無邪気な中毒者 | ナノ

2.浮遊、落下。※


黒革の首輪とぶら下がった金の南京錠は、不思議とカルナに馴染んで、いつしかつけていることすら忘れていた。

カルナが拉致監禁されて4ヶ月。

男が仕事でいない間、初め1ヶ月半は開発のため全身に器具がつけられ閉じこもっていたが、それが終わった今は比較的自由に歩き回っていた。

温室、外に出られないカルナにとって、唯一陽の光を浴びられる場所。もう既に体内の時計が狂いきっていたカルナは、その光で今が日中なのだと初めて知るのだ。

カルナにとって監獄のようなこの館の中で、花のよい香りと暖かな陽気で包まれたこの場所は、唯一好ましい場所であった。

だからその日はその暖かさに微睡んで、酷使された身体は眠りについてしまっていたのだ。



目が覚めたのは、息苦しさによるものだった。

「おはようカルナさん。それで、僕におかえりなさいするの忘れてたね?」

空を見ると太陽は傾き空を紅く染めていた。
いつもは言いつけの通り、男の帰宅を知らせる鐘の音を聞き、寝台の上でその身体を使い奉仕していたのだが、今日は熟睡し、鐘の音に気がつかなかったのだ。

「いつもはちゃんとしてるから許してあげたいけど……罰はちゃんとしないとダメだよね。」

ぐっと男が縄を引く。
寝ている間に縛られていた。男が縄を引く度に縄が擦れて痛む。身体が跳ねて一層締りが増す。理不尽な快楽に悶えているカルナは自身の後孔がヒクついているのに気づけない。その穴はまだピンクで慎ましげだが、すでに男を求めるよう調教されていた。

バチィン!と派手な音が響く。指示通り突き出した臀部が力いっぱい叩かれる。

「すまな、ッ!!す、すまない"っ!」

初めて乳首を抓られた時に似た、痛みの中に感じる淡い快楽……カルナはそれが好きなのだと、男は見抜いていた。

「すまなひっ」

謝罪しろと命じられている。それを口にする限り、カルナは屈服の声を抑えられなくなる。
透き通るような白が、繰り返されるスパンキングに染められていく。叩かれる度、中心に咲く蕾がかわいらしく、いやらしく男を誘う。それを見て興奮した男の手がエスカレートする。それは空が暗くなっても続けられた。

男の手が止まった時、叩かれていた尻は真っ赤に染まっていた。白い肌に映えて、これはこれで趣深いものだと男は写真に収める。
呼吸を整えるカルナを眺めていると、男は気がついた。触れられてもいないカルナのペニスが、ぽたぽたと液体を垂れ流し、床に小さな池を作っていることに。

「おもらししたの?だらしないね……」

男がカルナのソレを掴む。キュッと絞るとピンクの小さな穴から出しきれなかった水滴が顔を出す。それは大層おいしそうで、男は先端をちゅっと吸い上げていた。
同時に白い肩がピクンと跳ねる。そうするとまた縄が擦れ、赤くなった双丘の間をよりきつく締める。
ピンクのアナルが擦れてモノ欲しげに覗いている。それを眺めはするが触れることはなく、男は叩いていたところを優しく揉む。カルナは興奮故の無意識だろうが、秘口への快楽を求め尻をふり、縄に擦り付けるように腰を捩っている。その仕草はクールで言葉数の少ないカルナが、きちんと欲情しているのだと訴えていた。

「ここ、そんなに弄ってほしい?」

男の指がカルナの秘口を縄の上からぐっと押しこんだ。カルナの恥ずかしい口は嬉しそうに縄に吸い付いた。

疼いて疼いてしかたがなくて、もどかしくてもどかしくて、ただ一言いえば良いと、どうせ耐えたところで無意味だと思うと、口が開く。

「…………弄ってくれ。」

監禁当初のカルナなら、絶対に自ら口走ることのなかった快楽を乞う言葉。俗に言う、おねだり。
腰を振り誘惑するそれは、4ヶ月にも及ぶ調教の賜であり、この状況への諦観であった。

「いいねえ、悪くない。ぐちょぐちょにしてあげるね。」

男が縄を引く。割れ目に食い込んだ縄をつかみ無理矢理持ち上げ、もう片方の手で会陰部の縄をつかみ、上下する。使用されて少し盛り上がった蕾に擦りつける。くちゅくちゅと卑劣な音がした。デリケートな口が激しい摩擦で血を流す。けれどその手は止まらない。ペニスがヨダレを流すのも止められない。

「ぁ……ぃあ……」

「またイッちゃった、痛いの大好きだね。」

否定はできない。「ああ……」と返事をする。
絶頂しようとその手は止まらない。いつものように男が満足するまで続けられるのだろう。

「愛してるよ……僕のカルナさん。」

くちゅっくちゅっぬちゅっぬちゅっと軽い音が響く。カルナは血を流す傷口がつくる突き刺すような痛み……内側まで響く痛覚に悦を感じていた。

「っ、でる……!ふ、あ"あぁ……」

ぷしゃぁぁっと再三おもらしをする。透明な液体が弾ける。初めての感覚、女のコになる感覚、敗北と被支配の感覚……潮吹きという、カルナにその知識はない。ただ男に改造されて、ついに身体がおかしくなったのだと思った。

「女のコのお汁……!ちゃんとだせたね、偉いよ……!」

カルナの拘束が解かれる。固定されていた体の節々が痛い。縄が擦れてどこもかしこも赤く線を残していた。
全裸のまま上機嫌になった男に引かれ、1人の時は入るなと命じられていた部屋に入る。男が持ってきたのはスタンダートにみえるウエディングドレス、特注だそうだ。
着用してそのおかしさに気づいた。スカートは中心だけが薄く下着は男性器どころか秘口すら隠せない紐パン。スカートの薄いところから男性器のピンクが透けている。
上半身は普通に見えるが胸元は乳首にクリップでとめられていた。

歩く度に食い込んだ紐が擦れ、先っぽから零れた液でより透ける。揺れるドレスの重量で乳首が引かれる。最悪の構造をしていた。

「このドレスで結婚式しようね。」

カルナの口に、男の舌が差し込まれる。くちゃくちゃといいように弄ばれ、尻の穴が……女性器が疼く。すでにカルナの脳は、自分は本当に女のコになってしまったのだと錯覚していた。

「ああ。」

その返事に男はにっこりと笑い、カルナの下腹部を撫でる。
優しい手つき、それに暖かく大きな手が、ここにこの男との子を孕むのだと錯覚させる。

もはやカルナはだらりとこぼれる唾液を拭うこともなく、男の花嫁として完成していた。

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