銀色のキミに | ナノ
02 異世界の鍵

あれから暴走した明音を何とか送り届けて(なんて私はイケメンなんだろう!)家に帰った私は、すぐにスマホを取り出してWiFiに接続し、「異世界の鍵」と調べ始めた。
検索してから表示されるまでのんびりと待っていると、ヒットしたサイトがずらりと並ぶ。


「え、ちょ、サイト多すぎ…」


思わずボソリと呟く。
そんなサイト、たった一件だけだと思っていたけど実はそうでもなかったらしい。
恐らく異世界の鍵というものに惹かれた人達がサイトを作ったりしたんだろう、と考察なんかしてみる。

あー、もう何だっていいや、と思いながら、沢山あるサイトの1番シンプルなものを選ぶ。
クリックすれば、画面が更新中と表示されて点滅する。
しばらくその様子を眺めていると、サイトが表示された。


『此処は異世界に通じる扉』


「っ、あはは。本気にする人なんかいないでしょ。」


1人爆笑しながら、どんどんページを進める。


『あなたは異世界への旅を願いますか?』

→はい


『強い願いを持つ者だけが、此の先へ進めます。
現世の扉は一方通行。決して未練を抱かぬよう。』


未練ねぇ…

ふっと思い浮かべたのは私に向かって優しく手を伸ばしてくれる、彼の姿。


「うん、ないな。」


ばっさりと言い切ったそれには、流石の私も潔いと実感してしまう。
そしてそのまま、ケロリとした顔で私はタップした。


「どこの世界に行きたいか…?」


何その質問、そんなに願いを叶えてくれるんだ。
神様様々じゃん。

うーん、どこがいいのかな。
正直言って、私はこのサイトを信じていない。
だから、どこを書いたって別にいいかなっていう気持ちが勝ってる。
適当でもいいんだけど、ちゃんとやらないと明音が怒るからな…
ちょっと苦笑しながら迷い始めると、明音の言葉を思い出した。


「私はもちろん銀魂!それで新八くんに好かれたい!」

「え、新八くんって、前説明してくれた眼鏡だよね?いいの、人外で?」

「ごめん、私の説明が悪かったね。本体は眼鏡って言われているけど、普通の「普通」の男の子だよ。」

「明音って地味専だよね…」

「それを言うなら安定思考って言って。」


銀魂の世界に行く、とそう言った彼女はとても幸せそうだった。
私にも本物の幸せが届くといいな、だなんて影で思ったものだ。
そう思っているうちに、指は自然と銀魂と入力していた。
まあ、私は名前を聞いたことがある程度で全然知らないんだけどね。

ただ、その世界から消えることが出来たなら、そんな些細な希望を胸に抱えるだけ。
叶うわけないって分かってるから、希望だけでも見せて欲しいんだ。
…なんて、ちょっとシリアスめいてみたり。
今日の私はちょっとおかしいや。

視線をスマホを戻し、続けて項目に理想の体重とか瞳の色とか、そういう物をどんどん飛ばしていく。
私自身何も願うこともなく、今の状態を記入するのだ。
私だけは変わりたくないから。
可愛さを求める明音の事だから、もしかしたら異世界に行った時、全くの別人になっているかもしれない、と夢を見る。
ふふっと笑いながら、手元のスマホの最後の項目を記入し終える。

最後に……


「ぽちっとな。」


送信、を押した。

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