Scene:??
ハジマリがいつだったかは忘れた。
問題は何が原因かだろう。
浅黒い褐色の肌 金髪に同じ色の髭
筋骨隆々の体を折り曲げて、その男は言う。
「誰しも意味があって生まれてくる」
と。私はおかしくて笑いそうになる。
それは私にもあるのかと。
「もちろん君にもだ」
男は柔和な笑みを浮かべて大きな手を肩に乗せて来る。鬱陶しく思うが有無を言わせない雰囲気が男にはあった。世界のトップと呼ばれる男──女はまだ知らないが、本能がこれに逆らってはいけないと告げている。
「だがそれは他人が与えられるものではない。自らが生き、人と出会い、見つけていくものだ」
意味?見つける?
それはおかしい意味があるとすれば「お前」が「お前ら」が ───。
この男は何も分かってない。誰しも理由もなく使命もなく生まれるし意味もなく価値もなく死んでいく。それが自然だ。よりによって私にそんな事を説くなんて不愉快にもほどがある。そして無責任だ。
この男への期待など微塵もなく女は踵を返してその場を後にした。
ところで兄は何処だろう?