序章
夢は紛い物だ。
世界は平等じゃないし、呆気なく死んでいくのは決まって善人から。
だから、俺は不平等に人を助ける。
でも俺は、その伸ばした手から何度も命を零してきた。
それでも、そんな紛い物の"夢"を、俺たちは落とさないように、零さないように、必死に握りしめて生きている。
細く頼りないその指を撫でる。
彼女はこの手で、何を掴んで、何を零したのだろうか。
願わくば、彼女の手が握りしめる夢を、俺も一緒に包んでやれたら。
その時は、俺の夢なんて手放してしまってもいいのかもしれない。
優しい微笑みをたたえたまま伏せられた瞳。
その瞼に、優しくキスを落とした。
夢の終わりまで、あと───