過去こねた | ナノ

ねた

留三郎と伊作

※女体化


癒しと言えば花だと仙蔵が言っていたが留三郎は納得がいかなかった。
花には勿論、癒されるが、女の子のが癒されるに決まっている。
女の子と言えば仙蔵に伊作に与四郎だが、中でも特に伊作には癒される。
伊作は可愛くて優しく穏やかでスタイルもよくて言うことなし。
綺麗だが胸がなくて自分勝手な我が儘でプライドの高い仙蔵や可愛くてスタイルはよ過ぎるくらいがどことなくがさつで大雑把な与四郎とは比べものにならない。
あぁでも、欲を言うならばもっと笑って欲しい。
なら留三郎のやることは一つ。


「伊作」


不思議そうな顔をして振り返る伊作の手を取り上げて、そこにチョコレートの包みを三つ握らせた。
伊作は目を瞬かせる。


「甘い、香り」

「あぁ、チョコレートだ。仙蔵と与四郎と一緒に食べろよ」


しげしげと伊作は手のひらを顔に近づける。
幼さを感じさせるその挙動が可愛い。
チョコレートの香りよりも甘くふわりと伊作が微笑んだ。


「仙蔵と与四郎は好きかな?チョコレート」


うん、やっぱり女の子は笑っていないとな。
留三郎は既に仙蔵と与四郎へ気持ちを向けて微笑んでいる伊作を微笑ましく見つめた。


三郎と雷蔵

三郎が思い出したのは訳のわからない喪失感だった。
指先と頭の芯が冷え、嫌だ嫌だと気持ちばかりが喚いている。
その一方で冷静な意識がこの感覚はなんだと怯えているのだった。
これが戦闘中ならばまだ誤魔化せたかも知れない。
しかし、今は夜。
揺れる火の影は不安を煽り、静かな部屋は孤独を突きつけてく る。
嫌だ。
嫌だ嫌だ。
…怖い。
取り繕うことも忘れていた頬に、ふいに触れたのは指先。
がばりと大袈裟に振り返れば、休んでいるはずの雷蔵がいた。


「…あっ」


漏れたため息と共に三郎の腕は雷蔵の腰にすがっていた。
戸惑いの欠片も見せずに雷蔵は三郎の頭を撫でる。


「ひどい世界だね」


深く沈む、声。


「ひどい世界だ」


仙蔵と伊作

※年齢操作
(六年生→卒業後)
※死ねた


伊作の元からは愛する仲間が消えていった。
留三郎で最後だった。
皆、みんなみんな消えて仕舞った。
世界は腐っているし、風も草木も死んでいる。
耳に響いているのは自分の呼吸の音だけ。
この酷く醜い景色に絹のように美しい髪と白い肌、美しい容姿は場違いなほど艶やかだ。
仙蔵が伊作を指し示した。


「最後はお前だ、伊作。お前も私と共に消える、か?」


伊作は微笑んだ。


「そうだね。仙蔵と、一緒に」


伊作は仙蔵の手を掴んで起き上がる。
これはきっと罪の証だ。
世界はどこまでも腐っている。
そして、僕も、仙蔵も腐っている。


キョウヤと流太郎

存外しんなりとキョウヤの髪は流太郎の指を滑った。
まるで彼の人柄そのもののような手応えに一つの記憶が蘇る。
記憶で笑う両親が髪質は性格を表していると言っていた。
ならば我は硬質なのじゃな、と両親の硬質な髪を撫でた。
そんな、じゃれあい。


「どうした」


髪を握ったまま動かない流太郎を不審に思ったらしくキョウヤが単調な声を掛けた。
流太郎はすまんすまんと謝りながら櫛を握りなおしキョウヤの髪に差し入れた。


「髪質はのう、その者の性格を表しておるらしいぞ」


折角の知識を披露するとキョウヤは一理あるかも知れねぇなと頷いた。


「キョウヤは真っ直ぐじゃが、少しばかり癖があるのう」

「流太郎の髪はふわふわと優しそうに見えてかなり硬質だ」


褒めているのか貶しているのか。
二人はお互いの髪に指を絡めて、お互いの感触を確認した。


文次郎と仙蔵

小平太が助ければ「有り難う」、長次が手伝えば「すまない」。
なのに文次郎が手を出すと「余計なお世話だ」と突っぱねられる。
突っぱねた仙蔵は少し愉快そうに、切なそうにしているから嫌われている訳ではないのだと思う。
「余計なお世話」なその手を攫って仙蔵はそのまま己の頬に寄せる。
文次郎は自分の固い手と仙蔵の白い頬のコントラストに目を開いた。
その少し上で伏せられた睫は長くて、紫の目は切ない。


「この手は私が…」


言いかけて止めた唇がそっと文次郎の手に触れた。
かけそい感触に文次郎は顔を赤くした。
今度は文次郎が仙蔵のもう片方の手を取る。
赤い顔には強い目が宿って。
それからその目はそっと伏せられた。


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