桜のみる夢 | ナノ


 私の属性は

「では……、皆」

主の声に応じて 一斉に顕現した美しい彩の光
そのそれぞれが世界を形づくる力の一片であり
可憐な花がひらく前のような可能性を秘めている

自主練を行う騎士が数名ほどの 演習場の一角で
今 私は属性を見極めるために時間をいただいているのだ

「…………、」

精霊の会話には 人が使うような言葉は必要ない
想いを大気にのせるだけで過不足なく伝えることができる
波動が大きくなりすぎないようにだけ 加減をして──

《先輩方 お時間いただき恐縮です》
《そんなに畏まらなくても良いのに》

《まだまだ力の使い方もままなりません
 主の信頼も得られていませんから》

《過ぎた謙遜は嫌味よセレ》
《ネスは本当に素直じゃないったら》
《私も早くセレみたいになりたーい》

六色の囁き瞬く様子は
まるで鈴がころころとそれぞれの音を鳴らすよう
とても愛らしく感じてしまう

《むしろネスは波長合ってるんじゃない?》
《インが言うなら間違いないわね》
《ぐぬぬ》
《あれっでも私ともかなり波長近いよね?》
《そうですね ええと──》

音が協和するように波動に調和を見いだせたのは
瑠璃茉莉と向日葵と そして黒薔薇

「クア様とイク様、そしてネス様と共鳴するような感覚があります」

「水と地と、陰の属性に適性があるということか……!?」

「複合的なのでしょうか、純粋に一致している感覚はありませんでした」

主に報告していると
私の肩や指先に 蝶のようにふわりと乗る先輩方が
少しくすぐったくて顔が緩んだ

《様だって》
《様はないわね》
《そうね なんだか寂しいわね》
《様はやめましょうよ》
《きもちわるいわ》
《普通に呼んでいいのよ》

《ではお言葉に甘えますね》

話ができ 受け入れられることがこんなにも嬉しい
意思をそのまま発する″想い″に嘘は有り得ないからだ

「蕾たちとも仲良くできそうだね」
「はい。皆とても優しくて、そしてとても愛らしい」
「私の自慢だ」
「ええ」

主の言葉に 胸にちり と差した先輩方への羨望
いつの間にかすっかりと
精霊としての自覚と主を慕う心が 芽生えている己に気付く
いつの日か私も 自慢に思ってもらえる時が来るだろうか


「ユリウス! どう? 属性分かった?」

予定が合ったらしいフェリス様が
私たちを見つけて 此方へ駆けて来られた
振り向き応対する主は やや熱の入った様子だ

「どうやら水と地と陰の3種に対して複合的な適性が
 あるようだ。仮に″樹属性″と呼称しようと思う」

「3種類!? ほぇーー、属性まで規格外だにゃんて……
 そうだ、水の属性があるなら私が少し教えてあげるよ!」

「! ありがとうございます、フェリス様。
 是非ともお願いいたします」

水の魔法を極める方から直接教えを授ることができるなど
なんと贅沢なことだろう
二つ返事でお願いをすると
初めての魔法の授業が始まった

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