エルザ | ナノ


▼ 9

エリナにブローチを貰ってから、私は毎日それを付けていた。
今日は一人でゆっくりとエリナへのお返しを探すために街へ出掛けたのだが、偶然なのかなんなのか、取り巻きA.Bもとい、痺れる憧れるのあの二人と共に行動していたディオに遭遇し、何故か今ディオと二人で街を歩いている。どうしてこうなった?

「ディオ、お友達と遊んでいたんじゃあないの?」
「平気さ、エルザと過ごす時間の方が大切だよ」

あー、殴りたい、この笑顔。大切というのは利用的意味でですよわかります。仕方ねぇな、諦めて行動を共にするか。人生って上手くいかないものよね。

「じゃあ、私のお買い物に付き合ってくれる?」
「もちろん、そのつもりだよ。荷物持ちにだってなるさ。今日は何を買いに来たんだい?」
「この間エリナにね、素敵なブローチをもらったの。だからお返しをしようと思って。何が良いかしら?」
「貰ったのがブローチなら、アクセサリー系のものを返したりしたらどうかな」
「やっぱりそうよね。うん。そうするわ」
「エルザが気に入りそうな店を知っているんだ、案内しようか?」
「本当!?嬉しい、ありがとうディオ。さすが、頼りになるわ」
「どういたしまして。こっちだよ」

スッと手をとられ、引っ張られて案内される。この野郎サラッと手を繋ぎやがってプレイボーイめ、くだばりやがれ(直球)、爆発しろ、どんだけ女の子と遊んだんだ言ってみろ!!粉微塵にしてやる!イライラを隠しつつ、ついて行ってはいるものの、どんどん裏路地に入っていって、人通りも少なくなっていく。あれ?これヤバくない?

「ディ、ディオ?こんなところにお店があるの?」
「あるよ。もう少し先なんだ」

マジか、嘘か?どっちだ分からん。いや、今んとこ私は貴族の娘役をキチンとやってるんだからここに来て急に襲われたりなんてしない、はず。もし来たら殺ろう。うん。
迷いなく進んでいくディオの手をまだ振り払うわけにもいかず、五分ほどが経ったころ、私の考えは杞憂だったと息を吐いた。目の前には美しいガラスの作品が並ぶ小さな店があった。

「綺麗……」
「気に入ってくれたようだね」
「ええ、凄いわ、ディオ、ここならとても良い物が見つかりそう!ありがとう!」

これは本心である。いや、全然信用してなかったわゴメン。一ミリだけ見直すことにした。店内は外観で想像したよりも広く、表に飾ってあったような花瓶やグラス以外にも、アクセサリー系のものや、小さな天使の像などが置いてあった。色々と見ているだけで楽しくなれる、そんな店だ。しかしこれだけあると流石に迷う。アクセサリー系、と絞っていても数が多いのだ。しかも私はこういうのはあまり得意じゃあない。今まで人が嫌がる事ばかりしてきた上にその顔を見るのが好きだったからだ(今もあまり変わりはないけど)。人に喜んでほしいと思って何かをしたことなど両手の指の数で足りてしまうだろう。どうしようか、と周りを見ていると、星のイヤリングが目に入った。透き通った緑色をしたそれは、何となくジョジョの目を連想させた。ピンと来るってのははこういうことか。エリナはいずれジョースター家の人間になる。星を持っているべきだろう。しかもジョジョの目の色だ。私の意図はエリナになら伝わるだろう。

「決まった?」
「ええ。良い物を選べたと思うわ」
「それは良かったよ。買ってくると良い」

ディオの言葉にニッコリと頷いて、レジへと向かう。無事に購入できた。後は割らずに持って帰って渡すだけだ。いやー良かった。帰り道、ホクホクとした私の顔を見てディオが可笑しそうに笑い出した。

「そんなに変な顔をしていたかしら?」
「ふふ、いや、幸せそうだと思ってね。あの店を紹介して正解だったよ」
「ディオはどうしてあんなお店を知っていたの?随分と裏路地にあるお店だったけれど」
「よく散歩したりしていると自然と見つけられるさ。」
「でも一人で裏路地のほうに行ってはダメだってお父様が仰っていたから、私にはできそうにないわ」
「じゃあ今度一緒に行こう。僕と一緒ならエルドレット郷も許して下さるさ」
「本当?私ずっとこの街の近くに住んでいるのにどこにどんな店があるのかも知らないの。そんなの嫌でしょう?」
「ああ。閉じこもっているのはつまらないだろうからね」
「大切にしてもらっているのは分かってはいるのだけど過保護なのも困りものだわ」
「可愛い一人娘だからね。過保護になってしまうのも仕方がないよ。この辺りを探索したいなら僕が付き合うから」
「ありがとう。楽しみにしているわ」

その後、どこに行きたいだとかどんな店を見てみたいだとか、今まで満足に外に遊びに行けなかった不満を半ば八つ当たり気味に話した。今の親が過保護なのは事実なのだ。グチグチと話している内に家が見えてきた。

「あぁ、もう家に着いてしまうわね。ごめんなさいディオ、私ばかり話してしまって」
「そんなこと気にしなくて良いさ。僕で良ければいくらでも話を聞かせてもらうよ」
「本当にありがとう。今日はとっても楽しかったわ」

玄関前でそれじゃあね。と手を降って、やっとディオとお別れできると思ったら、引き留められた。何なんだ一体。

「エルザ、これを渡したくて……。受け取ってくれるかい?」
「開けても良い?」
「もちろん」

渡された箱を開けると、私がさっきエリナに買ったものと色違いの星のイヤリングが出てきた。美しい、少し薄い赤色をしている。

「これ…」
「前から買っていたんだけど、今日エルザがエリナに色違いのものを買うとは思ってもみなかったよ」
「じゃあ、偶然?」
「僕も驚いてるよ。好みが似ているってことかな」
「ありがとう。大切にするわ」
「ああ。それじゃあ、あんまり遅くなると心配されるだろうから。また誘いに来るよ」
「またね」

今度こそお別れできた。部屋に戻って割れないようにイヤリングを部屋に置き、眺める。

『気に入ったみたいだね』
「エリナ、喜んでくれるかなー」
『喜んでくれるさ。それよりディオ君にはお返ししないの?』
「しませんけど」
『えぇー。面白くないよー』
「面白くなくていいんです」
『でもさ、これがきっかけになって二人の仲が急接近(はぁと)みたいなことに』
「なりませんってか(はぁと)って何ですか」
『お似合いだと思うんだけどなー見た目だけは美男美女カップル』
「見た目だけは余計です。いや、ディオは見た目だけか」
『君も大概だよ。詐欺だって言われてたの忘れたの?口を開けば罵詈雑言。めげずに口説いても胸に飛び込んでくるのは強烈な蹴りだけだって』
「詐欺だとは言われたことありますけど後半言ったの誰です?」
『言ったところでどうもできないじゃないか。知らぬが仏だよ。そんなことよりディオ君はー?』
「そんなに気に入ったんならアイツのとこ行ってきたらどうなんです?もう私の前でアイツの名前を出さないで下さい」
『そうは言ってもイアリングは気に入ったんでしょ?』
「それは……まあ、綺麗なものは綺麗ですから」
『しかも店まで案内してくれたし』
「うっ……いやでもあれはアイツが勝手にやったことですし」
『もー強情だなぁ』
「諦めて下さい」
『まあ長い目で見て楽しむよ』

じゃあねーと消えていった禊さんを止めることもできず、ただ見送るしかなかった。禊さんホントに私のスタンドとして助けてくれるんだろうか…。勝手に逃げ出したりしそう。って、この考えも伝わってるんだろうな。気持ち切り替えて行くしかないな!よし!明日エリナにこれ渡しに行こう!



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