色褪せない/玲流



「れいちゃんもうすぐ誕生日じゃん。多分仕事だろうけど、どうする?終わった後飯でも行く?」
「おう」
「何か食いたいモンとかある?」
「ルキとだったら何でもいいよ」
「何だよそれ。たまにははっきり決めろよな、お前」
「本当の事だし」
「はー。仕方ねーな、れいちゃんは。なら夜景の見えるレストランとか予約すんぞコラ」
「それはちょっと勘弁して下さい、ルキさん」
「腰パン野郎は入り口で止められるな」
「俺の誕生日に俺行けないなら意味なくねぇ?」
「あはは」


仕事の休憩中。
iPhoneをいじりつつ不意に日程を思い出す。

から、ソファの隣に座って同じく携帯をイジってるれいたに話し掛けると、れいたは携帯をしまって俺の方を向いた。

長年の付き合いで、今更と言えば今更なんだけど。
仕事ばっかの毎日でも恋人の誕生日ぐらいは祝いたいじゃん。

でも仕事終わる目処がつく訳じゃねーし、予約する様な店はナシだな。

前にスタイリストさんに聞いためぼしい店、またチェックしておこう。
ケーキは毎年スタッフが用意してくれるし、そんなケーキばっか食うのもなー…。


「あー…、何か欲しいモンとかあんの」
「ルキさんの性的サービス」
「何だよそれ」
「だからルキがいれば何もいらねーよって事」
「言うね。じゃ、れいちゃんの誕生日の夜は頑張ろうかな」
「おうよ、楽しみにしてるから」
「嘘吐け。お前絶対ぇ俺に主導権握らせねーじゃん」


近くにいるれいたの腕を軽く叩いて。
下世話なしながら笑って煙草を取り出して咥える。

火を点けて胃の中へと煙を吸い込む。
れいたと反対側に向いて煙を吐き出すと、目の前のローテーブルに手を伸ばして灰皿を引き寄せてくれたれいた。


「それはまぁ、ルキが可愛いからっつー事で」
「あー、確かにルキ可愛いよね」
「あ、麗」
「2人して何て話してんの」
「夜の営みについて」
「うわー」


突然声がして、俺の隣に麗が座って来た。
にこにこ笑いながら足に肘を付いて話に加わる。


「つーか何、麗まで俺の事可愛いとか思っちゃってんの」
「うん。昔から思ってるよー」
「お前の『ルキ可愛い』は小動物的な可愛さだろ」
「そうそう、一家に一人、抱き枕的な感じで超癒される」
「テメェちょっと身長デカいからって」
「俺の『ルキ可愛い』は性的な場面の可愛いだから」
「お前も何言ってんだよ。ちょっと黙れよお前ら」
「あーそれは残念ながら知らないからわかんないなぁ」
「だろ。知らなくていいっつの」
「……」


俺を挟んで何会話してんだこの幼馴染み野郎共。
もう会話に入んのはやめて、煙と共に溜め息を吐き出す。


「れいたもうすぐ誕生日ならルキにコスプレして貰うとかさー。楽しくない?」
「いや、コスプレとかあんまピンと来なくて、それなら拘束プレイの方がいい」
「お前らマジで黙れよ死ね。鼻布燃やすぞコラ」
「悪ィ悪ィ。そんな怒んなって」


ちょっと俺挟んでどんな会話だよマジ。

れいたの方を向いて、多少声荒らげながら隣のれいたを眉を寄せて睨む。
何かれいたと麗に挟まれてるから距離取る事も出来ねーし、でもれいたはからかう表情でもなく和らげた表情に、コイツはいつも狡いと思う。

俺が何しても、何を言っても笑って流す。
適当に対応してるんじゃなくて、俺の事が好きだからってわかる所がタチ悪ぃ、マジで。


「はいはい、ラブラブだねー」


まぁ、そんな事を思いながられいたを見れば、当然見つめ合う事になる訳で。
ゆるーい麗の言葉を聞きながら灰皿に煙草を揉み消して、寂しいから俺も構ってーって言う麗を無視る。


ラブラブっつーか。
それが当たり前だろ。

れいたは俺のなんだから。
俺の事好きじゃ無いなんて、有り得ない。


「ん?どうした?」
「…別に」


そんで俺もそんなコイツが好きだからね。

何回か祝った誕生日。
何年経ってもそのイベント事は楽しみなモンだなーって、れいたの顔を見て思った。




20120524



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