気がつけば
2013/09/09 00:42




「健二さんはさ、すぐ鼻血出すよね」
ことりと首を傾げながら言われた台詞に、飲んでいたラムネがつかえてむぐっなんて不様な音を立てて逆流した。
大丈夫?なんてタオルを差し出してくれるのにありがとう、と返しながらそもそもそうなった原因に感謝してやるべきかなんて思う。

「鼻の粘膜が、もともと弱いから、仕方ないと言うか・・・」

しどろもどろである。
鼻の粘膜が弱い人間は、気がつけば鼻血が出るし普通にしてても垂れてくる事がある。
粘膜が強くて出た事ないなんて人には分からないだろうけど。

どんなひがみだ。

「粘膜が弱いとでるの?」

ことり、さっきとは違う方向に傾けられた頭。
そんなに左右に振ったらもげてしまうんじゃないかと心配になる。

「まぁ、癖になっていると言うか・・・突然そうなるというか」

「へぇ?」

きらり、猫の様な瞳が光る。
なんだかその悪戯な光がとても自分の不利になる気がして、じりっと距離を取る。
けれど、向かう所敵なし、天下無敵のキングカズマのご主人様はそんな僕の行動なんて簡単に先回りしてしまって、

「わ、わっ・・・んむ」

わざわざ夏の暑い中、男同士抱きしめあって、より暑くなる様な事を・・・
べろり、唇が舐められる。
驚いて開いた唇からそれは簡単に入りこんで、口内の気持ちいい部分をざらざらと擦る様にして舐めとられる。
「んっ、ふ」
なすすべもなく、抵抗しようとした腕は力を失って縋る様に彼のタンクトップを握りしめる。
「ふぁ、あ、んん」
こんなにえっちなキスの仕方、誰に習ったの!
叫びたい気がしたけれど、口内を動き回る舌に言葉を出すことは出来ず、無かったとしても平然と相手を応えられてしまってももやもやするので言えない。

「・・・えっち」

仕上げとばかりに舐められた上唇。
離れたそれを上目に睨みつけながら言えば、いつもきりりとした顔がへにょりと笑う

「だって粘膜、弱いんでしょ?」

言われた言葉に一瞬対応できなくて、首を傾けたから思う。
(これ、僕の癖だ)
分からなくて首を傾げるその仕草。
さっきから見せられていた彼のその仕草が、本来自分の癖だと気付いて無性に恥ずかしくなる。
かぁ、と紅くなった顔に、意味を理解したのだと勘違いした彼はなお口を開く。

「だからさ、その弱い粘膜を日々僕がこうして刺激したら」

僕がいない時も思い出してくれるでしょう?



だからこれも癖になって、




まだ声変りもしていないその声で、とびきり甘い声で囁かれたその言葉で・・・
今度こそゆでだこみたくなった顔を抑え俯いた。








ん?夏っぽいのラムネだけや。
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