Kiss me, Darling! | ナノ
クッキングダーリン
「今日は俺が夕飯作るから!」
恭平くんが急にそんなことを言い出した。
理由はよく分からないけど、想像は難くない。
「…また何か吹き込まれたの?」
恭平くんが大きく身体を震わせる。
マンガみたいに効果音をつけるならギクッて感じ。
本当に分かりやすい人だ。
「とにかく!俺に任せて!」
どうあっても作りたいらしい。
目を輝かせて意気込む恭平くんだけど、やっぱり不安だ。
そして、その予感は的中する。
「いてっ!」
「………」
「やべ、火!」
「………」
「あー!買い忘れー!」
「………」
凄まじい物音やら叫び声やらで、台所がやたら騒がしい。
「手伝おうか?」
さすがに見兼ねて声をかける。
ついでに覗いた台所は既に惨状だった。
「だ、大丈夫!」
「全然大丈夫じゃなさそうなんだけど…」
「理乃ちゃんはテレビでも見て待ってて!」
背中を押されて、半ば追い出されるような形で台所を出る。
その後も止まない恭平くんの叫び声。
(子どもを見守る母親ってこんな気持ちなのかなー)
それから1時間位、恭平くんが心配でテレビどころじゃなかった。
→料理完成