「る、留守番…ですか?」
「さすがに腰布とデカイ狼の集団じゃ悪目立ちするからな
ここから先へは俺とネージュ、案内のゴブタだけで行く」


他の子達は近くの森入り口で野宿して待ってもらうことになるらしい。
王国の入り口。警備隊によって厳重にチェックしてからの入国になるのか、門の前に並ぶ列はなかなか進まない。
ここでしっかりとチェックされるため入国後は自由に動けるらしいのだ。


「おいおい魔物がこんなところにいるぜ?
まだ中じゃないしここなら殺してもいいんじゃねえの?」
「おい荷物置いていけよ、それで見逃してやるよ」



うん。
建ったと思ったフラグ、見事に回収されてしまった。華麗すぎる。




***



「あらあらあら〜!すごくかわいいわ!こっちも着てみてよ」
「私のアクセも似合いそう!あげるからちょっと付けてみて〜」
「「「かわいい〜!!!」」」


きゃっきゃうふふ。
形容するならそんな感じ。今私はなぜかエルフのお姉さんたちにちやほやされていた。なんでだ。

王国の門の前で人間に絡まれて、リムルさんが威圧で撃退したあと。
騒ぎを聞きつけて警備隊のドワーフ達が駆けつけてきてリムルさんとゴブタが連行されて行ってしまった。
私はというと少し事情聴取を受けた後に解放され、警備隊長の方に行くあてがないと話すと行きつけのお店でしばらく面倒を見てもらえばいいと話をしてもらった。
そのお店というのがエルフのお姉さん達でいっぱいのお店だった。

キラキラのお店に似合うキラキラのお姉さん達にキラキラの服を着せられて遊ばれていた。

どうしよう…いまもリムルさんたちは牢屋に入れられているのに…。

綺麗なお洋服を着せてもらって、しかも頂いていいらしい。ちょっと面積がきわどいけれどかわいいし嬉しい。
お店でお客さんと会話してお酒を飲む。キャバクラみたいだ。初日はそんな感じで夜はお店に泊まらせてもらったのだった。



そして



***


「「『いらっしゃいませ〜』」」


〈FOOOOOOO!!これがエロフ!!いやエルフだーーー!!
……でもあれだな、ネージュで見慣れてるというかエルフに負けないネージュがやべな
服薄ーーーーいいぃけど!!全力で魔力感知を発動してるのにこのお姉ちゃん達絶妙に見えないラインを死守しておるわ!〉


以上がリムルさんから届いた念話である。
お出迎えしたお客さんの中にリムルさんがいた。
リムルさん今だに私にたまに心の声送ってくるのまだ慣れてないのかな…。なんてエルフのお姉さん達に可愛がられているリムルさんをじっと見つめていたら目があった気がした。


「え!!?なんでネージュがここに!!?ていうか服!!服!!?」


青みがかったスライムの体にほんのりとピンク色がさした。
うん。元気そうで何よりですリムルさん。
お姉さん達は察したのかリムルさんを私に手渡すと他のお客さんの元へ行った。
なにやらリムルさんはリムルさんで色々あったらしく、ドワーフの職人さんと無事巡り会えたようだった。

ドワーフの職人さん、カイジンさんというらしい。なんと無茶振りの注文を引き受けていたカイジンさんを恩を売る目的で助けてきてそのお礼にお店に連れてきてもらったらしい。
そして同じく職人のドワーフ三兄弟ガルム、ドルド、ミルドさん。

カイジンさんと他の三人と簡単に挨拶すれば「この子が例の…?こんな別嬪と知り合いなのか旦那…!?」と詰め寄られていた。
私、そんなに顔が良くなっているのか……。それに対して踏ん反り返ってるリムルさんが不思議だった。


「いや、本当旦那には感謝してるんだ。お陰でドワーフ王への面目が立つ。
しかし恐れ入ったよ俺の渾身の一振りがまさか数秒で量産されちまうとはね」
「カイジンの一振りが素晴らしかったからな。俺はそれを複製しただけだ
あんたは最高の職人だよ、カイジン」



__ほんとう、いい人だな
私の膝の上でグラスを持ってお酒を飲んでいるリムルさんを見下ろす。

「それでな旦那、村に来ないかと誘ってくれただろ?あれなんだが…」
「あ、ママさんさっきの美味しいのおかわりもらえる?」


今めちゃくちゃ大事なセリフ遮ったんじゃ、リムルさん


「お、おい旦那!?」
「スライムさん、味わからないんじゃなかったの?」
「綺麗な人にお酌してもらえたらなんでも美味しく感じるんだよ」
「あら、お上手」


遊び方が綺麗だな、なんて考える。

「ねぇねぇスライムさん、ネージュちゃんもこれやってみない?」

そういって私にひときわ世話を焼いてくれた黒髪褐色のお姉さんが水晶玉を両手に近づいてくる。


『占いですか?』
「そうよ、何がいい?」
「二人の”相性”とか!」
「え、何それ聞くの怖い」
「じゃあ運命の人とか!」
『そっちで』


相性とか聞きたくない怖すぎる、リムルさんと意見が一致した。
運命の人、とかいうふわっとしてる方が占いとして楽しめる気がする。
恋愛という意味での運命の人もあるだろうけれど、私にとっては転生してからであったヴェルドラさんとリムルさんも運命の人だ。


「あ、映った!」


隣に座ったお姉さんの水晶に人影が写り始めた。

__黒髪の綺麗な女性だった。

小さな子供たちに囲まれて、別れを惜しんでいるようなそんな場面。


「おいその人もしかして…爆炎の支配者シズエ・イザワじゃねえか?」
『有名な人なのですか?』
「自由組合の英雄だよ。見た目は人間の若い娘さんだが何十年も活躍してんだ。
今はもう引退してどっかの国で若手を育ててるんじゃなかったかな」


カイジンさん曰く、冒険者の間では有名な英雄らしい。
にしてもシズエ・イザワ…。日本人だろうか。漢字を当てるのなら伊沢静江さんとか。


「二人とも運命の人気になるんだ?」
「気になるっていうか…」
『まあ会ってみたい…かな』


ね、とリムルさんと視線が交わる。
私たちも日本人で同郷だけれど、やはり以前からこの世界にいるっぽい日本の方と会えるのなら会ってみたいし色々教えて欲しいところだ。


「おい女主人!この店は魔物の連れ込みを許すのか?」
「え?」
「い、いえ魔物と言いましても紳士的なスライムですし…」



店の出入り口から何やら不穏な空気が。
いかにも神経質でみみっちそうな男がそこにいた。


「まずいな…大臣のベスターだ」
〈カイジンを陥れようとした…と思われるとウワサの腹黒大臣だ〉

首をかしげる私にリムルさんが念話で補足をくれる。ありがとう。なるほど、やなやつか。
その男はカウンターに置いていた水を入れた器を手にするとこちらへと向かって歩いてくる。
そしてその水を私の膝の上にいるリムルさんへと投げかけてきた。

「魔物にはこれがお似合いよ」

うわ最悪である。私へとかかる前にリムルさんが全て被ってくれたお陰で被害はないけれど。


『リムルさん…!』
「……大丈夫、 ネージュこそドレス濡れなかったか?」
『うん…』
「せっかく綺麗なドレス着せてもらったのに悪いな」


リムルさんは1つも悪くないのに。
いくら最悪な男であっても一刻の大臣だし、リムルさんも怒りを押し殺してるであろうに何も言わないのだから
私が何かするべきではない…このお店の人たちに迷惑もかけられないし、
けれどこれはいくらなんでも酷すぎやしないだろうか。
隠しもせずに目の前に立つベスターという男を睨み上げる。

ふと前に座っていたカイジンさんが立ち上がる。


「おや、カイジン殿。あなたもこの店に__」


右ストレートがもろに入った。
おー、と思わず拍手を送る。ガルムさんも静かにサムズアップしてた。
リムルさんに意味ありげな視線を送られた。これくらいは許してほしい。

殴り飛ばされたベスターは色々なものに当たり散らして吹っ飛んでいった。


「よくも俺の恩人にケチつけてくれたな」
「き、きっ貴様!誰に向かってそのような口を…」
「あ”あ”!?」
「ひっ」



凄まれただけでベスターは店から逃げ帰っていった。
思ったよりよわっちかったのかしら…。

でも

「いいのかカイジン、相手は大臣なんだろう?この国にいられなくなるんじゃないのか?」
「なに、俺の帰る場所はあんたが用意してくれるんだろう?」
「…でも王のために頑張ってたんだろ?」
「へっやっぱりそれを気にしてたのかい。恩人を蔑ろにしてお仕えしたところで王が喜ぶもんか。
ここで応えなきゃ俺は王の顔に泥を塗っちまう」


だからリムルさんとともに村へと来てくれるという。
実際リムルさんもきっとこれを期待はしていたんだろう。

…とはいっても一国の大臣を殴ったのは見逃されなかったらしく、再びリムルさんはカイジンさんたちとともに警備兵に連行されていってしまった。
やっぱり私ここについて来た意味ないくらい別行動している気がする。
 
 
 
 




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