第二章 予言
やや置いて、空気はその身を震わし、男は嘲笑まじりに呟いた。
「……だろうな」
低く、何かを嘲った。
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「おい、大丈夫か」
小太りの男が、二人ではなく馬へ声をかける。疲労に満ちた目で男に視線を向け、馬は応えるように前脚で地を蹴った。
「無茶するよ、全く。こんな良い馬を丸々半日以上走らせて」
嘆息と共に言い放つ。馬の均整のとれた体は時折痙攣を見せて、息も荒い。
「……ごめんなさい」
「俺じゃなくてこいつに言いな。ったく……」
頭をかきながら言葉を続けた。
「……まあ、明日まで休ませるっつうんだから、まだマシだがな」
「他の人は休ませないの?」
「腕に覚えのある奴は特にな。ほら行った」
馬の使いの荒さを指摘されてすっかりしょげていた二人の背を強く叩く。
訳もわからぬままに馬小屋から出された二人は呆然と男を見る。その視線の意とするところに察しがつき、男は呆れたように王城を指差した。
「予言書を見に来たんだろう。さっさと行かないと、お前らみたいなガキは見れないぞ」
一瞬ぽかんとし、だが、男の言に合点がいったようだ。確かに、二人の小さな背では周りに阻まれ見れない可能性もある。何より時間も押し迫っていた。互いに互いをつつきあい、遂に意を決したかの如く、アスが口を開く。
「その子、お願いできますか」
子供のくせにいまいち殊勝なことを、と内心おかしくてたまらない。彼の知っている子供像とは遠慮なく屈託なく、彼に語りかけ笑いかける存在だったからだ。
目の前にいる二人のような子供は見たことがない。苦笑と共に手で払う。
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