お疲れ様です、お客様。
クラウドと一緒に住むようになって、自然に家事の多くを私がやるようになった。
クラウドももちろん沢山手伝ってはくれるんだけど、仕事で疲れた彼の手を煩わせたくないし、家でくらいゆっくり休んで欲しくて、私がすすんでやり始めた。
日も沈み初めて、クラウドが帰ってくる前に終わらせようと洗濯物を取り込んで畳む。
お日様の匂いがするタオルが気持ちよくて、ちょっと嬉しくなった。
あらかた畳み終わって、ふぅ、と息をつく。
ちょうどその時、玄関のドアがばたんと音を立てた。
クラウドが帰ってきた、
……でも、いつもの「ただいま」は聞こえてこなくて、代わりにどんどんと荒い足音がこちらに向かってくる。
私が様子を見に行く前に、今いる部屋のドアが開かれて、クラウドが突然私を雪崩るように抱き締めた。
「く、クラウド?おかえりなさい。」
「……ただいま。」
息を吐くようにクラウドが私を抱いたまま呟く。
首元にかかる彼の吐息がくすぐったい。
「どうしたの?」
尋ねる私に、彼はふるふると首を横に振る。
何でもない、とでも言いたげだが、まるで何でもなくないその様子。
無理にでも吐かせないと、これはひたすら自分で抱え込むやつだ。
今までの経験で何となくわかる。
「クラウド、何かあったの?
なんでも聞きたいな。」
優しく抱き締め返して、背中を撫でる。
こうしていると、まるで大きな子供をあやしてるみたいだ。
……なんて、本人に言ったら怒られそうだけど。
「何でもない。」
私の首元に鼻を擦り寄せながら、ぼそっとクラウドが零す。
「何でもない事はないでしょ。」
「本当になんでもないんだ。
……ただ、ナマエを充電したくなって。」
耳元で、少し照れたような彼の声が聞こえる。
その言葉に、思わず小さく笑いをこぼした。
疲れすぎて甘えたくなったんだな、さては。
「うん、そっか。よしよし。
いい匂いのタオルもご用意してますよ。」
クラウドの顔を上げさせて、いちばんふかふかなタオルで頬を包む。
そのまま触れるだけのキスをすると、彼は猫みたいに目を閉じた。
「うん……悪くないな。」
「ご満足いただけました?」
茶化したように笑って彼に尋ねる。
その私の言葉に、クラウドがそっと瞼を上げて私を見つめた。
……あ、これは少し、まずいかもしれない。
そう思った時にはもう遅くて、私の体はせっかく畳んだタオルの束の上に横たわっていた。
「お……お客様?」
「満足いただけたか……だったか?
いや、まだ足りないな。」
彼の唇が首筋に吸い付いて、ちりっと小さな痛みが走る。
「風呂に入ってくる。すぐ戻るから。」
狙いを定めるような彼の視線に心拍数を上げながら私は、洗濯物また畳み直しか。
なんて呑気に考えた。