六周年質問企画



アス「水はまだあったの?」

嵐「少しだけな。水がなくて使わなくなった、ってわけじゃないから、たまに草の水やりとかに使ってはいたらしい。だから、つるべなんかもそのままあった」

天狗「思い出してきた?」

明良「……あー……はははは」

嵐「清めるだとか、そういうのは俺には出来ないから、とりあえず何がどれだけいるのか確かめるのがその時の仕事でさ。したらまあ、いるわいるわ。井戸の底から壁から……「何が」いるのかってわからないくらい、もう全部がごちゃまぜになって、こりゃさすがにまずいと思って離れようとしたら手つかまれてなあ」

アス「うわ」

嵐「で、井戸にそのまま引きずり込まれた」

ライ「……それ、ひどいの一言で済むか?」

嵐「済まねえなあ……っておい、逃げるなこら。思い出したろ」

明良「あれはおれも被害者だ!」

嵐「井戸の中は水が残ってるし、周りはあれだろ。つるべの縄に捕まってとにかく助けを呼んでさ。それ、見に行ったのが昼なんだけど、結局助けられたのが次の日の朝だったかな。人間、こういう時に廃人になるんだなあってしみじみ実感した」

天狗「お前にしちゃ、意外と冷静だね。よく一晩もったじゃないか」

嵐「それが、水の底は案外静かなんだよ。だからとにかくそこだけを見て、他は何も見ない聞かないを徹底したら無事に済んだ。つっても、あの時は春でまだ水も冷たかったし、助けられてから風邪ひいて大熱出したけどな」

ライ「その後は?」

嵐「俺が、水の底が静かなのは、そこに何かあるからじゃないかって言ったら、今度は明良が入ってそれを確かめることになってな。こいつはほら、何も見えないし感じないし。だから適任ってことで」

明良「縄一つ腰にくくりつけて降ろされたもんなあ……深いし、水は冷たいし、暗いし、親父はうるせえし。だから、これはおれも被害者だって!」

嵐「巻き込まれて一番の被害を負ったのは俺だろ。だから、死ぬまでに言ってやりたいのは、自分の手に負えないものを俺に回すな」

明良「それ、親父に言えるか?おれ言えねえぞ」

嵐「だーかーら、自分が言えないことを人に言わすな!しかも、これ何回も言ってるぞ」

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