023.向日葵と背比べ


 そう、どうしてかそれを思い出したんだ。全くもっておかしなことに。だって今は夜だろう。昼間じゃないんだぜ?オレは太陽でも何でもないのに、どうしてか向日葵がこっちを向いてくれるような気がしたんだ。

 ああ、うん、そうだ。あいつらはいっつも太陽ばかり追って背伸びして、オレの背を易々と越えていく。小さい頃なんかはこっちが世話してやったっていうのによ。大きくなったら無視して太陽ばかり追い掛けやがる。腹が立つだろう。

 それでオレが大きくなって背を越してやろうと思えば、また大きくなる。嫌がらせかと思ったね。

 そうだなあ、あれは世にはびこるカミサマってやつの嫌がらせなのかもしれない。人は一生背伸びして生きろってな。そりゃ考えすぎか?

 いや、それにしても寒いな。上着ぐらい持ってくるんだった。いくら夏っつったって夜は寒いなんて忘れていたよ。

 ああ、夜って寒いんだっけか。……そうだよなあ、寒いんだよなあ。何で忘れていたんだ、オレ。

 そうそう、そうだ。夜になるとな、あいつらは一斉にうなだれるんだ。追い掛けるものがなくなったから、がっかりしてうなだれる。

 その時だけだったよ。オレが向日葵に勝てたのは。

 昼間にいくら背比べしとも勝てなかったオレが夜に向日葵の間を通るとさ、あいつら王様に頭下げるみたいにうなだれてるんだ。枯れる前もそんなだった。

 どうしてか、あの瞬間が一番悲しかった。向日葵と背比べして全く追い付けなかったオレが唯一勝てた時なのにさ。

 もう優越感に浸るどころの話じゃねえの。その中に立ってる自分がえらく惨めで、向日葵を嘲笑するよりもひたすらうつむいて家に帰った。

 一度も顔なんかあげなかったね。

 結局一度も向日葵に勝てた気はしなかった。負けてる気もしなかったがよ。拒絶っていうのかな、ボキャブラリーが少なくてうまいこと説明出来ないが。

 何で思い出したんだろうな、こんなこと。

 いや、たださ、ちょっとだけ思うんだよ。

 あのロープに首くくれば、あっさりあの世行きだろう。オレだって生きる為に殺しちまっただけなのにさ。それで処刑なんて浮かばれないじゃんか。

 うん、だからさ、夜でも向日葵がこっちを向いてくれたならさ、最後の最後でオレは勝てた気になれると思うんだよ。

 どうしてか今度こそは、向日葵がこっちを向いてくれるような気がするんだ。



終り


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