079.賽は投げられた(4)
「仕事が早いですね、タオさんは」
「あと二十七個ある」
「手伝いましょうか?」
「いや、お前はこの花を買ってきてほしい」
「これはまた初めてのお買い物ですね」
「うむ。タオくんが花を植えないのかと聞いてきた」
「それはまた。人は見かけによらないと言いますが、本当みたいですねえ。そうですね、明日の朝には持ってきましょう」
運び屋を送り出した後、神さまは空になった一輪車をひいて戻った。タオのメモに書かれていた花はどんなものだろうと、想像を巡らせるのは楽しかった。
タオがいた場所に戻ると、彼の姿がない。綺麗に剪定された木々の間には植木鋏と空のゴミ袋が残っている。タオの姿だけが、綺麗さっぱり消えている。
神さまは辺りを見回した。人が出て行く時は、感覚としてわかる。だから、タオがまだ出て行く時期ではないというのは明らかだった。
「タオ……」
名前を呼びかけて、草むしりのされた一画を見つけた。辺り一帯草だらけの中で、そこは綺麗に雑草が抜かれている。
その上にタオの足が横たわっているのを見て、何故だか神さまは胸がぞわりとした。寝ているだけかもしれない、震えているのは寝相の悪さだろう──そうは思っても、胸を襲った悪寒は全身を包む。
未だかつて感じたことのない感覚に驚きながら、神さまはタオの元に歩み寄った。
──ころん、とサイコロがどこかで転がる。
ころころと転がって、神さまも予想のつかない場所で、神さまも想像の出来なかった目を出す。
賽は投げられた。
終り
- 161 -
[*前] | [次#]
[表紙へ]
1/2/3/4/5/6/7/8
0.お品書きへ
9.サイトトップへ