こねた
仙蔵と伊作
「最近の仙蔵さ、なんで前みたいに文次郎に理不尽な事、しなくなったの?」
「なんでだと思う?」
「わからない」
「少し前まではなにをしても嫌われない自信があったんだ。極端な話し「馬鹿」と言っても「阿呆」と言っても、…「死ね」とさえ言っても照れ隠しで済むと思っていたんだ。それで許されると思っていたんだ。嫌われずに好かれたままだと思っていたんだ。でも、今はなにを言っても嫌われない自信なんてない。だから、怖くて、ふざけて「阿呆」とさえ言えなくなって仕舞った。…阿呆はどっちだって話しだな」
「そうなんだ。…ねぇ、それって、文次郎を信用してないって事なんじゃない?」
「違う。違うよ。文次郎の事は信用してる。信頼だってしてるし、…でも、怖いんだ。嫌われるのが怖い。めんどうがられて要らないって言われるかも知れないのが怖い。怖いんだ、文次郎の隣に要られなくなるのが」
「…」
「…ごめん」
「ううん、僕こそ、変な事、聞いてごめんね。…でもね、仙蔵。仙蔵がそこまで不安にならなきゃならない程、器の小さい奴じゃないよ、文次郎は。それは仙蔵が一番、よく知ってるんじゃない?…だから、…大丈夫だよ」
文次郎(と仙蔵)
※転生パロ
俺は生まれた時から前世の記憶があった。
しかし、仙蔵にはなかった。
けれども、俺と仙蔵は当たり前のように出会って、当たり前のように恋をした。
きっといつか仙蔵も前世の記憶を思い出すかも知れない。
そうしたら、二人して笑うんだ。
「「俺( 私 )はまたお前に恋をしたのか」」
ってな。
(文次郎と)仙蔵
※妖怪パロ
幾十の朝を越えても幾百の昼を越えても幾千の夜を越えても幾年の時を越えてもお前を手に入れた喜びもお前を失った悲しみが消える事はないのだよ。
「…文次郎」
お前は今、何処に居る?
もう一度、手に入れたい。
また失うのだろうけれど。
鉢屋と恵々子
※妖怪パロ
嫌い。
嫌い嫌い嫌い。
嫌いなんだ。
あんな娘、嫌いだ。
だって、
だってだって、
あの娘は私たちを封じ込めた男の娘。
嫌いで当然、当然だろう。
なのに、
なのになのに、
「あの、鉢屋先輩」
「なに?」
「怪我、されてますよね?」
「だから?」
「手当て、してもいいですか?」
「…いいよ」
冷たく仕切れないのは、…何故?
「有り難うございます!」
あぁ、そうか。
そう言う事か。
この娘の声があの時の誰かの声に似てる。
似てるから、
( お願い!封印しないで! )
私はこの娘に冷たく仕切れないんだ。
文次郎と仙蔵
※妖怪パロ
「はじめまして」
そう言い、こう言った事に慣れていないのか照れながら貴方は私に手を差し出した。
私は照れる貴方に差し出された手をそっと掴み出来るだけ綺麗な微笑みを作った。
「はじめまして」
私の目は、口は、声は、綺麗に笑えているだろうか?
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