甘えたサンタに、小さなキスを -Happy Merry Christmas!2012-1/2

「メリークリスマース!!」


そんな掛け声と共に、盃があちこちで高々と上がる。


普段船の上では聞くことのできないたくさんの鈴の音のような声も、盛り上がりの要因の一つだろう。


現在停泊している街では『クリスマス』という聞きなれないイベントの真っ最中だった。


赤、緑、金を中心に使われた華やかな装飾に、いい大人たちの心が躍った。


さっそくクリスマスパーティーをやろう、と、宴をやる口実として無理矢理こじつけたわけだ。


まァ、結果、クリスマスがなくても宴にはなるのだが。


「私たちも四皇の船に招待して頂けるなんて、夢みたい…!!」

「ほんとね!!」


街から出向いてきた蝶たちは、真っ赤なミニスカートの衣装とかわいらしいぼんぼりのついた帽子で包まれている。


どうやら、これが『サンタクロース』というらしい。


世界中の子どもたちにプレゼントを届けるという、なんとも奇特な存在だ。


もっとも、女性がそれに身を包めば、男性に自分をプレゼント、といういやらしい意味になるという。


それを表現するかのように、クルーたちの鼻の下はだらしなく伸びきっていた。


「じゃーん!!」


わいわいといつも以上に盛り上がる船内に、聞きなれたかわいらしい声が届いた。


そして、その姿を目にした瞬間、「おおおおおっ!!」と本日一番の賞賛が上がる。


「似合うじゃねェか!!ラナ!!」

「ほんとだなァ!!妖精みてェだ!!」

「かーわいい!!喰っちまいて、」

「バカ…!!お頭の前だぞ!!」


そんな声があちらこちらから上がって、シャンクスはうれしそうに目を細めた。


ここで、他人の愛を素直に受け取ることを覚えてほしい。


皆、そのままのラナが、大好きなのだ。


「シャンクス!……………えへへ、どうかな?」

「あァ、すごく似合ってる。おまえが一番かわいいよ。」

「本当!?」


そう言って照れたように笑うラナは、年相応の女の子だ。


そのことに、シャンクスは喜びを感じていた。


すると、その視界の端に、こまこまと動き回る小さな存在が映った。


「あれ?***は着てねェのか?」


その存在をシャンクスが捉えたのと同時に、ヤソップからそんな声が上がる。


そんな言葉を受けて、***の動きがピタリと止まった。


「わっ、私ですか?」

「あァ、おまえももらったんだろ?この衣装!」


ヤソップがそう口にすると、周りから囃し立てる声が続々と上がる。


「なんだよォ!***も着ろよ!」

「そうそう!おまえいつも動きやすい恰好しかしてねェんだから!」

「たまには女らしい恰好しろ!」

「いっ、いやっ、あのっ、私はっ…!!」


ひゅうひゅうと口笛がところどころで鳴って、***はあわあわと慌てだした。


そのやりとりを見ていたシャンクスは、思わず頭の中で考える。


***の、ミニスカート姿…


………………………。


…………………イイ。


すげェ、イイ…!!


すげェ見たい…!!


……………けど…!!


改めて船内を見回すと、そこには獣のようなむさくるしい男たちの姿。


くそ…!!見せたくねェ…!!


どうすればいいんだ…!!


人知れず葛藤していると、遠慮がちな声がシャンクスの耳に届く。


「ミ、ミニスカートだと、あの、動きにくくて皆さんにお酒運べませんから、」

「いいじゃねェかァ!それくらい!おれたち自分で運ぶからよォ!」

「まァまァ、無理強いするな!***は恥ずかしがり屋だからな!」

「そこが***のかわいいところだ!」

「それもそうだな!じゃあ後でこっそりおれだけに…」

「抜けがけしてんじゃねェよ!おまえはいっつもそうだな!この前だって…」


なんとかうまく話題が反れて、***は密かにホッと息をついた。


そして、ここにも安堵した男が一人。


よしよし。


見られなかったのは残念だったが、やっぱりこんなミニスカートを履いた刺激的な***を見せるのはダメだな。


だれにって、まずおれに見せたらダメだ。


タガが外れる。


そう一人で納得した後、シャンクスは***の後ろ姿を見送りながら盃を傾けた。


―…‥


「おいおい、だらしねェなァ、ったく…」


ぼりぼりと頭を掻きながら、シャンクスは困ったように笑った。


「今日は一段と浮かれていたからなァ。」


こんな時でも浮かれない自分の右腕は、紫煙をくゆらせながら、シャンクスと同じく呆れ顔で笑う。


ペラリと自身のマントをめくると、その中にすっぽり収まりながらすやすやと眠るラナ。


「う、ん…寒い…」

「あァ、そうだな、悪い。今暖かい布団に運んでやるからな。」


かわいい寝顔にそう言うと、ふんわり緩むピンクの頬。


「甘やかしすぎだ、アンタは。」

「そうかァ?」

「あァ、……………ほんとに甘やかしたいヤツにはどうしてできねェんだか。」

「…………………ほっとけ。」


ベンに痛いところを突かれて、シャンクスは甲板に転がっているクルーたちを器用によけながら逃げるようにして船長室へと向かった。


―…‥


軽すぎるその身体をベッドに沈めると、そっと掛け布団を掛ける。


もじもじと身体を捩るラナに、シャンクスは小さく笑った。


甘やかしてもいいだろう?


こんなにかわいい生きものなんだから。


『ほんとに甘やかしたいヤツにはどうしてできねェんだか。』


「…………………できねェわけじゃねェよ…」


仕方ねェだろ?


***が甘えてこないんだから。


はァ、と大きく溜め息をついたところで、はて、とシャンクスは眉を寄せる。


そういえば…


***のヤツ、どこ行ったんだ…?


甲板にはいなかったようだが…


***のことだから、きっと自室で眠っているか…


いや、でも待てよ。


今日はハイテンションのクルーに進められて、何杯か飲まされてたな…


もし、どこかでヤロウ共と雑魚寝、なんてしてたら…


すくっと勢いよく立ち上がったシャンクスは、早足で自室を出た。


―…‥


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