貴方好みの僕が仕上がる時/鬼歌




仕事終わりに鬼龍院さんにラーメン食べに行こうって言われて、断る理由も全く無いし、2人で一緒にラーメンを食べに行った帰り道。
僕が本屋寄りたいって言って入ったTSUTAYAで、目当ての雑誌見たり漫画見てたりして。
欲しかったのが買えたから気分がうきうきしながら一緒に来た鬼龍院さんの姿を探すけど見当たらない。

そりゃ物色してる時は存在忘れてたけど、先に帰るなんて事はしないだろうし。
ちょっと広めの店内をうろうろしてみる。


TSUTAYAだから、レンタルDVDのコーナーも見つけて。
そしたらコーナーの一角にある場所を見つける。

まさかと思いつつ、18禁の描かれてる暖簾をくぐると、上から下までびっしりとDVDが陳列されてる中。
見慣れた丸い背中を見つけた。


「…鬼龍院さん何してんの」
「うわっ、淳くん。買い物終わったの?」
「……」


後ろから声を掛けると、ビクッと大袈裟に驚いて手に取ってたパッケージを慌てて棚に戻してた。
この隔離されたコーナーの中には、僕と鬼龍院さんしかいないし別に慌てる事ないじゃんって思うけど。

もうこれは付き合う前からの鬼龍院さんの癖と言うか、AV好きなのは直らないみたい。

口元に笑みを張り付かせて、鬼龍院さんが戻したAVのパッケージを手に取る。


「えー何。『M字開脚で客を迎えるファーストフード店「M字ナルドへようこそ!」人気メニューは「朝バック」、期間限定「メガフック」も人気です』って、へぇ。鬼龍院さんこんなマニアックなの観たいの?」
「ちょ、淳くんっ、しー!…タイトルでどんなのかなー…って、気に、なって…うん、はい」


棒読みでタイトルと煽り文を読み上げて、冷めた視線を鬼龍院さんに向けると挙動不審にしどろもどろと言い訳を始めた。
って言うか言い訳になって無い。


回数そんなにしない癖に、ちゃっかりAV観るってどう言う事。


「何、鬼龍院さんは僕とえっちするよりAVで一人で抜くのが好きって事ね」
「ちが、セックスとオナニーは別物だよ!」
「…アンタここ何処だと思ってんの。そんな事、堂々と言わないでくれる?」
「あ、ごめん」


若干声を上げて変な事を自己主張する鬼龍院さんに眉を潜めて、もってたAVのパッケージを元の位置に戻す。
隔離されたコーナーで、僕らしかいない場所だけど一応公共の場所だから声落としなよ。


そりゃ男だからAV観るのもわかるけどさ、元々ノンケだった鬼龍院さんが女の子の裸見ちゃったら、やっぱ女の子の方がいいとか思っちゃうかもしんないじゃん。
そんな事を思ってたら、僕の機嫌が下がっていくのを肌で感じたのか、焦った様子で鬼龍院さんが『でも淳くんとする方が好きだからね』とか言ってる。

だからここ何処だと思ってんの。
そんな事を思うけど、鬼龍院さんの一言一言で、僕の気分が浮上するのも事実で。
もうそれは惚れた弱味としか言い様が無い。


歌ってる時は格好良いのに、普段は挙動不審で気持ち悪い。
なのに好きって、どう言う事。

イケメンとは程遠い。
だから恋に理屈は関係無いんだって事を自覚したりして。


「…せめて外見が美男美女の絡みにしなよ」
「え?」
「今日鬼龍院さんち泊まるから。AV鑑賞しよーよ」
「え、え、淳くんも観るの?一緒に?」
「うん。でも美人な女優にしてよね。叶姉妹的な」
「それハードル高いと思うんだけどなぁ…確かに最近美人でスタイルいい子ばっか揃ってるけど」


ぶつぶつ言いながら、鬼龍院さんは素直に陳列されたDVDに視線を移す。
自分で言ってアレだけど、男のAVを真剣に選ぶ姿って格好悪くて見てらんないよね。

僕は普段観ないからね。
ガーリーなんで。


作られたセックスをする人達に対抗って訳じゃ無いけど。
僕とする方がいいって言うだけじゃなく、その言葉を実行する様にしてもらわなきゃ。

AVに負けてらんないって、馬鹿な事を思った僕に気持ち悪い笑顔で選んで来た鬼龍院さんに、一瞬何でこの人の為にこんなに意気込むのって疑問に思ったけど。


割りとノーマルなプレイだろうタイトルとキツめ美人な女優の大胆なポーズのパッケージを見てうすら笑いを浮かべ返した。


「鬼龍院さんて、ホント気持ち悪いよね、ムカつく」
「えぇっ、何それどう言う事。淳くんが選べって言ったから選んだんじゃんっ」
「煩いよ。早く借りて来て。帰るよ」


好きじゃなきゃ、こんな対抗心燃やす事も無かったのになぁ。

ホント、ムカつく。

僕の行動がこの人の言葉に左右されて、だなんて。




20120521



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