*02
「ええっと、これは……」
「こっちだと思うよ。」
頭がいいのと機械に強いのは違う。たったいま理解した。アルジュナは機械オンチであった。DVDの入れ方さえロクに分からないとは思わなかった。
正直かわいい。
「精密機器とは何故こうも複雑なのでしょう……」
これはそうでもないだろ。
……などとは口にしない。アルジュナが本気で落ち込んでいるからだ。
気にしないように画面をみる姿勢をとる。画面を見るに複製のようだ。機械オンチのアルジュナには分からないだろう。法に触れていないといいのだが。
しかし、そんな心配は全て杞憂に終わった。
映し出されたのは映画などではなかったのだ。
見知らぬ男が映しだされた。
ビデオカメラのスイッチを入れたのだろう。
「Q?」
アルジュナが言う。
映画を貸してくれたという、兄の友人だろうか。
男がカメラから離れ、それの全貌が明らかになる。
それをみて、アルジュナも、Rも絶句した。
『はいカルナさん、準備できたよ。』
カルナ、と呼ばれた男がむぐ、と返事をした。
口元も目元も布に塞がれて顔は分からないが、その白い肌に白い髪は間違いなくアルジュナの兄のものだ。アルジュナの兄が全裸にガニ股で固定され、数えきれないほどのローターが乳首に、男性器に……そして、コードの束のみが覗く腸内にも取り付けられていた。
『スイッチ、いれてくね。』
こくり、とカルナがうなずく。
Qは乳首のローターのスイッチをいれる。どちらの乳首も2つのローターで乳頭を挟まれている状態だ。Qがクイッとローターごと乳頭を摘む。カルナの身体が跳ねた。Qの手がグリグリと刺激を与える度にカルナが腰を振る。信じられない光景だ。いつもはあれほどクールな彼が、乳首の刺激に即落ちし、情けなく男性器を揺らしている。下半身の刺激が欲しくて媚びへつらっている。ヨダレは垂れ流しで、目元の布は濡れて滲んでいた。
扇動的だ。シーツを引きシワを作るつま先まで、人の情欲を掻き立てるよう調教されているようだ。白い足がつま先だけほんのりピンク色にそまっていて、れはとても……
「………………R。」
はっとアルジュナの方を向く。
怒っている。当然だ。俺は画面に夢中になっていたのだから。
「そんなに、カルナの身体がいいですか?」
「ち、ちが、」
「違いませんね?」
「……違いません。」
にっこりとアルジュナが笑う。目が笑っていない。史上最高に怒らせている。申し訳ないがカルナに興奮したのは事実だ。言い訳なんてできない。
「足、ですか、見ていたのは。カルナの足、綺麗ですよね。」
アルジュナは椅子に座ると、床に座った俺を見下ろした。
アルジュナの足が、俺の下肢に伸びる。スルリとソコを確認するように撫ぜた。そこは既に固くなっていて、恥ずかしく思えたが、アルジュナの顔を見ると何もかも吹き飛んだ。
アルジュナが悲しそうな顔をしていたからだ。
「アルジュナ。」
「私には勃起なんてしたとこもないのに。」
アルジュナは足裏でソレを優しく踏みつけた。ぐりぐりと刺激を与えられる。全体を指でなぞられる。その行為で肉の棒はどうしても質量を増す。アルジュナの生足なんて見たのも初めてなのだ。
「アルジュナ、ごめん。カルナに興奮したのは事実だよ。」
「……はい。」
「でも俺はアルジュナが1番だよ。」
アルジュナの、逸らされていた瞳と目が合った。吸い込まれそうな黒、それは無彩色であるのに艶やかにも思える、アルジュナの色。美しいものだ。
「なら、してください。ここで、私と。」
踏みつける力が強くなった。身体がビクリと勝手に跳ねる。
「ほら、脱いで。」
指示された通り自らベルトを取り、ズボンと下着を下ろした。固くなったモノが天を仰ぐ。丁度アルジュナに向かうように反り勃っていて、モノを凝視しだしたアルジュナの目もあって恥ずかしい。
再び、今度は直接確かめるように両方の足で撫ぜる。褐色の肌に淡い色の切りそろえられた爪。男らしい、大きくてしっかりした足。Rの男性器とは不釣り合いな、彫刻のように繊細な足。
その両の裏で、今度は搾り取るように扱かれる。アルジュナが必死なのが伝わってくる。アルジュナの足の裏、固い……頑丈な証だ。痛い……が、気持ちがいい。
「んっ!」
びゅるるっと流されるがまま、欲望を撒き散らした。ぼやける視界の中、アルジュナが白濁を見つめているのだけ見て取れた。吐き出した頭が冷静になって、やらかした事を視認する。白濁でアルジュナの足が汚れていた。
「あ、ごめん!」
「構いませんが、掃除はしてください。」
すっと口元につま先が向けられる。
舐めろというのか、自分の精液を。
「アル、ジュナ、」
「……嫌、ですか?」
アルジュナは少し残念そうな顔をした。そうだ、アルジュナがして欲しいから言ったのだ。アルジュナがして欲しいなら、俺はするべきなのだ。
「嫌じゃない。」
白く濡れた指を、口に含んだ。ちゅっ、じゅるりと舌で丹念に掃除する。指の指の間に吸い付く。舌を出し裏まで全部を舐めとった。アルジュナが喉を鳴らしている。この行為に興奮している。嬉しかった。
「R。」
一通り舐め終わるとアルジュナがティッシュを差し出してきた。さすがに自分のは飲み込めない。全て吐き出し屑篭に投げ捨てる。
「男性同士はここにいれるのですね。」
画面をみてアルジュナが言う。
Qが、カルナのローターのコードが垂れる孔に指を押し入れ、入口を解している。カルナの尻穴はとろとろで、まるで女性器。どういった用途で使用されたのか……するのか、想像はつく。
「んっ、くぅっ、」
アルジュナの声だ。いつの間にか、アルジュナは自らのズボンに腕を差し込んでいた。恐らく自らのを解そうと無理矢理指を押し入れているのだろう。苦しげな声が響いた。
「アルジュナ、指、かして。」
「……一応言っておきますが、汚いですよ。」
入れていた指が差し出される。指先から生臭い独特な臭いがする。無性に興奮した。
「嗅がないでください。恥ずかしいです。」
「そう?俺は好きだよ?」
指先に舌を絡める。唾液をまとわりつかせるようにしゃぶる。褐色の指が唾液で光を反射した。えも言われぬ気分だ。真っ白なキャンバスに黒いインクをぶちまけた時のような、ガラスのコップを落として粉々にしたときのような感覚。
アルジュナの指が動く。口の中を支配される。ちゅくちゅくと恥ずかしい音が鳴って目を逸らす。アルジュナの顔が見えなくなった。アルジュナはRの視線がないのをいいことに、悪戯な笑みを浮かべては股間部に足の裏を押し付ける。
いいように弄られていたRは仕返しとでもいわんばかりに、興奮した勢いのままアルジュナのスボンと下着を一緒に降ろした。勃起していた巨根が天井を仰ぐ。アルジュナは羞恥に股を閉じるが、どう考えても平均より大きなソレは隠しきれない。
「な、な、なにを!?確認くらいとるべきでは!?」
「いいだろ?どうせ全部脱ぐんだから。
アルジュナのおっきいなあ。」
「は、弾かないで下さい!!」
黒い瞳は涙を滲ませ、顔は紅く染まっている。指摘したら怒って隠してしまうだろうか。これはそのままにしておこう。
アルジュナを床に寝かせ腰を膝の上に。脚を折り曲げ恥ずかしいところを剥き出しにさせた。アルジュナは眉を寄せ嫌そうに顔を引き攣らせるが、抵抗はとらずされるがままポーズをとる。
「アルジュナの解すとこみせてよ。」
「この体勢のまま、自分でしろと?」
「そういうこと。」
「意地の悪い人だ。」
そういいつつもアルジュナはその指を尻へと伸ばす。双丘の間をまさぐって、小さな菊門に指が触れる。菊門はキュッとすぼまった。緊張しているようだ。
「ちゃんとみてるからね。」
そういうとアルジュナは困ったように顔を逸らす。同時にアナルがヒクついた。期待してくれている。待ち望んでくれている。そう思えた。
アルジュナが指を突き立て挿入する。窄まりが指に吸い付いているようだ。興奮が抑えられなくなってきて、目の前の双丘を鷲づかんで揉みしだいた。アルジュナが目を閉じ眉を寄せ耐えるような仕草をする。腰が揺れて、差し込んだ指の動きが早まった。処女アナルが形を変えくちゅくちゅと音をだす。アルジュナの全身がしっとりと汗に濡れだして、欲求に耐えているのは見て取れた。
「アルジュナ。」
「……はい。」
「言って欲しい。」
Rは今最高に意地の悪いことを言った。アルジュナはそう思った。端的に過ぎる言い回しであったが、アルジュナが理解するにはじゅうぶんであった。
アルジュナが息を飲む。
2人が黙り込み、テレビの音だけが響く。
『うぐっ、ふーっ♡ふーっ♡ん、んんぅん♡んぅぅ♡♡』
カルナの喘ぎ声、ローターが震える音、水の音が思考を削ぐ。
Rは楽しそうな顔をしている。
その顔を何より好む自分がいた。
それを崩さないためには、いかに屈辱的であろうともうアルジュナは言うしかないのだ。
「R、抱いてください。……女のように。」
アルジュナは解してみせたアナを2本の指で押し開く。空気が入ってナカが冷たい。Rの目線がアナにいった。指を咥えたそこが見られて、身体の奥深くまで支配されたような気分になる。アルジュナへの返答としてRが頷き、そして楽しそうに微笑んだのが見えた。それが嬉しくて、アルジュナは無様にも誘惑するように腰を振る。無意識だ、彼自身は気づいていない。
……これは素質があるのでは、とRは思う。もちろん、指摘はできなかったが。
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