第二章 予言
「今日は泊まったほうがいいかもね」
「金ないぞ」
「私、馬小屋でもいいよ」
「……シスターにはばれたしな」
こっそり出て行くつもりが、寝坊で騒がしくしていたところを見つかったのである。非は自らにあった。
そうして渡されたのが、ライの胸元で先刻から音をたてて跳ねる小袋である。恨めしそうに見下ろし、肩を落とした。
「……買出ししろって……」
「さすがって言えばさすがだよねえ……」
これには否定も肯定もする気も起きず、ただ感心するばかりである。
してやったり顔でシスター・ミレは二人に買出しを命じたのだ。商店も開こうかというこの時間、今ごろティーカップでも傾けながらほくそ笑んでいることだろう。
「まずは王城!」
沈みつつあった気持を浮上させるべく、ライが声を張り上げる。しかし後ろからの「買出しもね」という心ない忠告に、再び肩を落とす羽目となった。
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大きな窓の前に立ち、その人物は街並みを眺めていた。
中天に差し掛かろうかという太陽の日差しは強く、外に広がる街並みを白く照らし出す。その中を縫うようにして動く人々の姿があり、どこか造り物めいて見えた街に息を吹き込む。確かにこの街は生きている。
男は何がおかしいのか、小さく笑った。
「時が動く」
脈絡のないことを呟く。しかし、空気はそれに反応した。
「神は見ていると思うか」
空気は反応を見せず、漂うばかりである。ゆらりとそこに留まり、言葉を待っているようでも馬鹿にしているようでもあった。
「人を、嘲っていると思うか」
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