吉田くんにお仕置きされる
わかったことはひとつ。この世界と私がいた世界は似て非なるものだということがわかった。この世界には悪魔というものがいるらしい。私を拾った彼、吉田くんはそれを狩る民間の業者、デビルハンターらしい。そして驚いたことに彼は私よりも年下である。なんと高校生。年下であることはわかっていたけれど、まさか高校生に匿われること……いいや、飼われることになるだなんて思ってもみなかった。けれど私にこの世界のどこにも行き場がないことは確かで、彼に助けてもらえなければ路頭を彷徨うことになっていたことは確実だった。いよいよ彼は私の命の恩人ということになった。
「吉田くん」
「ご主人様って呼んでよ」
「いやだ。なんで年下のあなたをご主人様って呼ばないといけないの」
「だって、オレが拾わなかったら、ぽち死んでたかもしれないだろ?」
「ぽちって呼ばないで」
「じゃあ、ご主人様って呼んで、お手できたらやめてあげる」
ソファに座った吉田くんは私を床に座らせ、見下す。ペット扱いらしい。あくまで自分の方が上だと示したいのだろうか。ぽちと呼ばれるくらいだったら、まだご主人様呼びした方がマシだ。
「わかった」
「そうじゃなくて。『わかりました。ご主人様』でしょ?」
「わかりました。ご主人様」
「じゃあ、お手」
差し出された手。私はそれに右手を重ねる。そうすると、彼はよくできましたと言って、私の頭を撫でた。
決して人間扱いされない訳ではない。トイレやお風呂は自分でできるし、ご飯はちゃんとお皿の上に乗って、手で食べなくてもいい。人としての尊厳は失わずに済んだわけだ。
ただこのまま吉田くんに養われるというのは困る。私のプライドに関わる。
「でも戸籍ないし、働けないでしょ」
「え、確かにそうだけど……」
「心配しなくても#名前#さん一人養うくらいなら余裕だよ、オレ」
「た、確かに」
なんとこの高校生、マンションに住んでいるのである。しかもいい2LDKの部屋に。おかしい。一体どんな仕事をすればこんないいところに住めるんだろうか。
「まさかその顔で貢がせて……」
「失礼だな。真っ当にデビルハンターとして稼いでる。じゃあ余計なこと考えたお仕置き」
「は?」
私がその言葉に戸惑っている間に私の体は彼の背後から伸びてきた触手によって宙に浮く。四肢をすっかり拘束されてしまったせいで身動きは取れない。
「離してッ」
「どんな気分?」
「最悪っ」
「じゃあ、いっぱい笑わせてあげる」
ニヤリと笑った吉田くん。指で軽く合図すると、残りの触手が私に襲いかかって来た。それは私の服の裾から入り込み、引き上げた。そうすればお腹が露出する。胸はギリギリ見えない。
「な、何するわけ!?」
「さっきも言った通り笑わせるだけだよ。……やれ」
二本の触手が私の素肌にぴとりと添えられる。そこは敏感な横腹。だらりと汗が額を流れる。嫌な予感がした。そしてそれは的中する。
さわさわ。筆が表面を軽くなでるがごとく、触手はその先端でつつーっと薄い肌をなぞる。私の体はそれだけ大きく跳ねる。
「弱いんだ」
「や、やめ」
制止しようと言葉での抵抗を試みた瞬間に、再び肌をなぞられ、それは間髪なく続けられる。そうすればもう我慢はできなかった。
「ひゃっ、くす、くすぐった、あっ。やめっ、やっ」
さわさわと動く触手は的確に私の弱いところを責めていく。笑ってしゃくりあげて。これじゃあ息をつく暇もない。だんだんと四肢の力も入らなくなり、くねくねと体をよじってなんとかくすぐったいのを逃すにも体が悲鳴をあげ出した。
「やんッ、あっ、やめてッ、わかったッ、わかったッ、謝るからあっ」
「ふーん、謝ってよ」
「ご、ごめん、な、さっい、いうこと、きくッから……」
「ほんと?」
「ほん、とッ……ひゃっ」
「破ったら、もっとひどいことするから」
私は何度も縦に首をふった。もうしない。もう絶対にしない。そう強く示すように。
するとくすぐりの刑は止み、私は床へと降ろされる。私は背中を丸めその場にうずくまった。
「今日はこれで許してあげる」
吉田くんは私に近づくと、その指先でそっと背筋を撫でた。するとまだ余韻から抜け出せない体はそれにすらも敏感に反応し、跳ねてしまう。
「やめっ、てっ、ごしゅじんさまッ」
「いいこ。ちゃんと言うこと聞けるね。それに涙流しちゃってかわいいな。そんな顔されたらもっとしたくなっちゃうんだけど」
「あっ……」
「冗談。しないよ」
私は彼により上を向かされる。彼の黒い瞳と視線が絡まった。彼はうっそり微笑んだ。


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