第十四章 葬られた民



 ぼんやりと羽を見つめ、舞い上がった草が落ちるのを待っていると、がさりと茂みを掻き分ける音がする。先刻の男の声と同じ、唐突な出現の仕方にアスは驚くのも疲れて、そちらへ視線をやった。

 腰が抜けたらしいサークを立ち上がらせるヴァークとカリーニン、その三人を囲むようにして革鎧をつけた屈強な男が三人ほど立っていた。手には短剣が握られており、背中に矢筒と弓を背負っている。影になった矢羽の柄は、地面に落ちたいくつもの矢と同じだった。

 事態はアスを待っていてはくれず、進行しているのだと気付いて立ち上がる。剣は鞘に収めない。疲労の底から警戒心が思い出したように湧き上がってきた。

 次々と現れる武装した男達は、地面に落ちた矢から無事な矢を確認しては自身の矢筒に入れている。ちらちらと、立ち上がったアスを盗み見る視線が感じられて、あまり良い気はしない。カリーニンもこの状況にどう対処したら良いものか困惑しているらしく、しかし、その手に握られていた大剣は既に刃を収めていた。

 どうしたものかと剣を見下ろした時、一人の男がアスに向かって歩いてくる。悠然とした足取りはイークを彷彿とさせ、それが王者の風格によるものだとわかった。

 彫りの深い顔立ちに、歴戦を思わせる無数の傷が見える。短く切り上げた黒髪の下では独特の模様の紐を額に巻き、更にその下の黒い瞳は穏やかで油断ならない光を宿していたが、左目が大きな傷により閉ざされていた。彼が現れた瞬間から、動き回っていた男達はその動きを止め、事の成り行きを見守っている。

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