小ネタにならないくらい短いやつ
ジャンルバラバラ配慮なし
▼【探偵】高木
まさか。まさか、まさか、本当にまさか、こんな展開が現実に訪れるとは思わなかった。今この瞬間ですらこう思うんだから、昔だったら尚更。いや、数年前の私にこの状況を説明したらビックリ通り越して気絶しかけて今の私をぶっ叩くくらい混乱するだろう。そんな自信がある。
場所、ベッドの上。それがなんと、自宅ではなく高木さんの部屋のベッド。しかも、上は天井じゃなくて部屋の持ち主。つまり高木さん。――どう考えても押し倒されてる状況です本当にあり、がたくないありがたくない!なんだこれ!なんだこれ!いやいや今は奇跡にも高木さんと付き合ってるんだからいつかこうなってもおかしくなかったけど実際起こるとは思わなかった!思わなかったよ!今こうなっても困惑&違和感バリバリで固まるしかないよ!っていうか高木さんも固まってるよ!改めていう、なんだこれ!?
「……」
「……」
「…た、高木、さん」
「………だ、駄目、かな?」
……。改まってじわじわ顔真っ赤にされながら言われると伝染したのかこっちも顔が熱くなってくる。そんな情けない顔なのに真っ直ぐ見て言わないで下さい。可愛いのにかっこいいとかずるい。思わず「あ、う」だかなんだか、こっちまで情けない返答してしまった私は悪くない。ただ、その返答の仕方は高木さんの背中を押したらしく、ごくりの喉が鳴る音が聞こえたかと思うと毎日首元まできっちり閉められた私のシャツのボタンへと手が伸びてゆく。音も立てずに第一ボタンが外されるが少し涼しくなった首元に、思わずビクリと身体が震える。瞳に熱が篭り始め色を持っているのがわかる。高木さん、本気だ。第二、第三まで慎重に外され、あらわになる自身の肌色に身動きが取れず抵抗すらできないしまず思考が定まらない。
いやいやこの状況は一体。わかる、わかるんだけどこれ本当に高木さん?私高木さんとセックスしようとしてるの?え?嘘でしょ?キキキキスのときならまだ恥ずかしいだけで大丈夫だったけど、マジで?セックス?あのセックス?顔真っ赤にしてヘタレ面してた高木さんと?――今、すっごいエロい表情してる、あの高木さんと?
「、ぅ」
「…壱さん?」
「っわあああああ!!」
ゴツッ。
部屋に鈍い音が響き、それを理解した次には頭を抑えて横に転がる。何が起きた。そんなもの、私の横に私と同じ体制でベッドにうずくまる高木さんがいて、私の頭がガンガンして、答えは一つ。――テンパって起き上がろうとして、高木さんの頭に思いっきりぶつかったでファイナルアンサー。
「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!!」
「い、いや」
涙目になりながら必死に謝ると、高木さんはベッドに突っ伏したまま片手を上げた状態で起き上がらずにいる。
やってしまった。そう思ったときには既に手遅れで、頭の痛みに託けて私はとにかく頭を抱えるしかなかった。
高佐根っこが深すぎて事を起こす想像が追いつかなくて空気壊す嬢と可哀相な高木。
この日は気まずくなりながらバイバイするけど、後日高木頑張るはず。多分。
06/01 ( 13:35 )
▼【TOG】アスベルと6月の花嫁
見るだけで感嘆の溜め息が出そうなくらい美しい純白のドレスに、それを見に纏いドレスに負けないくらい美しく着飾られた花嫁さん。結婚式、花嫁といえば女の子の憧れで、それは私も言うまでもない。見るだけで幸せになれそうな花嫁さんが幸せそうに笑う姿を見るのが好きで、小さい頃はこっそり近所の教会に通っていたこともあったほどだった。
今の私は、あの頃の彼女のような表情を出来ているんだろうか。
純白の布の下にある大きなお腹の固まりを撫でながら、目を閉じる。頬を撫でるブラシはくすぐったくて、馴れない感触にくしゃみをしそうになるけど動きそうになる度に聞き慣れた愛らしい声で「こら」ってちょっと呆れたように怒られるから頑張って堪える。髪の毛もまとめ上げられて、たまに引っ張られる感触が痛いけどそういっても「我慢しなさい」と言われるだけだ。
「手厳しいなぁ、シェリアちゃん」
「当たり前でしょ。今日の主役は貴方なんだから、しっかり綺麗にしてあげたいじゃない」
「…綺麗になれてる?」
「ふふ、当然よ」
だって私がこんなに全力出してるんだもの。
そういって今度は優しい手つきでベールを乗せ始めたシェリアちゃんこそ今日はいつもよりお化粧して目はパッチリで頬は可憐なピンク色。唇もぷっくりしていて、ドレスは愛らしいそれ。正直ただでさえ美少女だったのに追い撃ちがかけられて男性ならほっとけないレベルだ。そんなシェリアちゃんに、私が綺麗だと言われても正直実感がわかないというのが本音なところ。鏡を見ても、いつもより可愛い、気がするけどお化粧が凄いのもわかるけど、いつもの私だ。ただ、ドレスが凄く綺麗だなーとは思った。私と、ラムダと、二人一緒に結婚式上げられるドレスがあってよかったなーとも。そこは流石はケリーさんというところだろう。お腹は目立つけど、それは嬉しいことだから、寧ろ隠さないデザインで良かったと思う。ただ、いざ本番を前にすると不安になるのだ。
私は今とても幸せなんだと思う。でも、昔見た花嫁さんはもっと輝いていた気がする。「はい、完成」そうシェリアちゃんはいうが、やっぱりいつもの私、のような気がするのだ。
「ほら、そんな顔しないの」
「だ、だって、シェリアちゃん可愛いし、ソフィも凄く可愛かったしパスカルちゃんも綺麗だし、ヒューバートくんもマリクさんもリチャードくんもかっこよくって…ア、アスベルくんもきっとかっこよくなってるのに……」
「あら、私はマツリが一番綺麗だと思うけど?」
「そ、そんなことない!」
「ふふ…」
「ちょ、シェリアちゃん。笑い事じゃなくて!」
「くすくす、だっていつものマツリらしくないんだもの」
笑いが止まらないのか、ただいつもより涼やかに笑うシェリアちゃんはこっちを仕方なさそうに見ていて、ちょっと恥ずかしくなって目を伏せる。不安だって正直に言えばよかった。とはいえ、今更いうことも出来ず口をつぐむと、控室のドアが小さくコンコンと軽やかに叩かれる。誰だろう?シェリアちゃんが声をかけると、ドアの向こうから「ああ、俺だけど」と声が聞こえてき、ビクリと反応する。
「あ、アスベルくん!?」
「あら、丁度いいわね」
「こっちの準備は終わったから様子を見に来たんだけど…マツリはどうだ?」
「こっちもバッチリよ。あとで迎えにいくから少しだけ二人きりにしてあげる」
「し、シェリアちゃん!?こういう時って花婿さんと会わせないものじゃないの!?」
「聞こえませーん」
ああああ。思わず立ち上がろうとするがシェリアちゃんに両肩を抑えられ「式前に立ち上がってこけたらどうするの」と笑顔で凄まれなんかしたら身動きとれやしない。手を伸ばすが可憐なに手を振る少女は、そのまま扉を開けて、アスベルくんを中に招き入れてしまう。――凄い、綺麗。普段から白の衣装が多いアスベルくんだけど、白のスーツにラント領の紋章と小さなクロソフィのブーケを胸に付けた姿は一段と違いを見せており、オールバックにしているからか普段より少し大人びて見える。
「か、かっこいいねアスベルくん…!」
思わず感嘆の溜め息をこぼしながら頬を染めてしまうかっこよさだ。こんな素敵な人が、私の花婿さん。…大丈夫なのだろうか。思わずおずおずとアスベルくんを見つめるが、そういえばアスベルくんは部屋に入ってから一切反応しておらず固まったままで首を傾げる。アスベルくん?もう一度声をかければ、じわじわと耳元が赤くなっており、ゆるゆると瞳に熱が篭ってゆく。
「正直、びっくりした」
「へ?」
「綺麗だ、マツリ」
「は!?」
いきなり破壊力満点の笑顔を見せられたと思ったらなんという追撃だ。思わずこっちの顔まで赤くなっても仕方ないと思う。それぐらいの威力だった。
「い、いやでも、み、みんなの方が綺麗だし可愛かったし、」
「マツリの方が綺麗だし、可愛い。今までで一番可愛い」
「ひぇ、あ、アスベルくんの方がかっこいいし!えーっとあと、そそそうだ、綺麗なのはドレスの方だよ!」
「うん、ドレスが本当に似合ってる。良かった、お前にピッタリのドレスが間に合って。綺麗な姿のマツリが見られた」
「!?」
ぼっと一気に頭に血が上るのがわかる。やばい、やばい、アスベルくんが本気で言ってるのがわかるから私の処理能力が越えはじめてる。必死に打開策を見つけようにも沸騰して何も考えつかない。嬉しい。この人がこんなに喜んでくれることが嬉しい。じわじわ、心が喜色に塗られ、先程の不安が消えていくのがわかる。そして、アスベルくんに握られた両手が凄く暖かい。
「マツリ」
「は、はい」
「俺、今凄い幸せだ」
「あ、」
幸せ。幸せ。私も、凄く幸せで、何よりその言葉がアスベルくんから聞きたかった。あの頃、輝いていた花嫁さんは花婿さんと幸せだといっていて、私は幸せを纏った彼らに強い憧れを持っていて――漸く手が届いた。
「――アスベルくん」
「ん?」
「好きです。大好き」
「…ああ」
「私も、今凄く…ううん、世界一幸せになれた」
涙が出そうになるけど、ここまで整えてくれたシェリアちゃんに怒られる訳にもいかず、なんとか零れる前に目の化粧が落ちないように拭おうとするが、その前にアスベルくんの指が零れかけたそれを器用に受け取ってゆく。手につけていた手袋はとってしまったらしくて手袋に化粧がつかなくて安心したが、二人して「シェリアには内緒な」と笑い合ってしまう。
トントンと、再びドアがノックされ、アスベルくんが返事をすると、ドアの向こうからは娘になったあの子の鈴のような声が聞こえてくる。
「アスベル、マツリ、時間だって」
ひょこっとドアの隙間から顔を出す仕種はいつものソフィで、着飾って可愛らしくなってもソフィはソフィだ。思わずふふっと笑ってしまうと、ソフィには首を傾げられ、同じように一つ笑ってしまったらしいアスベルくんはすぐに切り替えてこちらに既に手袋を付けた手を差し出してくる。
「さあ、行こう。花嫁さん」
「ええ、花婿さん!」
思わずソフィにも手を差し出せば、パアアと表情を明らめたソフィがぎゅううと片手を握りしめてくる。両手に花とはまさにこのことか。――ああ、ごめん、もう一人いたんだもんね。
「アスベルくん、ソフィ、ラムダ」
「ん?」
「なに、マツリ」
「私、あなたたちと一緒にいられて、本当に幸せ!」
6月開始したのでTOGの結婚式の話。うーん、ちょい長くなりましたが名前変換入れなかったからこっちにしました。いつか改訂して番外編にでもつっこんどくべ。
06/01 ( 13:35 )
▼【TOGf】2
ラントの裏山にある花畑で目が覚めるのは、これで3回目。
始めはソフィやちっちゃいアスベルくんヒューバートくんに出会ったときに。2回目はソフィと大きくなったアスベルくん、シェリアちゃんがいたとき。
この世界で私の始まりは、この花畑だった。
でも今回違うのは、私は既に死んだという自覚があること。アスベルくんとソフィと家族になって、ラムダとあの子を産んで、ちょっと短いけど寿命を終えたということ。ちゃんと幸せな人生を送ってきたということ。
なのに、今の私はまるであの頃の私だ。
どういうことなの…?
花畑は記憶に違わず色鮮やかな花が咲き誇り、水平線は澄んで淡い潮風を運んでくれている。ただ、誓いの木には何も刻まれていない。
誰も、ここにいない。
頬に涙が伝うことを感じながら、水平線を沈んでゆく太陽をただただ眺める。この場所にいる理由も若い頃に戻った理由もわからない。わからないけど、あの頃傍にいてくれた彼がいないというだけは理解でき、それがとても苦しい。幸せだった。幸せだったからこそ今この状況が堪えられなかった。
「君は…」
背後の、裏山に続く道から聞こえてくる声に気付き、頭を上げる。低い、男性の声。
――アスベルくん?
また見つけてくれた。そう安堵しながら振り向くが、その姿を視認した瞬間目を見開く。見覚えはある、ただし数回しか会話したことがないその姿。愛しい人に一瞬見違えたが、それもその筈、彼はアスベルくんに何処か似ている。
「ラントの住人ではないようだが、こんなところで一体どうしたんだ?」
アストン・ラントさん。死んだ筈の、アスベルくんのお父さんが、そこに立っていた。
TOG→TOGf
目覚め第一段はアストンさんでした。
如何せん幸せだった記憶があるから若干シリアス気味。いつかシリアルになる。
06/01 ( 00:55 )
▼【TOGf】
ありがとう、私は幸せでした。
産まれてきた世界から離れて20年近く生きてきた世界と別れを告げるとき、すっかり筋力がなくなって弱々しく動いた口から零れた言葉はそんな陳腐なものだったけどそれが本心なんだから仕方ない。今まで一緒にいてくれた愛しい人や大事な子供がいたから寂しくなくて、ついつい笑ってしまったけど、彼らをぼろぼろに泣かせてしまったのがちょっと悔やまれる。せめて、泣かないでとかいっておけばよかった。
ああでも。でもね、アスベルくん。私はあなたと一緒に生きられて本当にとても幸せだった。ソフィと、ラムダと、あなたとの子。そんな宝物を、生きる場所をあなたは私に与えてくれた。だから、地球に返れなくても未練は大したことなかった。
アスベルくんを好きになって、本当によかった。
そうやって落ちた意識に満足したのに、なんで私はまた目を覚ましたんだろう。
「あれ…?」
走馬灯ってやつなのかな。目が覚めるとそこは馴染み深いラントの裏山の花畑だった。
TOG→TOGf
享年40歳マツリが少し違う世界で再び繰り返すお話
05/31 ( 14:14 )
▼【相棒】陽太(牙王)
私より泣き虫で弱い牙王ちゃんを守るのは当たり前だと思ってたのに、最近あの子は泣かなくなってきたし弱いくせに合気柔術なんて始めるようになった。
別に強くなろうとしなくたっていいのにって陽太兄ちゃんにそう不満を漏らすと、兄ちゃんは頬をかいて苦笑する。
「やっぱり牙王も男だからなー」
…よくわかんない。
「いつかわかるよ」
兄ちゃんはそういうけど、私にはそのいつかが来るのが凄く怖い。だってそんな日がきたら、きっと牙王ちゃんは私の後ろにはいてくれないから。だから、そんな日が来なければいいのに。
そう呟くと、陽太兄ちゃんはいつもより優しく私の頭を撫でるのだった。
太陽番長になる前の幼なじみ
05/29 ( 23:11 )
▼【探偵】安室
「あのね壱さん。僕、実は悪い奴なんです」
「は?」
紅茶を片手に目の前でポカンと口を開けた年下の少女に、安室はいつものようににっこりと笑顔を見せた。突拍子もない話題に少女は驚いているのだろう、パクパクと口を動かす様子は状況に追いつかないときに見せる仕種だ。安室はそんな素直で頭の回転が遅い少女のわかりやすい仕種を見るのが好きではあったが、いつまでも話が進まないのもつまらなく思ってくる。
「壱さん、理解してますか?」
「は!?え、ええと…遊び人とか女たらしってことですか」
「いえ、そういう趣味ではないんで悪い男ではないですね。悪い人間なんです」
「へ、へえ」
「簡単にいうと口封じのために人を殺したり誰かを騙したり、そういうことです」
「へ、へえ……え」
固まってしまう様子は本当にわかりやすい。実感が薄いのか恐怖心を強く感じてはいないようだが、唖然として遂には動きを止めているのは結局のところ思考停止状態なのだろう。突っ込まれることがなく、話題が話題だけに都合がいい。安室はにこやかに首を傾げたが、纏う空気は少し冷えていた。
「だから、君が逃げようとしたら、俺は君を殺してしまうかもしれない」
恐怖に震えて青ざめるか、泣いてしまうか。どちらかの反応だと思い目を細めて彼女を眺めていた安室だが、段々その目は開かれてゆく。いつも事件が起こる度に現場の隅で落ち込む彼女は、何故か呆れた顔をしたかと思えば、いつものように苦笑をひとつ零すだけだった。
「だったら80歳までは絶対安室さんと一緒にいなきゃいけませんね」
「は…」
「だって、今更ですし」
それに安室さん、大人なのに寂しがりやですから。そう、どこか仕方なさそうに、だがどこかしてやったりと笑う姿は逃げるそぶりなど全くない。やられた。安室は抑えきれない笑みに、顔を覆うと知らず知らずに溜息をひとつ零す。
弱いと思っていた彼女は自分よりよっぽど強かったらしい。
試したかった安室さんとヤンデレフラグを見事回避した嬢
05/29 ( 22:40 )
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