欲情事情/敏京



「んン…ッ、は…」
「は、ぁ、…京君、きょ」
「ん、敏弥…」


ライブ終わって、バタバタしとる中で楽屋近くのトイレ。

敏弥に連れ込まれて、入り口のドアに押し付けられる様にされて。
頭を掴まれて、いつもより荒っぽいキス。


トイレのドアに付いとる、そんな大きく無い窓は擦りガラスやから外からシルエットはわかるし。
誰がおるかぐらいは髪と背中で知られてまうんちゃうのって思うけど。

時々、ライブ中に興奮した敏弥は何だかんだ理由を付けて、人気の無いトコに連れ込む。

時間も押して、早よ出てく準備せなアカンのに。


何度も顔の角度を変えながら、熱い舌が口内を犯してソレに自分も絡めて吸い付く。

馴れ親しんだ口技に、唾液が絡まる音を立てて敏弥の首に腕を回して引き寄せる。

敏弥は僕の頭のを両手で挟んで、少し屈んだ体勢。


「ッは、とし、もう行くで」
「やだ、もうちょっと」
「ん…っ」


息継ぎの合間に敏弥を制しても、意味を成さずにまた唇が塞がれた。


こうやって人の目を盗んでは、時々される行為。


キスぐらいで、止まる事が無かったんは昔の事。


「あ、もー…やっぱライブ中の京君エロ過ぎ。その場で犯したい」
「は、そんなんしたらホンマの変態やで」
「それは、そうだけど」
「んッ、アカンて。ちょぉ…っ」
「んー…」


キスが終わって間近で顔が見えて、頬、耳、首筋へと唇が当たる感覚。

心地えぇけど。

首に回した腕で、髪の毛をぎゅっと掴んでも敏弥は気にする風も無くキスを下へと下ろして行く。


「あんまエロい姿見せないで。ファンの子にも」
「嫉妬か」
「うん」
「アホやん」
「それと、俺の我慢が利かなくなんの」
「…ッ」


敏弥は上目遣いでチラッと僕の方を見て。
上半身裸の僕の胸元に音を立てて吸い付いて、舌を出してゆっくりとした動作で乳首を舐め上げた。


性的な意味合いを含んでへん、半裸やった筈やのに敏弥の視線と動きで一気にソレが逆転する。


「敏弥、ヤらへんで」
「乳首勃ってるよ」
「舐められたら反応するわアホ」
「此処も?」
「ちょぉ…ッ」


音を立てて乳首を何度も吸い上げながら、敏弥の片手が股間に伸びて。

生理現象で勃つやん、そんなん。


ゆっくり、形をなぞられる。


「いっつもライブ中、京君は視界に入るし思うんだけどさぁ」
「うん?」
「エロい京君を見んの、俺だけがいいとか、思ったり」
「は、今更やん。そんなん」
「だよね」
「もう離せや、今日でライブ終わりなんやから家帰ってからでえぇやろ…ッ、このアホ…!」
「いたたたッ、髪の毛引っ張ったら痛いって!」


胸元から腹筋へと舌を這わされて、ドアへと後頭部を擦り付ける。

さっきかの緩い刺激に興奮する熱が沸き上がって来るけど。
会場のトイレで、とか。
もうそんなスリルはいらんから。


敏弥の髪の毛を思い切り引っ張ると、痛そうに顔を歪めて僕の身体を離した。


「家でたっぷり可愛がったるから我慢せぇや。打ち上げ出んと帰るやろ?」
「うん、当たり前」
「えぇ子」
「ん…ッ」


引っ張る力を緩めて、髪を撫でながら敏弥の唇をねっとりと舐め上げる。


「ホンマ、お前は昔から下らん理由で嫉妬したり欲情したりし過ぎやで」
「だって京君相手なんだもん」
「まぁ昔よりかは我慢出来る様になったけどな。ライブ後やったら無理矢理ヤったりしよったし」
「京君も何だかんだでノってたじゃんか」
「まぁ…ヤリたい盛りやったんちゃう」
「えー?今は?」
「今は時と場所を選ぶ理性が強なってん」
「なる程」


そう言うて笑う敏弥は、何も変わらん笑顔やけど。
少しだけ、昔の様な無我夢中に身体を求めて来るのは減った気がする。


それは大人んなったって事で。

お互いと。
お互いのこの関係が。


「早よ行くで。また薫君に怒られる」
「俺がね」
「せやな」
「もう、薫君ていつまで経っても京君の事好きだよね」
「お前程ちゃうけどな」
「当たり前じゃん。俺は愛してるからね」
「うん」


僕も。

やから、ライブに見せるモンよりも遥かにエロいモン。
お前だけに魅せたるわ。


そんな僕は、お前だけしか知らん事やろ。


家に帰ってから、敏弥とする事を想像すると笑みが浮かぶ。


僕やって、同じ。

敏弥の、僕とヤっとる時のエロい表情は、誰にも見せてやらんし。




20100111


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