Kiss me, Darling! | ナノ
幸せの味


テーブルに完成した料理が並べられる。


ちゃんと形になっていて驚く。
恭平くんは満足気なような緊張したような表情だ。


私は用意された料理をもう一回見てみる。


メニューは思ったより普通だ。
ごはん。ハンバーグ。お味噌汁。以上。


「……野菜は?」

「あ…」


私の指摘で恭平くんは初めて気付いたようだった。


圧倒的に緑が足りない食卓。
ハンバーグにはつけ合わせがついていない。
一枚皿に大きなハンバーグがどんと乗っけられているだけだ。


お味噌汁の具はわかめと豆腐。
…わかめがせめてもの良心なんだろうか。


「恭平くんって、私の料理の何を見てるの?」

「ごめんなさい」


彩りとか結構気をつけてるんだけどな。
恭平くんはそう言うの気にしてなかったみたいでちょっとショック。


「いただきます」

「…うん」


何故か恭平くんの元気がない。
と言うより、緊張しているみたいだった。


その様子には気付かないフリをしておいて。
私はハンバーグを一口サイズに切り分けて口に運ぶ。


(う…焦げてる…)


生焼けよりは良いけど、噛む度にほろ苦い。
まあ基本は出来てるワケだから、及第点なのかな。


次はお味噌汁に口をつける。


(……何故かぬるい…)


ハンバーグは焦げてたのに何でこっちはぬるいの?
味は普通と言えなくもないのに、そのアンバランスさが気になる。


心の中でツッコミを入れていると、恭平くんの視線に気付いた。
恭平くんは自分の分に手も付けずこちらを見ている。


私も作った料理を食べてもらう時はこんな気持ちだ。
相手が好きな人なら、尚更。


「美味しいよ」

「よっしゃあーー!!」


いつもは自分が欲しい言葉を恭平くんに言う。
恭平くんも、いつもこんな気持ちなのかな。


たまにはこんなのも良いかもしれない。


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