7.幸せになるのはとてもシンプルなことです。
しかし、シンプルでいることはとても難しい。
両手の指でぎゅーっと乳首をつまみ持ち上げると、はふはふ♡とカルナの息が荒くなる。ぎゅっぎゅっと力を入れ押しつぶすと、その度にんっ♡と素直に反応した。
「カルナさん……」
この指に合わせ敏感に、従順に身体を踊らせるその人見て、支配欲が満たされる。同時に、もっと蹂躙したいと熱がたまる。
汚物に塗れた睾丸を鷲掴んで揉みしだくと、カルナは今までよりずっと甘い声を吐き出した。
「ひぃ♡ひぃ♡んぁ♡あぁっ♡&あっ♡♡」
母体として女性の機能を求められていた身体は、男性としての機能を失いつつあった。睾丸を揉んでみても、陰茎を摘んでみても、もう勃起はできない。ずっと白くぷにぷにとしてかわいらしいそれは、まるでマシュマロのようだ。
……先程までのカルナならこれは恥だと、屈辱だと受け取っただろうか。今となってはわからない。
男性としての象徴を掌握されて、愛でられて、それを幸せだと感じるカルナに、もうそんな思考は存在しなかった。
「んっ、んんっ♡♡つぅぅ♡♡」
子種のかわりのようにぴゅっ、ぴゅーっと乳汁が吹き出す。絶頂したようだ。
カルナがビクビクと余韻に震えている。あられもない姿に沸き立った、ムクムクと渦巻きだした新たな欲望を誤魔化そうと、その腹に触れた。
ぽっこりと膨らんだそこを軽く押してみると、胸までとはいかないが、とても柔らかい。中はどうなっているのだろうか。出産のため、おかしな器官が増やされていたならば、今頃とっくに切除されていることだろう。その腹に切られたあとはない。ならばきっと、その膨らみも問題無いと判断されているのだ。
「お前の手はあたたかいな。……孕んだような気分だ。」
慈母のような笑み。
その瞳の奥に薄らと絶望を感じて、その手をそっと離した。カルナは今何を考えているのだろう。腹の中にいた幼蟲のことでも、思い出してしまったのだろうか。
「ごめん、嫌な気持ちにさせた。」
「?、嫌な気持ちになどなってはおらぬよ。」
カルナがFの手をつかんでは、もう一度その腹に押し付けた。
続けて欲しいようだ。
「ここにお前との子が居たのなら、今はどれだけ幸福だったのかを考えていた。」
そうカルナは言う。子を産むために変えられた、けれど愛する人の子は産めないちぐはぐな体は、これから先も、カルナの精神を蝕み続けるのだろう。
「カルナさん」
子の頭を撫でる父親のように、その腹を撫でる。寄り添うように、口付けを施した。
「いつか絶対、つくろうね。ここに、俺たちの赤ちゃん。」
瞳に薄らと水の膜を作り、穏やかにカルナは頷いた。
望みなどない。不可能である。互いによく理解していた。
けれどその言葉はなぜか、カルナをとても安心させたのだ。