には良く知られているのかもしれないが、…そうか1年生にはまだバレていないのか。
それは少し良かった。私は億安君と自己紹介をして、色々と話した。

「お、康一達来たな、遅せーよ康一ィ!!」
「ごめーん」という低身長の康一君は かの有名な美少女、山岸由花子を連れている。
「初めましてー」と和やかに挨拶する康一君はやっぱり由花子ちゃんと付き合っているらしい。

想像より自然に、和やかに食事が始まった。会話の流れで、
「由花子ちゃんって私の学年じゃ有名よ。美人だって。
康一君と付き合ってることが知れたら泣きだす男の子出たでしょ。」
と、お世辞でもなく思ったことを口にしたけれど、由花子ちゃんはまんざらでもない様子。
ニコリとたおやかに笑ってくれた。可愛い。
「由花子がぁ!?そりゃ確かに由花子は美人だけどよォー!」
と仗助君は意外そうだ。億安君も続く。
「由花子はプッツンだから同学年で手を出そーって奴いないよなー」
「プッツンって何よ」
気のせいか由花子ちゃんの髪が揺れる。
仗助君と億安君の反応を見るに、彼女は私と同じようなものらしい。
パッと見は綺麗、中身は毒。会話ができるのは極一部。
由花子ちゃんと同じ土俵はかなり厳しいけれど。

康一君のお弁当と由花子ちゃんのお弁当はおんなじだった。
凄いなー一般的なカップルじゃないですかー。
「ナマエ、あのよー」
言いたげな仗助君を無視する。
そこを目敏く由花子ちゃんが追撃。

「ナマエはお弁当作らないの?」明らかに仗助君のことを含めて言っている。
「うーん、料理できないわけじゃないんだけど、お弁当茶色くなるのよ。栄養偏るし。」

普通に作ればいいんですけどね、海苔弁しか作らないんです。とは言わなかった。
一時期まだ友達が居た時期にお弁当を頑張って作っていたけど毎日海苔弁だった。
流石に笑われて以降はお弁当を作らなくなったけど。
由花子ちゃんは「努力が足りないのよ」と言って笑った。やっぱり可愛い!

「俺は茶色くっても全然構わねーッスよ」
チラチラこちらを見てくる仗助君を無視する。
絶対焼肉弁当か何かと勘違いしてる。

コンビニのおにぎりを剥きながら、何が好きかと聞かれて、
実は割りとオカルトが好きだ。と言うと意外に盛り上がった。
億安君は意外に霊感が強いらしい。康一君も一度や二度は金縛りにあったという。
いつの間にか都市伝説の話に発展して

「そういえば、最近救急車で轢かれた事故も都市伝説の匂いがするよね。」
と言うと全員がピタッと動かなくなった。私また間違えたかしら。
「調べたいとは思ってるんだけど、あんまり調べられることってないのよね。事故だし」
と無理矢理に続けると仗助君が
「あれは本当に事故ッス」と言い切った。
ズギュンッと興味が引かれる気がしたけれど、みんな妙な空気なのでこれ以上聞かないことにした。
絶対これは何かあるぞ。でも、無理に聞き出すつもりもないので諦めることにする。今は。
いつか「実はあれさー」と言って誰かが語るかもしれない。

「そ、そういえば支倉君って知ってる?宇宙人って本当?」
私は空気をどうにかしようと最近噂の支倉君のことを聞くことにした。
「お、それが俺もわかんねーんだよ」と億安君が乗る。
「本人がそうだというからよー俺も信じることにしたんだ」
「嘘をつくよーな奴じゃねーし…だけどそれは謎だぜ」と仗助君も言う。

あいつアイス携帯してんだぜ、と億安君が語るので笑ってしまった。
本当に持ってるとしたら凄いことだ。
ベッチャベチャに溶けたアイスを差し出してくる姿を想像したが、どうやら違うらしい。

そんな感じのことがあって、お昼休みは楽しく過ごすことが出来た。
どうやら由花子ちゃんは私を気に入ってくれたみたいで、友達ができた。
教室へ戻ると少し居心地の悪い注目を浴びていたけれどまあ良いだろう。
To be continued


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