Let's get lit up!!
私とクラウドの休みが被ることは、めったにない。
私はいわゆるブラックな会社で働いていて休日出勤も多いし、クラウドは不規則的に仕事が入るからだ。
だから2人で出掛けることもそう多くは無いし、昼ご飯なんてしばらく一緒に食べてない気がする。
でも、特段寂しいとは思ったことはなかった。
クラウドは口下手だけど私の事を好いてくれているのは分かってるし、私がキスをすれば優しく応えてくれて、それで私は満たされていた。
ただ、今の生活にワガママが言えるとしたら、一つだけある。
2人で一緒にお酒が飲みたい。
一緒にちゃんと飲んだことは無いけど、クラウドもお酒は好きみたいだし、そろそろ溜まったストレスを流したい。
付き合いで飲まされる生ビールじゃなくて、美味しいカクテルとかワインで。
そしてある日、ついに私たちは休みを合わせることに成功した。
「ねえ、今夜は飲まない?」
せっかく明日は2人とも休みだし。と、ベッドに腰掛ける彼に声をかける。
「ああ、俺もそう思ってた。行こう。いい場所を知ってる。」
クラウドは私の髪をすっと撫でてからバイクの鍵を手に取った。
クラウドが連れてきてくれたお店は、確かに素敵なところだった。
薄暗い落ち着く雰囲気の個室で、おつまみの他にもパスタなどもあって、それらを食べながら色んなお酒が楽しめるお店。
デリバリーサービスのお得意さんらしく、店員さんも良くしてくれる。
「じゃあ、クラウド、かんぱーい。」
「乾杯。ナマエはいつも仕事お疲れ。」
「クラウドも。いつもありがとね。」
2人でワイングラスを傾ける。
うん、美味しい。
おつまみで頼んだ魚介のマリネを1口食べると、それも美味しかった。
他愛ない話も楽しくて、思わずお酒がすすんだ。
どのくらい飲んだだろうか。
私はクラウドよりはお酒に強い方ではあるが、少し酔ったのを感じる。
一方のクラウドは、グラスを変わらず煽りながら、頬杖をついて私を見つめていた。
「……どうしたの、何か顔についてる?」
不安になって口周りに触れる。
さっき食べたカルボナーラのソースでも付いていたのかと思ったけど、そういう訳ではなさそうだ。
ふとクラウドを見つめ返すと、彼は小さく首を振った。
「いいや……可愛いなと思って。」
「……はいっ?」
今、クラウド、なんて言った……?
あまり語らないクラウドがそんなこと言ってるのなんて聞いたことがない。
聞き間違いかと思って、なんて?と思わず聞き返した。
「ナマエ。可愛いな。」
ふ、と小さく笑ってクラウドが再び呟く。
顔が、かーっと熱くなるのを感じて、思わず頬に手を当てた。
「な、なに、いきなり、どうしたの?」
「ナマエの顔が好きだ。もちろん、顔だけじゃないけど。」
クラウドの右手が向かいの席から伸びてきて、頬に当てた私の手に重なる。
親指で私の手の甲を何度かなぞってから、そのまま前髪をくしゃっと撫でた。
「いつも、仕事も遅くまで頑張ってるよな。
ちゃんと休まず、大変なのに。すごいと思う。」
口をはくはくさせる私には目もくれず、でもとろけたような熱っぽい瞳でじっと見つめたまま、優しく笑った唇で囁く。
たぶん、酔ってるんだろう。
でも、わかってても、それでも照れる。
いつもこんなこと絶対に言わないし、そんな目で私を見たことなんてあっただろうか。
頭が真っ白になって、何も言えずに見つめ返す事しかできない。
クラウドが不意に立ち上がった。
そして徐に向かいから私の隣に移動したと思うと、額にキスが降ってくる。
「作ってくれる朝食もいつも美味いし、ナマエが洗ってくれた服は自分で洗ったよりいい香りになってる気がする。
ナマエに出会う前までは、朝食も服も気にしたことなんて無かったのにな。」
肩を抱き寄せて、ありがとう。と唇を頬に寄せられた。
「クラウド、おかしいよ、ほんとどうしたの、」
もう何を言えばいいかわからなくて、どうしたの、としか返せなくなってきた。
「おかしいか?いつも伝えてないから、ちゃんと伝えたいと思ったんだ。……嫌か」
「嫌じゃない、けど、」
「だったら言わせてくれ。ナマエと一緒に居られて良かった。
……愛してる。」
その言葉に、心がぐっと掴まれる。
思わずその首もとに腕を回して抱きついた。
「私もだよ、クラウド。好き。愛してる。」
見上げると、そっと近付く唇。
顔を傾けてそっと受け入れると、2人のそれがぴったり重なった。
個室とは言え、外でこんなこと出来るなんて、実は私も相当酔っているのかもしれない。