秘密の片想い
「おはようございます風影様、カンクロウ様」
仕事の用事で風影邸の廊下を歩いていたら上司が目の前にいたので軽い挨拶を交わす。
「おっ、名前じゃん」
「……」
カンクロウ様はにこやかに応えてくれるも、風影様は私に目を向けるだけで無表情だ。
だけど、あれ?
「あの、つかぬことをお伺いしますが、風影様なにか嬉しいことでもありましたか?」
「なぜ、そう思う」
風影様が急に真剣な面差しになって動揺を覚える。
「いえ、なんだか嬉しそうにみえたので……」
「そうか……」
風影様は今、自分が微笑んでいることを気づいてないのだろう。なかなか見れない風影様の微笑みに混乱していると横からカンクロウ様が「名前が我愛羅に話かけ──いてっ!」と耳打ちしてくれたけど途中で風影様のご機嫌の理由は悲鳴で消えていった。
カンクロウ様の身に何が起きたのか不可解だったが、体をさすって痛みを緩和している。なんかいたそう。
「すまないな名前、足を止めてしまって。仕事があるだろう」
眉間にシワを寄せた風影様は先ほどまでの浮いた表情が沈んで不機嫌になってしまった。
「いえ私の方こそ無駄話をしてしまい失礼しました」
「無駄じゃない」
「へ?」
「全て、大切だ」
「……あの、それはどういう意味でしょうか?」
「いくぞカンクロウ」
カンクロウ様を引きずるように引っ張っていく風影様。私の横を颯爽と通り抜けていった。
「ひどいじゃん、我愛羅。そんな感じだと伝わるものも伝わらないじゃん」
「黙れ」
私の後方からお二人の会話が耳に通ってきて、兄弟で仲が良いなと思った。
配布元:秋桜
加筆修正:2023.08.28.