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「#エロ」のBL小説を読む
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「王様ゲーム!」
「「「「「イェーイ!」」」」」
「…イェーイ」

松野家二階の六つ子の部屋にて、ただ今王様ゲームの真っ最中。
一松がワンテンポ遅れで拳を上げ、みんなが一斉に場に伏せられたトランプを引く。スペードの1から6までとキングのカード。
さあ、私は何が当たるかな?

事の発端は、いつものように集まってぐだぐだと中身のないお喋りをしていた時。
前にトド松が一人兄弟を出し抜いて合コンに行きかけた、という話になった。
そこから、そもそも兄さんたちは合コンに不適切な人間だというトド松の主張と、行ってみないと分からないという兄たちの主張がぶつかり合い、合コンによくある王様ゲームのシミュレーションをしてみようということになった。
みんなの合コンの向き不向きをジャッジするために私もゲームに参加させられた。王様ゲームなんてやったことがあまりないから、内心ちょっと緊張している。

ドキドキしながら引いた最初の数字は4だった。当たりませんように…

「んじゃ、王様だーれだ」

おそ松の言葉にトド松がキングのカードを見せた。

「はーい僕〜!」
「お、トド松か。命令は?」
「んー、そうだなぁ…」
「杏里ちゃんもいんだから、みんなができるのにしろよ」
「んー……よし、決めたっ」

トド松がにっこり笑って、場に緊張が走る。
王様は自分自身を指名できないというルールを設けたものの、一体どんな命令がされるのか…

「…2番の人は3番の人の膝に座ること〜!」

おお、けっこう普通だ。
と思っていたらみんながなぜか一斉に私を見た。

「…いや、私4番」
「クッソォォォォォ!」
「ふざけんなよトド松!そんなん兄弟でやったって空しいだけだろ!」

カラ松とおそ松が顕著な反応を見せた。当たったのはこの二人か。
トド松はどこ吹く風でおそ松の抗議をかわしている。

「いや、最初の目的忘れてない?これ合コンでの王様ゲームって設定だから。合コンだったらこういう命令ばっかりだよ?臨機応変に、どう対応するかを見るための王様ゲームでしょ」
「ぐ…確かにそうだけど!」
「杏里ちゃん、この反応どう?」
「そうだな…男同士が指名される場合だってあるだろうから、その時のノリが良くないと場が盛り下がっちゃうよね」
「てわけで、本気の抗議をしてきたおそ松兄さんマイナスポイント〜」
「えーっ!?もうそんなとこから見られてんの合コンって!?てかカラ松はぁ!?」
「カラ松兄さんは王様に文句言ってないし、本気で悔しがってる姿がウケるかもしれないと判断しました」
「おお…トッティ…!」
「で、どっちがどっちだったの?」

チョロ松の言葉におそ松が立ち上がり、あぐらをかいたカラ松のところへしぶしぶ腰を下ろした。

「…はぁーあ…杏里の膝ならまだしも何でカラ松…」
「フッ…俺もいささか残念だが安心しろ、俺の膝は全てのカラ松ボーイズ&ガールズのものだ」
「いや俺カラ松ボーイズじゃねーし…何だよこの絵面…」
「俺達から見てもクソみたいな絵面だよ」
「ふふふふっ…でもなんか、すっごい可愛い…!」

普段こんなスキンシップを取ることのなさそうな二人だからか、この姿は仲良し兄弟って感じでほのぼのする。
そう思ってつい笑ってしまった。

「ね?女子にはこうやってウケる場合もあんだよ。そうやって女子ウケ学んでこ?」
「全っ然杏里のウケどころ分かんねーんだけど…ま、いっか。次引こ次」
「いい?王様になっても女子が引かなそうな命令にするんだよ。それも大事だからね?」

トランプが戻されて混ぜられ、せーので引く。

「はい王様は〜?」
「……俺」
「一松か…」
「一松兄さん、リア充っぽい命令でね」
「え……」

トド松に念を押された一松は難しい顔をしながらじっと無言で考え始めた。私たちも固唾を飲んで見守る。

「…じゃあ…あー……手」
「手?」
「手を、繋ぐ…1番と5番が」

またなぜかみんなが一斉に私を見た。

「…私3番」
「あああああ…!!」

トド松が頭を抱えてうめいた。きっとトド松がどっちかの番号だ。
もう一人はと見渡すと、ドヤ顔のカラ松がトド松に手を差し出していた。

「最悪だぁ…」
「俺の右手が寂しがってるぜぇトッティ?」
「最悪だぁ…」
「トッティ〜?」
「トド松、繋がなきゃ次進めないよ」

笑いをこらえた私が促してようやくトド松はカラ松と手を繋いだ。
むすっとしたおそ松とトド松に、女の子と触れ合ってるわけでもないのに得意気なカラ松。面白い図だ。
思わず吹き出すと、チョロ松と一松と十四松も笑いだした。

「何なのこれ…!」
「地獄絵図…」
「良かったね二人ともリア充気分味わえて」
「「どこが!」」
「フッ…照れなくてもいいんだぜブラザー?」
「あ〜んこんなのただの罰ゲームだよぉ〜!」
「んん?」
「はいはい、次引こうね」

トド松をなだめて次に移る。
その後も私は一向に当たらず、王様になることもなく、六つ子のリア充シチュエーションを見るだけの時間が過ぎていった。
最終的にカラ松の膝に座るおそ松は一松と服を交換し、カラ松と手を繋いだままのトド松は一松に膝枕をし、ネクタイをつけた半裸の十四松は猫耳をつけたチョロ松にせっせとポップコーンを食べさせてあげていた。
もちろん頭を撫でるとかおでここつんするとか壁ドンするなんていう一度で終わるものもあったので、みんなの顔はボロボロだ。あ、十四松は楽しそうだけど。
私は座布団を抱きながらさんざん笑い転げていた。

「はぁ…ふはっ…ひどい光景だ」
「それを言わないで杏里ちゃん」
「僕らはもうズタズタだよ…」
「つか何でお前当たんないの?イカサマしてる?」
「してるわけないでしょ。どうやってするの」
「今日一のラッキーガールだな、杏里」
「ふふ、そうでしょ」
「…もう次でラストゲームにしようぜこれ、俺たちの心だけどんどんすり減ってく…」

おそ松の言葉を皮切りにトランプがまたぐちゃぐちゃに混ぜられ、せーのと号令がかかる。

「はい王様はー…」
「あ…俺」
「チョロ松、もう適当でいいから…」
「うん…えー、6番が下からお菓子持ってくること」
「あ、私だ。行ってくるね」

カードを置いて立ち上がると、みんなの表情がさっと変わった。

「…チョロ松てめぇぇぇ!!」
「は!?今お前が適当にやれっつっただろ!?」
「ふざっけんなせっかくの杏里ちゃんフラグをォォォ!!」
「マジ使えねえクソ三男…」
「使えなーい!!」
「はぁぁぁ!?もっぺん言ってみろ!」
「…お菓子取ってくるね?」

争いを始めた六つ子を置いて部屋を出た。あの程度のいさかいなら日常茶飯事なので放っておいても大丈夫。
階段を下りて勝手知ったる台所へ。松野家のお菓子の隠し場所は食器棚の一番右上の奥。そこになければ一番下の棚だ。
おばさんからも許可をもらってるので、ためらいなく棚を探させてもらう。
右上の棚からはカゴに入ったポテトチップスの袋が二つ見つかった。コンソメとバーベキュー。
悩んでコンソメだけ取り出し、ついでにお盆にコップを七つ置いてお茶を入れた。
チョロ松、ポップコーンほとんど食べてたからきっと口の中パサパサだろうな。
ポテチの袋を脇に抱えてお盆を持ち、こぼさないように階段をゆっくり上がる。みんなの部屋からは言い争う声が聞こえなくなっていた。もう落ち着いたかな?

「お待たせー…」

そっと戸を開けると、みんなは伏せられたトランプを中心に静かに輪になっていた。
膝枕も手繋ぎもしてないし、服も元通りだ。さっきのでゲーム終わりとか言ってたのに、やる気に満ちている顔つき。

「…お菓子持ってきたよ」
「うし、ゲーム再開な」
「あ、まだやるんだ」

やっぱりか。仕切り直しってことね。
早く座るように目で促されたのでお盆を置いて座る。

「いくぞ。せーの」

引いたのは2のカード。
みんなに目を配ると、全員私の方をちらちらと見ていた。
微妙に変な空気だ。私が当たるかどうか賭けてたりするのかな。

「…はい、んじゃ、王様だーれだ」
「はい僕」
「トド松か。頼むぞ」
「分かってるって。えーと」

気のせいか少しトド松が不敵に笑った気がした。

「1番の好きなところを挙げて告白する!2番が」
「うっ、そでしょ…!」

ついに当たってしまった。しかも告白って!この六人の誰か相手に!?
焦って見回すと、十四松が意気揚々と袖の伸びた両手を上げた。

「ははっ、やったー!ぼくだー!」
「十四松かー…十四松ならまだ…」
「何だよ十四松ならまだって、俺らは論外ってこと?」
「そういうことじゃないけどー…」
「杏里ちゃん早く早く!」
「うう…」

告白なんてリア充の一大イベント、青春クラブを発足させた私がやったことあるわけない。しかも他の人の見てる前で。
ゲームの一環としての告白だってことは分かってるけど、同じ顔六つに注目されてものすごく緊張してきた。
私の前に移動してきた十四松に対して視線もままならないし、何か体温も上がってきた気がするし、さっきから無駄な手の動きが多い。そんな自分の状態に気付いてまた緊張が高まる。

「…えっと…えっとね…ちょっと、待って……」
「………ぼくこれだけでもじゅーぶんな気がしてきたなー」
「…うんまあ、癒されるっていうか、何だろうねこれ…」
「なんでか優しい気持ちになってくんだけど…」
「萌えだね…間違いなく萌え」
「これが、あの青春というものなのか…!?」
「…杏里ちゃん早く」

一松が猫じゃらしで口元をくすぐってきた。

「ううう、分かった…あの…十四松」
「はい!」
「じゅ、十四松はー…野球、上手だけど、みんなが見てないところでたくさん努力してるから上手いんだよね。一人で黙って努力し続けられるってすごいと思うしそういうとこが、…好きだから、付き合ってください」

下を向いてあまり周りを見ないで一気に言いあげた。
みんな黙ってるんだけど…えっ、こういうマジな感じのじゃなかった?
恐る恐る顔を上げたら、十四松だけじゃなく他の五人も顔を覆ってそれぞれに震えながら突っ伏していた。

「ちょ、ちょっと、笑わないでよ…!」
「……いや…笑うとか…じゃねえし…」
「何これ…」
「想像以上の…」
「マーベラス…」
「若干振られた感あんのがまた…」
「はっそうだったこれ十四松への告白じゃん…!」
「ああああ…っ!」
「この胸の疼きと痛み…!これがっ…青春…!」
「何言ってんのさっきから。余計恥ずかしいからやめて…十四松?」

一人だけ何も言ってなかった十四松に声をかけると、一瞬の間の後に「うわああー!」とか言いながら窓から飛び出していった。
屋根の上からガタガタと音が聞こえる。

「…えええ」
「っよっし!次!次やろーぜ!」
「えー!まだやるの?」
「当然だろ!俺まだ言われてねーもん!」
「いや、当たるかどうか分かんないじゃん…」
「はいカード戻して!十四松はやったから一抜けな!」

おそ松の仕切りで、トランプが伏せて場に戻された。
みんな心なしか真剣な目をしている。帰りたくなってきたけどこの雰囲気の中では言い出せなくて、しょうがなく一枚を引く。また2番だ。

「王様は?」
「俺だな」
「はいカラ松早く」
「オーケイブラザー…5番の好きなところを挙げて告白だ。2番が」
「はい僕〜!僕5番〜!」
「ええー!?何で2番なのぉ…!」
「なぁに小山さぁんまた当たっちゃったぁ?」

おそ松が憎たらしい笑顔を向けてくる。正面にはぎらぎらした瞳のトド松。

「う…」
「はい早くね後詰まってんだから」
「えー待ってよほんと…さっきみたいなのじゃなくていい?」
「さっきみたいなのがいい!」
「…うーん……」

緊張再び。いらない汗まで出てきた。

「…あの…トド松は、末っ子だけどけっこうしっかりしてる、よね。何気に世話焼きっていうか、時々女子ウケ狙ってなさそうな時にそういう部分出てたりして、そんなとこ頼りがいあるなって思うし、好き、だな…って思うよ、だからあの…付き合ってください」
「ハァァッ…!!」

トド松がのけ反りかえって倒れ、そのまま動かなくなった。

「はい次ーっ!」
「えーまだやるの!?」
「たりめーだろ!早く!」

ちょっと殺気立っているような残り四人の無言の圧力に押されてしぶしぶ既に伏せられているカードを一枚選ぶ。
えー何これ!?また2番だ!

「王様!」
「俺。チッ…1番の好きなとこ挙げて告白。2番ね」
「え!?」

やばい、また2番引いちゃったって顔に出てたのかな?
一松の命令にカラ松がキメ顔を作って見てくる。カラ松かぁ…!

「えっと…」
「言いたくないなら言わなくていいけど」
「いちまぁぁつ!?ルールが違うぞいちまぁつ!」
「わ、分かった分かった…ちゃんと言うから」

何だか神経質そうに指をコツコツさせてるチョロ松と足を貧乏揺すりしてるおそ松に挟まれて、ただでさえ居心地が悪い。早く言ってしまおう。

「…カラ松は自分で気付いてないかもしれないけど、一番のいいところは誰にでも同じように心を開いて優しくできるとこだと思うよ。口だけで言うのは簡単だけど実際にできる人ってなかなかいないから。あの…そういうとこがす、好き。付き合ってください」
「…っ…!おおマイスウィートエン」

両手を広げて私に向かって来ようとしたカラ松をおそ松と一松が肘で黙らせた。そして黙々とカードをまた場に伏せる。

「はい次ーッ!!」

多分これは全員やらないと帰してくれないパターンだ。みんな最初の目的忘れてるでしょ…
無言で引いた番号は2。まあ、だんだん人数が少なくなってきてるからこの偶然はあり得なくもないけど。

「はい王様僕ね。3番の好きなところを挙げて告白、2番」
「えーっ!?」

こんなに連続で当てられるのはちょっとおかしいと思うな!
もしかしてこれ手品用のカードで、裏の模様で見分けられるとか…?でもみんなの持つカードの模様とどこも変わりない気がする。

「杏里、ほら一松待ってっから」
「う…」

カードから目を離せば、お行儀良く正座をして大人しく待っている一松の視線に挫けそうになる。
一人一人言ってくのって本当恥ずかしいんだけどな!

「うー…あの…一松はね、真面目で優しいところが素敵だよ。いつも一歩引いてまず人のこと考えてくれるから、一松とだと落ち着いて話せる気がするし、一緒にいてて安心するなって思う…ので、好きです、付き合ってください」
「……………し、死ぬ」
「次ーッッ!!」

ズボンに手をかけた一松を、おそ松とチョロ松が部屋の外へ蹴り出した。
一体どうしてこんなに殺伐とした場になっちゃったんだろう。楽しく青春クラブでリア充ごっこをしてただけなのに。

「はい俺王様ー!2番が1番の好きなとこ挙げて告白!はい杏里!」
「えっ待ってよ私まだ引いてもない!」
「俺が王様でチョロ松が1番だから必然的にお前が2番だろ」
「ちょっと、そんなの有り!?」

一枚だけ残っていたカードを裏返して見てみると、確かに2の番号。

「杏里ちゃん、大変だと思うけど、ここまで来て僕達だけなしってことないよね…!?」
「杏里、このチョロ松の目見てみ?こんなに期待してんだよ?俺もだけど」
「う…」

チョロ松のすがるような目におそ松が追い打ちをかける。
こうなるとみんな一緒のことしてあげないと拗ねちゃうんだから、六つ子って厄介だな…!
相変わらず焦りは治まらない中、告白の言葉を考える。

「えー…とね、チョロ松は」
「うんっ」
「…あのね、欠点に聞こえるかもしれないけど、たまにちょっと抜けてるところがあるよね。普段すごくしっかりしてて男らしいのにそういうとこがあって和むっていうか、可愛いと思うよ。そこが魅力だし、あの、好きです付き合ってください」
「……っ……っ…」
「え…?チョロ松、泣かないで…」
「い゛ぎででよ゛がっだぁ…」

どこからか出してきたにゃーちゃんの抱き枕に顔を埋めてチョロ松がさめざめと泣きだした。

「もう、大げさな…」
「いや杏里童貞なめないで?女子からの告白なんて人生変えるビッグイベントだから」
「そうなの…?」
「そ。てわけで…俺の番だね小山さん」

屋根上からの音とチョロ松の泣き声が響き、カラ松やトド松が床に倒れ、一松に至っては体が部屋から半分出ているこのカオスな空間で、前のめりになったおそ松が野性的な笑みを浮かべる。
その前で最後の告白に挑まなければいけなくなった私。こんなの青春じゃないよ絶対…

「…ほんとにやるの?」
「ええ!?こいつらにだけやって俺なしとかないからね!?」
「だってもう王様ゲーム関係なくなっちゃってるじゃん!」
「やだやだや〜だ〜〜!やってやって〜!お〜れ〜も〜!」

じたばたして駄々をこね始めた。同い年とは思いたくない有り様だ。

「分かった分かった、言うから……んん、っと」
「……」

期待の眼差しが重い。前の五人と同様、おそ松から視線を外して口を開く。

「…お、そ松はー、勘がいいからなのかな、何となくだけど、私が困ってる時やしんどい時にさりげなく気使ってくれたりするよね。何も言わないのに察してくれるのすごく助かってるしお兄ちゃんだなって思う。そういうとこ好きだな。だから、え…と、付き合ってください」

よし、これで終わりだ。長かった。
手持ちぶさたになって自分で持ってきたコップを掴むと、思った以上に冷たく感じた。体温どんだけ上がってたんだろう。
口を付けるとおそ松の顔がコップ越しに見える。
少し下を向いた顔のぎゅっと結んだ口がだんだんむずむずしてきて、「たはぁ」という声と共に満面のにやけ顔になった。

「いやぁ……いいねぇこれ……」
「…私は疲れた。偽告白でもこんなに気力と頭使うなんて知らなかったよ」

本気の告白する時は今以上に全神経集中してやるんだろうな…私には一生できない気がしてきた。する予定もないけど。

「ちょ、偽とか言わないでくんない?まだ余韻に浸ってんだから」
「いいよもうそういうの!恥ずかしいから」
「へっへっへ…いいもの聞いちゃったなー。そっかー小山さんて俺のこと」
「やめなさい!」
「いてえ」

頭にチョップを食らわせてもけらけら笑ってるだけのおそ松。
それにしても、あんなに2ばっかり引くなんてすごい偶然の連続だったな。散らばってるカードを見ながら思う。これ、もう片付けていいよね。
おそ松曰く余韻に浸ってるらしい六つ子は放っておいててんでにばらまかれたカードを一枚ずつ拾って揃えようとした、のだけど。

「……ちょっと…どういうこと?」
「えー?何…あ」

私の手に集まったカードは全部2だった。
裏の模様も同じ、スペードのマークも同じ。
なるほどね…みんなで口裏合わせてたってわけ。王様になる順番を最初から決めてたんだ。そうすれば私が勝手に自分が当たったと思い込んで、告白をやらざるを得なくなる…
おそ松をきっと睨むと、悪いとも思ってなさそうにへらへらしていた。

「あー見つかっちゃった」
「…何でこんなに同じ2があるの?」
「俺のとっておき用」
「イカサマ用ってことね」
「つか杏里全然気付かねーんだもん!普通途中でおかしーなとか思わない?おかげで最後までやれたけどー」
「…」
「杏里ってほんっと騙しやすくてにっぶいよなー!まあさ、そゆとこ俺好、うぐっ」

台詞の途中でトト子みたいにお腹を殴ってやった。
カラ松みたいに床に倒れたおそ松は無視して、トランプは一応箱に片付けておく。そしてコンソメのポテチを慰謝料代わりに奪って、一松をまたいで松野家を後にした。
乙女をもてあそびやがって…もうあいつらとは口聞いてやんない!



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