※連載に反映されたりされなかったり
※非連載のもR指定のも含みます
儘@ 02/09 18:09 coal tar

汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い

擦っても擦っても
削っても削っても
抉っても抉っても 全然きれいになってくれない

 汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い

身体にこびり付いた真っ黒なヘドロ
どれだけ削ぎ落とそうとしてもヘドロが伸びるだけ
こんなものじゃ もっと鋭い 鋭利なものだったら この穢れも

「あっ」

手が滑る
弾かれたものが床を跳ねカーンカーンカランカランと軽い音を立てる
静寂 じゃない 頭から被るシャワーの音が現実に戻ってきた。

なにしてるんだろ私。いつから浴びていたのかシャワーは冷水で身体は凍えていた。ノズルを捻り温水にすると寒さと引き換えに麻痺していた痛みがじくじくと浮かび上がってくる。曇った鏡を拭くと赤く擦れて血が滲んだ肌が映る。黒いヘドロなんてどこにもない でもなんてきたないカラダ
…こんな身体でも私は行かなければ。
儘@ 10/23 20:24 罪


「アルファロはここまで来れる?」
まるで試すような物言いはあの日の言葉をなぞっているように聞こえた。
ひたひたと革靴に海水が染み込む。月もない飲み込まれそうな暗い海の中にコカロは突き進んで行き 胸まで海水に浸るとその言葉を放った。コカロの靴も服もひたひたと海水に浸り重そうに黒水の中でゆらめいてる。海水ではきっと傷んでしまうだろう。
「来れないでしょう?」
きっと捨てなければならない。
バシャリ、と踏み込み靴を海水に浸す。不快なはずなのにそこは気にも止めなかった。自らも浸かりコカロの前まで行くと海水は腹で止まった。お互いに黒水に浸かり言葉もなく立ち尽くす。コカロの諦観がにじむ瞳に少し苛つき、海水をぶつけてみた。ぶわ!?と悲鳴を上げて飛び上がる姿は可笑しくて胸がすっとする。
「何すんのバカ!バカバカバカ!」
「こらやめなさい 汚れるでしょう」
「今更!もーしょっぱい飲んじゃった!」
お返しとばかりに腕をバタつかせて海面を波打つも私よりもコカロが水没しそうになる。子どもを抱き上げるように脇の下に手を通して持ち上げると落ち着いたようだった。子供っぽくべ、と舌を出されましたけど。ずぶ濡れの体を抱きしめるとコカロの熱がじわじわと伝わってくる。
「この手を離さないと約束したでしょう」
「……」
「だからこんなやり方で試さなくていいんです」
「…不安になるの アルファロが私を選んでくれるなんて信じられなくて」
ぐすりと啜りながら震えるコカロをよしよしと慰める。本当に子供のようだ。300年彼女に孤独を強いた罪の大きさを感じ、改めてコカロをひと時も不安にさせてはいけないと思った。
次に手を離した時コカロは掻き消えてしまうだろう。
儘@ 09/09 02:27 心の根


「嬉しい 嬉しいなぁ……」
感慨深く蕩けそうな声で、腕の中に収まっているコカロは呟いた。その合間にくすんと鼻をすする音がして下を伺うと安心しきった表情のまま泣いている。
「やっと二人になれた」
「一人にしたつもりは…ないのですが」
「ふふ そうだねぇ」
穏やかな声で同意はするがまだ涙は止まらない。二人。私はいままでも助け合って共に生きてきたつもりですが、それでもコカロは疎外感を感じていたのかもしれない。…確かに 外では他人のフリをし見て見ぬ振りをし味方にもならなかった。コカロの心に根差すものは私が思う以上に根深いのかもしれない。

『この愚図!出来損ない!』
『今頃醜い金持ちに可愛がってもらってるわよ』
『可哀想に そんな顔で』
『何もお前まで堕ちていくことはないんじゃないか?』
『誰にも見られたくない…いっそ消えたい…』
『女になにが出来るっていうんだ?』
『悪い悪い わざとじゃないんだヨ』
『アルファロが、好き』
『貴女の気持ちには応えられません』
『今晩私の部屋に来い』


ぽたりと、涙が零れ落ちる。
もう何あろうと彼女の味方でいようと誓った。
儘@ 06/17 00:23 棄てた思い


部屋を三度ノックする。無理に追い出されたあの後、やはりコカロの側にいなければいけない気がした。
あの絶望した顔、そして吐き出した花。酷い拒絶をしてしまった。それを謝らなければいけない。部屋の向こうから返答はなくもう一度ノックしたけれど沈黙したまま。…迷って、彼女に渡された合鍵を取り出す。許可なく女性の部屋に立ち入りたくはないが非常事態と言い聞かせカチャリと扉を解錠した。
「…コカロ?」
予想に反して部屋に灯りはなくコカロの姿もない。寝室も浴室も気配はなく完全の無人だった。なら居続ける訳には、と踵を返そうとしてあのクローゼットが視界に映った。吐き出した花を捨てたゴミ袋。痛み腐り変色した花が大量に詰まっていた。見てはいけない。見れば後悔する。そう頭では理解しているがいつの間にかクローゼットに手をかけ袋を引きずり出していた。

「…マリーゴールド」
一番の上のまだ色の鮮やかなオレンジ──花言葉は「絶望」。コカロの悲痛が浮かんだ。
「リナリア、アネモネ」
見える範囲の花の名前を告げていく。花言葉は…「この恋に気づいて」「恋の悲しみ」
「ユウガオ、アリウム」
はかない恋。深い悲しみ。
「ラベンダー、パンジー」
沈黙。わたしを思って。
「オダマキ、ゼラニウム」
愚か。私はあなたの愛を信じない。
悲痛なほどの愛の叫びがそこにはあった。コカロの言葉以上に雄弁にこの中身は語っていて、気付けば片手を花に差し込みすべてを確認するようにひっくり返していた。饐えた甘ったるいにおいが鼻をつく。触るなとコカロは言っていた。でもどうしてもこの叫びを聞かなければいけない気がした。
無題@ 06/10 00:43 少女兵器


少し前を歩く鈴音の背中を追う。
俺たちは再会してから展望台で長らく話し事情を聞き、鈴音は行く当てがないらしくボンゴレ日本支部で暮らすことになった。
鼻歌を歌う鈴音の後を追う。
何故か着ているのは懐かしい並盛中の制服で、変わらない明るい髪色が肩をなでていて、背はずっと小さく見えて、鼻歌は10年も昔のラブソングだった。鈴音の時は止まっている。あの頃となにも変わっていない。がむしゃらに、子供ながら精一杯に、何度も迷いながら、恋に恋して幸せになろうとしたあの頃。二人でイヤホンを分け合い聞いていたラブソングから切ないほどの痛みを思い出す。…あぁ、駄目だ。鈴音はちゃんとここにいるのに。
「ツナ?どうしたのー?」
「…ごめ、」
気が付けば足が止まっていた。顔を上げたいけど瞳が濡れて手を離せられない。情けないなあ俺。全然成長してないや。
「…ちょっとはシリアスも必要だね」
「え?」
「ツナ、あたし帰って来たよ」
鈴音のローファーが背伸びをしたと思うと俯いた頭を抱き締められた。手のひらから体から温もりが伝わりもう一度鈴音が人になったことを再確認する。もうあの冷たい音もない兵器ではない。切ない痛みが温もりに溶け記憶の引き出しから初恋の熱を思い出す。俺は年を取り、あの頃と同じようながむしゃらな恋は出来ないと思う。でも、新しい関係を新しい人生を築いていきたい。

「おかえり鈴音 また俺の恋人になってくれる?」
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