013.1+1
「1+1は?」
2だって?
そんな答えなんか
くそくらえ。
常識と言われることを疑ってかかる。
非常識と言われることを笑って食らう。
それは彼等にとって非常識ではなく
そもそもが常識、非常識の枠すらも彼等には存在しないわけで
その枠に凝り固まる人々の枠をぶち破るのが
至上の楽しみだった。
なぜ常識だ。
なぜ非常識だ。
彼等はいつも問う。
定義は。
常識の定義を示せ。
非常識と区切る定義を示せ。
彼等はいつも問う。
問うて、答えを待つ。
だれかが答えるのを。
だれかが答えを持ってきてくれるのを。
彼等に
もっとうまい非常識があるぞと
真っ白な皿を持ってくるのを
待っている。
そうして彼等は笑うのだ。
──なんだい。ただ真っ白な皿じゃないか。
何も乗っていない皿。
その白を彩るのは
答えを持つ者の言葉。
常識と
非常識の
定義を。
それまで彼等は繰り続ける。
時にはボール。
時には布。
時にはカード。
時には紐。
答えを持ってくるまで
彼等は繰りながら、待つ。
繰りながら問うのだ。
常識を非常識に。
非常識を常識に。
繰り事で人を惑わし
それらの幻想から人々が抜け出すのを待つ。
沢山のハードルをしかけ
全て走りきった者を
待つ。
そうして待つ彼等の愚かさも
既に常識と非常識の枠内にあるものと知らず。
ただ繰って
待つのだ。
そしてある日突然
笑顔で話しかけてくるのを。
「わかりましたよ」
彼等の幻想を越え
枠を破る人を。
「あのですね、それは」
──ちょっと待った。
急ききる人の前に手を突き出す。
──最後の最後の幻想だよ。
とても簡単。
しかしながら最大にして最高の謎。
答えは無限。
答えを待つ奇術師達は沢山の糸を差し出す。
──よく考えて、瞬間の閃きで選び取れ。
さて
1+1は?
終り
- 13 -
[*前] | [次#]
[表紙へ]
1/2/3/4/5/6/7/8
0.お品書きへ
9.サイトトップへ