小ネタにならないくらい短いやつ
ジャンルバラバラ配慮なし




▼【P3】有里



「お邪魔しま…広瀬?」


湊がいつものようにベルベットルームから異界へと扉をノックし返事がないのも構わず部屋に入れば、いつもと違うのは勝手に入っても情けない声が聞こえてこないこと。もう下校してる時間だけどと不思議に思ってそっと中に入り込むと、その理由を理解する。部屋に入り込んで覗き込んだベッドの上。既に部屋着に着替えている彼女はそこで安らかな寝息をたてて眠りについていた。
珍しい。ベッドの上でごろごろ寝転ぶことは珍しくなくても、完全に寝ている姿を見るのは初めてだ。湊はその光景に知らず知らずのいちに息を殺すと、物音を立てないように近付いてゆく。


「広瀬ー…」


小さく掠れた声で呼び掛けるが、反応なし。いつもわかりやすくコロコロと表情を変えるそれは平和で間抜け顔そのもので、思わず吹き出しそうになるのも仕方ないだろう。湊はくっくっと口の中で笑いを堪えてベッドに肩肘を立てて今度は顔を覗き込み、自分もそのふかふかのベッドに頬を当ててみる。こんなに顔が近いのも中々ないことだ。閉じられた睫はピクリとも動かず、寝息は静かだが少し口が開いている。
――久しぶりに人の寝顔みた。どこか暖かいものを思い出しながらつい静かに頬をつつくと壱の口から「んぬ…」と変な声が出てきて眉を寄せむにゃむにゃと口を動かす。ムービー撮っとけばよかったと一瞬思うが湊は黙ったまま壱を見つめ動かない。
穏やかな空気とやわらかいベッド。いつものどこか殺伐とした日常とは違う、心の底から力を抜けてしまうこの場所で、湊を結ぶ鎖は呆気なく外されてしまう。そして、目の前には気持ち良さそうに眠る壱の姿。


「…くぁ」


湊が思わず欠伸をしてしまうのも無理はないだろう。ついうとうととしながら、抗えない誘惑に湊は時計をふと眺める。
今日はまたタルタロスの探索に向かう予定だ。これ以上は寮に帰って零時間に備えるのに支障をきたすだろう。だが、


(…30分だけ)


もう少しここでゆっくりしてもいいだろう。湊はふと、目を閉じる。寝るつもりはない、ただ目を閉じとくだけだ。静かな空間にはたまに自分と壱の吐息が重なる音が聞こえてくる。耳障りじゃないそれに人知れず彼は口元を緩ませるのだった。



「……なんで有里くんがいるの」


仮眠から目覚めた壱は、視界に写ったその光景に苦渋を込めながら頭を抱える。理由を問い詰めたいのはやまやまだったが、珍しく安心して眠る子供のような姿に声を上げるなど今の彼女にはできなかった。



ぺるきゅ記念と寝ろ催促にキタローと嬢
設定は小ネタのやつ


06/11 ( 22:38 )




▼【TOGf】6


「精が出るな」
「あ、アストンさん」


頭には帽子を被ってジョウロを片手にラント邸の花壇に水を撒いていれば、かけられた声に振り向く。朝早い時間でまだ子供たちは寝ているだろうに、この人はもう身支度を整え外に出てくる。聞けば毎朝、ラント領内を軽く散歩ついでに見回っているらしい。初めて知ったとき、流石だなと彼を思い出した。アスベルくん、やっぱり君のお父さんは凄い人だよ。


「綺麗に咲いている。マツリの花の手入れは丁寧だな。ケリーも褒めていた」
「ありがとうございます。でも元々ケリーさんのお世話のやり方がお上手だったから、引き継いだ私が凄くやりやすいんですよ。ケリーさん、お花を愛してらっしゃるんですね」
「そうか。…いや、そうだな」


そうやって優しく微笑む姿は彼にそっくりで、あのアスベルくんに今一番近いのはアスベルさまじゃなくてアストンさんなのかなと思う。領主として責任を背負い、息子を立派に育てようとどうしても厳しくあたってしまうが、傍にいればよくわかった。この人は、ちゃんと愛情深い人だ。


「…子供たちはどうだ。特にアスベルは君に迷惑をかけているだろう」
「二人ともいい子ですよ。そりゃあ、アスベルさまは悪戯好きだし未だに私を認めてくれないけど、ちゃんと正義感を持った優しい子です。ヒューバートさまも臆病だけど人一倍思いやりができる子で…私、あの子たちが大好きですよ」
「そうか…」
「あ、勿論ケリーさんは尊敬してますし身寄りのない私を家族のように扱ってくれて凄く嬉しいです」


フレデリックさんも教え方は厳しいけど丁寧に付き合ってくれるし、シェリアちゃんっていう小さなお友達もいるし…。一人、二人と指を折り曲げて数えてゆく。
アストンさんは少し困惑しているようだが、数えきって漸く向けた手は数えきれなかったそれを表すように広がっていた。


「これだけの宝物をくれたアストンさんが今のところ一番大好きですけどね」


勿論恋情じゃない。だけど、この世界を再び繰り返して今度の始まりはアストンさんだった。アストンさんが、あの花畑で行き場をなくした私を見つけてくれなければ、そのあと身寄りもない私をラント邸で住み込みとして置いてくれなければ、私を彼らに会わせてくれなければ、私はきっと今以上の幸せに恵まれなかった。同情でもなんでも、アストンさんの優しさに私は救われたのだ。


「そうか」


見せてくれる表情は笑顔ってほど笑顔じゃなくても、柔らかくて優しい。軽く頭を撫でられて、うれしさを噛み締めながら、私もこんな人になりたいと花の手入れを再開する。

もっと綺麗に咲きますように。そう手を動かしながら込めるのは、今の優しい幸せとあの頃の愛しい記憶だった。



花を愛せる人になりたい

06/09 ( 19:47 )




▼【TOGf】5


二人の幼なじみで、フレデリックさんのお孫さんのシェリアちゃん。最初は私を警戒していたみたいであまりお話できなくて寂しかったけど、あの二人が遊びに行くのに置いていかれてしまったときに一緒にいてからその距離はぐんと縮まった。仲間外れは寂しいものだ。シェリアちゃんだけに特別といってアスベルくんたちにも食べさせたことのないアップルパイをあげたら、照れながらシェリアちゃんは嬉しそうに笑うのだった。
この頃のシェリアちゃんは私の知ってるシェリアちゃんと変わらず、勝ち気でおませさんで身体が弱い。女同士二人で話すのは料理のこと。お洒落のこと。それから、アスベルくんとヒューバートくんのこと。


「今日はアスベル何処いったのかしら…」
「うーん、昨日海のお話したからもしかしたら海辺でもいっちゃったのかもなぁ」
「私も一緒にいたかったのに…」


そういって少し拗ねたようにもじもじとするシェリアちゃんは可愛らしくて、思わず頭を優しくなでる。嫌がられていないようだが、照隠しに「こ、子供扱いしないでよね!」というシェリアちゃんに私はただ微笑むのだった。

でも、そうか。シェリアちゃんは、私の知ってるシェリアちゃんと決定的に違う。気付いてしまった。寧ろ、気付かない方がおかしいのかもしれない。


シェリアちゃんはアスベルくんのことが好きなんだ。



アス←シェリ要素入ります

06/07 ( 00:23 )




▼【TOG】出産時旦那サイド


「きてたのか、ヒューバート…」
「兄さん、マツリさんは!?…といっても中にいるのはわかるんですが、大丈夫なんですか。泣き声だか叫び声だかわからないのがかなり聞こえてするんですが」
「もう陣痛始まってるからな。母さんとソフィは立ち合いで部屋の中に入ってる」
「兄さんはいいんですか」
「……」
「兄さん?」
「……マツリに過保護すぎだって怒られた」

「……」
「最初は中にいたんだ。マツリがかなり苦しそうだったから負担が減るように手を握ったりせめてなにかできることないかと思って。そしたら『ベタベタベタベタオカンか!!』とか、『痛みがこんなことでなくなるか!このニブチンアスベルー!』とか叫ばれた」
「…」
「母さんに邪魔だから外に出てろっていわれた」
「…に、兄さん。その、陣痛が痛すぎて出産時の妊婦のストレスは計り知れないっていいますし、きっとマツリさんなりに兄さんに甘えて」
「あと……」
「(まだあるだと…!?)」


「『痛いけどアスベルくんの子供産みたいから頑張る』って」


「…」
「…」
「…」
「…」
「…ヨカッタデスネ」



マツリが自分との未来も考えてくれていることを思わぬ形で知ってしまって嬉しい旦那ベル

06/04 ( 21:28 )




▼【黒子】黒子家祖母


彼らの前に立つ年若い少女の容姿をした女性は穏やかに笑いながら、保険証を両手で持ち、堂々と周りに見せている。だが、彼ら――秀徳高校のバスケ部一同は、女性のように笑えるどころか、動くことすらできない。すぐ傍にはライバルである誠凛高校のバスケ部も同じように固まっている姿があり、高尾の広い視界には何故かドヤ顔をしている影の薄いシックスマンの姿が写っていたが現在高尾の精神にはそれを突っ込めるだけの余裕などなかった。


「ね。昭和中期生まれなんですよ、私」
「だからいったでしょう。僕の祖母だと」


昭和中期生まれ。子持ちどころか孫持ち。


「―――しんじられるかああああああああ!!!!!」


少女のような外見をした、自分たちの副顧問で、担任の彼女の実年齢は定年ギリギリのそれ。思わず会場内に響く絶叫を捻り出した宮地の叫びだが、それは会場全体の心情を代弁しており突っ込むものなど誰一人いなかった。



外見詐欺がばれた(隠してない)黒子家祖母と信じたくない信じられない秀徳メンバー(+α)とドヤ顔実孫

06/03 ( 22:29 )




▼【TOGf】4


出会い方が違ったからか、あの頃のアスベルくんとアスベルさまは私に対する態度が全然違う。態度が違うと性格も全く違うものに思えるから不思議だ。といっても、ヒューバートさまやケリーさん、アストンさん。シェリアちゃんに対するものは一緒だからこのアスベルさまもちゃんとアスベルくんなんだろうけど。
自分でいってて何がなんだかわかんなくなってくるが、とりあえずアスベルさまは思ったより、いや寧ろ凄くやんちゃで、とりあえず座学から逃げ出すのは当たり前。私が話し掛けようとすれば舌を出して逃げるし、部屋を片付けたと思った次の瞬間には目茶苦茶に散らかす。…アスベルくんって本当に大人だったんだなと思っても仕方ないだろう。懐かしさを感じる間もなく後片付けをし働き、でも溜め息はつけどもここを離れはしない。それにアスベルさまは不満そうだが、だがこの仕事を辞める訳にはいかなかった。


「なあ、お前いて辞めるんだ?」
「…辞めませんよ」
「ええ、なんでだよー!」


再び部屋を片付け始める私をベッドの上で寝転びながら見てくるアスベルさまはジタバタと手足を動かす。知っているとはいえ嫌われるのは流石に寂しいなあ…。如何せん、20年ほど受けてきた愛情があるからその行為に、表情にチクリと感じつつも、笑顔は無くさず脳裏に浮かぶのは今の場所をくれた人と――私の好きな人。


「この仕事はアストンさんがわざわざ用意してくれた居場所ですから。そう簡単には辞めたりしません」
「…んじゃあ、親父にいって家なら別に用意してやるから他で働けよ!」
「それも嫌」
「わがままだぞ!」
「だって、」


異常だとは思う。目の前のこの子はアスベルくんじゃない。そうだと理解しているのに、彼は彼なのに、ただこの子の傍に居場所があるということが堪らなく私には嬉しいのだ。


「私、アスベルくんのこと大好きだもん」



Notショタコン、Yesアスベル厨。
このあとショタベルさまは「ばっかじゃねーの!!」っていって顔真っ赤にして逃げていくにFA。ショタベルさまはアスベルくんじゃないけどアスベルくんだから一緒にいられるだけで嬉しいマツリはちょっと狂ってるけどいずれ落ち着くのでどうぞよしなに。
06/01 ( 23:56 )




▼【TOGf】3


「はじめまして、アスベルさま、ヒューバートさま。今日からあなたたちのお世話をすることになったマツリです」


どうぞよろしくお願いします。
見覚えのある、だが幼い方のよく知る人物らに頭を下げると、焦げ茶髪の彼は嫌そうに顔を歪め、青い髪の彼は兄の態度を申し訳なさそうにしながら「は、はじめまして」と返してくる。その様子は予想通りで、だが実際目の当たりにして泣きたくなるのを必死に堪えて微笑む。

ああ、出会いは違ったけど、あの頃の彼ら――アスベルくんと、ヒューバートくんだ。

生意気で正義感が強くてでも優しかったアスベルくん。臆病で博識で人一倍他人想いだったヒューバートくん。今からしたら27年近くも前の、大好きな人の姿。知ってる出会いじゃなくても、私のことを全く知らなくても、この世界に彼らがいてくれる。詳しく事情を聞くこともなく居場所と仕事を与えてくれたアストンさんの計らいで傍にいられる。それだけが、今の私の救いだった。しかし、


「お世話係だなんてもう俺らにそんなの必要ないよな、ヒューバート」
「に、兄さん。せっかく来てくれたのにこの人に悪いよ」
「さっさと帰ってくれた方がいいじゃん」
「兄さん!」


思わぬ暴言に、堪えていた涙が引っ込む。…この頃のアスベルくんってこんなに生意気だったっけ?思い出補正でもあったのだろうが、いやだがしかし、出会いが違うだけでここまで言われるとは思わず固まってしまう。その様子を見られたのか、アスベルくんは如何にも悪戯っ子のような笑顔を見せ、指を刺してくる。


「いつまで残るのか見物だな!」


…ああ、うん。なんかわかってしまった気がする。だがまず、感傷に浸る前に私がすることはただ一つ。


「人を指さしちゃいけません」


人差し指の出された拳をぎゅっと握り、笑顔でいう。ポカンとした顔を見ながら思った。
アストンさんがわざわざお世話係っていった理由はこれか。



アストンさん経由だから警戒心バリバリショタベルくんと切なさと呆れの狭間に放り出されるマツリ。
旦那ベル≠ショタベル(f)の方程式が徐々に築かれていくことでしょう。
06/01 ( 20:35 )




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