甘えたサンタに、小さなキスを -Happy Merry Christmas!2012-2/2

どこだ…?


あらかた船の中は探したが、どこにもその姿が見当たらない。


そのうちに、悪い予感しか頭をよぎらなくなって、シャンクスは小走りに近いスピードで船内を歩き回った。


落ち着け、


***が行きそうなところなんて、かぎられてる。


キッチン、倉庫、酒蔵…


「……………酒蔵か…」


そういえばまだ酒蔵は見ていない。


なんとなく、そこだ、と確信したシャンクスはもはや全力疾走で酒蔵へ向かった。


―…‥


「…………………。」


………………………なんだ、


………………………これは。


目の前の光景に、シャンクスは愕然とした。


そこには、確かに***の姿。


しかし、問題はその格好だ。


真っ赤なミニのワンピース、太ももまで伸びたもこもこの靴下。


帽子こそないが、それはまさに、つい先程までとなりにいたラナのそれと同じ。


そう、


なぜか***は、酒蔵で一人、サンタクロースの恰好で眠りこけていた。


…………………なんなんだ、これは。


兵器か?


兵器なのか?


目の前の光景にドキドキと胸を高鳴らせながらも、シャンクスは状況を整理しようと試みた。


***のそばには、脱ぎ捨てられたままの***がさっきまで着ていた洋服。(それだけでも充分なんかエロい)


その洋服からは、キツイ酒の匂いがプンプンと漂ってきた。


なるほど、つまりこういうことか。


おそらく***は、だれかに酒を取りに行くよう頼まれて、酒蔵まで来たのだろう。


ところが、***もめずらしく酔っていたからか、手元が狂って思いきり酒がかかってしまった。


びしょ濡れのままではいられないから着替えなければならなかったが、あいにくここは冬島。


手持ちの洋服がなかなか乾かないと洩らしていたことから、おそらく替えの服がなかったんだろう。


しかたなく、今日もらったサンタクロースの服を着て、乾くまでここで待っていようと考えたが、眠気に勝てずそのまま就寝…


頭の中でその状況を思い浮かべれば、シャンクスは小さく溜め息をついた。


…………………ったく、危ねェな…


こんなところ、***に惚れてるヤツが一番に見つけてたら、間違いなくここで犯されてるぞ…


………………………。


…………………ん?


「おれが一番危ねェじゃねェか!!」


おい!!どうしよう!!と、一人頭を抱えていたら、***が小さく唸って身を捩った。


おおっと、いけねェ。


そんな不埒なこと考えてる場合じゃねェな…


こんなところでこんな格好で寝てたら死んじまう。


そっとその傍らにしゃがみこんで、シャンクスは***のカオを覗いた。


…………………***の寝顔、


初めて見たな…


…………………あァ、


かわいいな。


どうしようもない愛しさが込み上げてきて、シャンクスはそっとその頬に手を伸ばした。


「女のサンタは男に愛を捧げなきゃいけないらしいぜ、***…」

「……………う、ん…」


ぷにぷにとその頬を突くと、***が眉をしかめて唸り声を上げる。


「さ、む…」

「ん?」


起きたか…?


小さく何かを言っているのが聞こえて、シャンクスはその口元に耳を寄せた。


「うー、……………さむい…」

「寒い?寒いのか?」

「…………………。」


その問い掛けに、応えはない。


どうやら、寝言のようだった。


とにかく、このままにはしておけない。


そう思って、自分のマントを脱ごうとした時だった。


「……………しらー…」

「?」


……………なんだ?


「……………おかしらー…」

「……………え、」

「だっこー…」

「なっ、」


ちょ、ちょっと待て…


なんだいまのは…!!


おっ、落ち着け…!!落ち着くんだ…!!


なにかの間違いだ、***がこんな、


こんな甘えたなこというなんて…!!


動揺しながら***の唇の動きを読んでいると、はっきりと紡がれる確かな言葉。


「お頭ー、……………だっこー…」

「…………………。」

「ぐずっ……………寒いよー…」


とろとろとそう呟きながら、***は空に手を彷徨わせた。


「…………………おれはここだ、……………***…」


そう言いながら、そっとその手を握ると、


安心したようにふんわり微笑む***の寝顔。


それを見た瞬間、シャンクスの中でプツリと何かが切れた。


「…………………バカ、知らねェぞ…」


誰にともなくそう言うと、


シャンクスはそっと、その額に口付けた。


「……………これくらい許せよな、……………こんな夜なんだから…」


再び、ちゅっ、と小さくリップ音を立ててまぶたに口づけると、シャンクスは煩悩を振り払うように、柱に強く頭を打ち付ける。


マントで***をそっとくるんで抱き上げると、シャンクスはふらふらの足取りで酒蔵をあとにした。


甘えたサンタに、小さなキス

昨日、誰かが私を部屋まで運んでくれたみたいなんです。お礼を言いたいんですけど、副船長ならご存知かと思いまして…


くくっ…さァな。大方トナカイにでも運ばれたんじゃないか?よかったな、喰われなくて。


?は、はァ…


(くそっ…!ベンのやつ…!だれがトナカイだ!だれが!)


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