リボーン複数主番外編 | ナノ


▼ 皆で過ごすクリスマス

冬休みも目前に控えた12月某日。コートに身を包み、マフラー、手袋といった防寒具を身につけたなまえ、由良、くるみは冷たい北風が吹く中身を寄せ合って学校に向かっていた。

「寒い。死ぬ…!」
「こんなんで死んでたらリング戦の時の私らなんだったのよ…」
「こういうのは思い込みが大事だよ、なまえちゃんっ…」

おしくらまんじゅうのようにピタリとくっついて歩く3人は歩きにくいだろうに、両端にいる由良とくるみが絶妙なバランスをとってしっかりと前に進んでいた。そうして歩いて10数分、ようやく学校に到着し、風を遮断する建物内に急いで入る。
ホッと息をついてそれぞれのクラスの下駄箱に行き靴を履き替え、もう一度集まる。その時、思い出したようにくるみがあ!と声を上げた。

「あのねっ、2人に聞きたいことがあってねっ…」

どうしたのか聞けば、少し緊張した面持ちで言ってくるくるみに2人は首を傾げながら続きを促した。くるみは視線をキョロキョロと動かし、やがて少し赤くした顔で口を開いた。

「こっ…今度のクリスマス、私の家でお泊まり会したいんだけど、どうかなっ!?」

目をギュッと瞑って言う姿はさながら告白でもしているようで、傍から見たら誤解されそうな雰囲気だが、由良は突然のことにきょとりとしているし、なまえは可愛いなぁと思って見ていた。
すぐに我に返った由良が隣で余計なことを考えているだろうなまえを小突く。ハッとした様子のなまえを確認して、またくるみに向き合い、つまりと口を開いた。

「クリスマスパーティーしたいってこと?」
「う、うん!ちょうど週末だし、料理とかケーキとかはこっちで用意するからっ…」
「え、それは悪いよ!どうせなら皆で作ろう?キッチン借りてもよければだけど。」
「そ、それなら全然大丈夫だよ!」

なまえの口振りに賛成してくれたと少し期待を滲ませて、口を閉じて考え込んでいるような素振りを見せる由良を窺い見る。

「25日ならいいけど、イブは難しいかな…」
「私はどっちも大丈夫!」
「そっ、かぁ…」

なまえの返答に喜んだが、由良の答えを思い出して少し残念に思った。どうせならイブもクリスマスも2人と過ごしてみたかったのだが、クリスマス当日はどちらも空いているという事なので今ここで予定を埋めておこうと切り替える。

「じゃあクリスマスは私の家でお泊まり会で決定でいいかなっ?」
「いいよ!楽しみだね〜!」
「ごめん、イブ行けなくて…」
「ううん!全然!」
「由良、イブはサンタの仕事あるんだって。」

申し訳なさそうにする由良に慌てて気にしないでと言うくるみは、なまえのサンタの仕事という言葉に首を傾げた。由良を見れば、またアンタは、となまえをジト目で睨んでいたが、くるみの視線に気づいてはぁ、と溜め息を零した。

「弟たちのサンタ役、私なの。両親よりも気配消して動くの得意になっちゃったからさ。」
「あ、そっか!サンタさんはイブにプレゼント配るんだもんね!」
「そゆこと。」

薙刀で鍛えられたからか、気配を消して動くことが得意となった由良は双子が生まれて暫くしてから両親に代わってサンタ役を引き受けているらしい。ちなみに、由良は幼稚園に入る頃にサンタは両親がやっていると早々に見破り(というか知っていた)、以降プレゼントを貰っていないらしい。
前世の記憶があるためサンタの正体を知っていた由良と違い、下の兄妹達はそれを知らないので夢を壊すわけにはいかない。これは非常に重要な事情だったと知り、くるみは頑張ってね!とエールを送った。

「じゃあまた後で時間とか決めよっか。」
「はい!午後からがいいです!」
「だと思ったよ…」
「あとは作る料理とかも決めないとだね!」

教室に辿り着くまでその話で盛り上がり、決められなかったものは放課後、下校の時に決めようということで、3人は別れた。


クリスマス当日。なまえ、由良はいつもの待ち合わせ場所で落ち合い、2人並んでくるみの家を訪れた。

「いらっしゃい!」

満面の笑みで出迎えたくるみに案内された2人は、初めて訪れるくるみの家に感嘆の声を漏らしながら物珍しそうに顔を動かす。通されたのはくるみの自室で、今日のパーティー会場のようだ。部屋のあちこちにクリスマスの装飾が施されていた。

「すっっごいね…!これくるみ1人でやったの?」
「うん!どうせなら見て楽しめた方がいいかなって思って!思いついたのが昨日だから、ちょっとギリギリだったけど…」
「1人でこのクオリティは中々ないよ。ありがとうくるみ。」
「ううん!2人に喜んでもらえたなら良かった!」

照れたように笑って言うくるみ見て、なまえ、由良はほんわかとした気分で癒されつつ、互いに目配せをする。
昨日は3人ともクリスマスパーティーを控えているからと、帰りが別々だった。とはいってもクラスが離れているなまえは兎も角、由良とくるみは同じクラスで行動も一緒にすることが多い。別行動になるとしても、朝や帰りの挨拶は必ずするので放課後少しなら話す時間もある。つまり何が言いたいのかと言うと…

「くるみ、昨日山本とデートしてたでしょ。」
「誤魔化してもダメだからね。私も教室から一緒に帰るの見てたんだから!」
「………………へっ、え!?」

赤くなったくるみに対し、2人はさあ洗いざらい吐けと言わんばかりに逃げられないよう両側を詰める。
まだ状況が理解出来ていなさそうなくるみに由良が説明する。昨日の放課後、先に帰ると声をかけたくるみに何となしに視線をやると、そこには山本と仲良さげに話す姿があった。放課後の騒がしい教室の中よく耳をすませば山本から一緒に帰らないかと誘う言葉が聞こえてきた。顔を赤くしたくるみが頷いたところを見てすぐさまなまえに連絡し、連絡を受けたなまえはたまたま教室の窓の方に視線をやると仲睦まじく下校する山本とくるみの姿を捉え、これは何かあったに違いない!と2人は今日その詳細を聞こうと思っていたらしい。

「そ、そんなっ、ただ一緒に帰っただけなのに…」
「そりゃそうかもしれないけど…」
「くるみにとったらだけじゃ済まないでしょ。これでもしくっついたとか言われたら私ら2人の邪魔してるだけだからね?」
「もしそうなったら真っ先に報告するよ…」

それもそうか。少し冷静になって考えついたが、しかしそれはそれ、これはこれである。くるみはこうやって少し強引にでも話させてガス抜きのようなことをしないと後から1人で溜め込んで大変なことになってしまうので、こと山本に関することは話せそうな雰囲気であれば話させたいし、やはり聞きたいのだ。

「くるみ。」
「どうなの?」
「うぅ…」

ずいっと詰め寄ればくるみは少し唸り、観念したようにはぁ、と溜め息を吐いて「あんまり大した話じゃないんだけど…」と話し始めた。

prev / next

[ back to top ]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -