078.クーデター(3)
「何かいるのか?」
「うおあっ!?」
神さまはタオの傍にしゃがみこむ。門の方からちょうど、運び屋がランプを持ってくるところだった。
「てめえ、いつの間にいやがった」
「ずっといたぞ。起こしては申し訳ないと、じっとしていた」
「嘘だ。起きた時にはいなかった」
「ぼくは嘘をついたことはない。ずっとここにいた。見えなかったのなら、ぼくにはどうしようもないことだが」
「……捕まえようってんなら、もっとマシな話を作れ。俺はまだもうろくしちゃいねえ」
「作り話ではないが。……まあいいか」
「やっぱり仲がいいじゃないですか。はい、ランプです」
「あんたは少しは話がわかるんだろう。俺をどうするんだ。やるならさっさとやれよ。覚悟は出来てんだ」
「やるも何も、ここは本当にただの庭です。……ただの庭って言っていいんですかね?」
「庭は庭だが、ぼくは未だに屋敷を見たことがない」
「それじゃあ、とりあえず僕たちが行ける範囲内はただの庭ということです。僕たち以外には誰もいません。何かいるとしたら、鳥か猫ぐらいなものです」
「猫は見たことがないぞ」
「なら鳥だけですね。……こんな暗い庭でよく動けますね。そんな鳥がいるんでしょうか」
「さあ。ぼくは何かを見たわけではない。彼は何か見たようだが」
「何かいたんですか?」
「……ああ、もう、何なんだてめえらは!ここはじゃあ何だ!どうして俺をここに入れた!?」
「ここは庭で、彼は運び屋。お前が助けてくれと言ったから、ぼくが運び屋に見に行かせたら、お前を拾ってきた。怪我をしているようだから手当てもした。……これでも記憶力はいい。間違ってはいないはずだが」
「だから、庭、庭って、こんな時にこんな庭が丸々無事であるわけがねえ。それにさっき言っただろう。ここから出られねえってよ!」
「……出られないと断言した覚えはないが、まあ、一度入った者は出られないことが多いな」
「最近は僕が連れてこなくても入ってきてくれるから、助かります」
「……ぼくは連れてこいと言った覚えはないが」
タオは身を乗り出すようにして神さまを見た。
- 156 -
[*前] | [次#]
[表紙へ]
1/2/3/4/5/6/7/8
0.お品書きへ
9.サイトトップへ