星降る夜に | ナノ


 温まりましょう

先程の場所からそう離れていない自宅。
扉をそっと開けて履き物を脱ぐ。

リビングのソファーに少年を下ろすと、少し待っていて、と声を掛けて応急セットと洗面器をとりにいく。
洗面器に水とポットの湯を加え、少し熱い目に調節しタオルを浸して絞っては、傷口を包むように汚れを拭いた。


「……、ぅ」
「滲みるね……」


消毒を行い、ガーゼとテープで手当てする。
そのあと服から露出している部分を丁寧に拭いていった。


「本当はすぐにでも全身洗ってあげたいんだけど……
 最後に温かいご飯を食べたのはいつ?」

「……おぼえてない」


返ってきた小さな声に、頭をそっと撫でる。


「それじゃあお粥でも作ろうかな」


どういう事情があるのか分からないけれど、あの子を守ってやれる親や保護者は……いないのだろう。
個性も関係しているのかもしれない。

ーーーーー。
沸々ゴトゴトと動く小さい土鍋の蓋の音に意識が引き戻され
火力を弱める。
煮詰めてゆるめに仕上げたそれを茶碗によそった。

木製のスプーンとお茶も一緒に少年の元へ持っていくと、ぐう、とお腹の音が聞こえた。


「熱いからゆっくりね」


最初の警戒はどこへやら、少年はふぅふぅとお粥に息を吹き掛けて冷ましながら、独特な食器の持ち方で器用にかきこんでゆく。
良い食べっぷりだけどお腹は吃驚しないだろうか……

お代わりをしてしっかりとお腹を満たした彼は、青白かった頬に僅かに血色が戻り、うとうととし始めた。

寝る前にトイレ行っとこうか、と促し案内して用を足させ、手を洗ってもらう。
眠さのせいか黙って素直に従ってくれる彼は、今はただの年相応な少年にしか見えず微笑ましい。

今までの疲れもあるのだろう。
先ほどまで座っていたソファーに戻ると猫のように丸くなって眠ってしまった。

肌掛けを持ってきて被せると電気を消し、そういえばお互い自己紹介もしていなかったことに気付く。

明日お話できれば良いのだけれど、朝早くに起きて逃げてしまったらそれまでだ。
自由にすれば良いと思う反面、幼い寝顔に心癒されていることも自覚していた。


「……おやすみ」


小さく呟くと自分も就寝の支度に入った。

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