銀色のキミに | ナノ
01 プロローグ

真っ赤な夕焼け空。
たなびくカーテン。
使い古された机たち。

木製の教室には私ともう1人と、たった2人だけだ。


「────美月、いつまで落ち込んでるの?」

「…しばらくは傷心中ですな。」


私の親友、明音は、はあ…とため息をついた。
いい加減吹っ切れろよ、と言いたげな視線を送ってくるけど、そればかりは許して欲しい。

…だって、仕方ないじゃん。
振られちゃったんだもん。

振られ方だって最悪だしさー、とメソメソしている私に明音は言った。


「んもー…3次元に夢見てるからこうなるの!いっそ3次元なんか諦めなさい!」

「……へ?」

「ビバ、2次元!!」

「わー、すごい次元を超えてしまったよ。」


明音は2次元が好きな健全?な女の子。
私によく漫画をオススメしてくる。
フィギュアを集めているとかよく言うけど、そんなに熱中出来ることがあるなんて羨ましい、と言ったら明音は私に好感を持ったようだった。
オタクを馬鹿にしないやつは良い奴だ、という理由と、調教して沼に引きずり込むためらしい。
よく分からないけど怖い。
こいつはヤバい。


「暇なら、異世界の鍵って調べてみなさい。面白いかもよ。私の主観だけど。」

「いや、明音の主観なのかい!…まあ、気晴らしにいいよー。慰めてくれてありがとう。」

「いえいえ、300円ね。」

「金とるのかい。」


あはは、と乾いた笑いをこぼす私を満足げに見て、彼女は笑った。
あれ、もしかして私を元気づけるためなのかな?
やっぱり明音って、めっちゃ良い奴?


「早く2次元にハマって私と一緒に沼で過ごしましょうね。」

「ごめん、流石に怖すぎ。」


ここまで暴走した明音を止めることは、私にはできなかったよマイマザー。

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