am.3:18/京流
隣で眠る、京さんの寝顔を見つめる。
何でか目が冴えて寝付けねぇ。
月明かりの中、仰向けで眠る京さんの顔。
目を閉じると本当に子供みてぇ。
どんな表情でも好きだなって思う。
こうして京さんと一緒のベッドに入って、眠れ無いのは何年振りか。
今は、こうして。
京さんとセックスした後、隣で寝てくれる事に安心感。
でも眠気は来ない。
何でだろ。
少し擦り寄る。
お互い、ヤった後のままで寝付いたから、当然裸で。
京さんの彫られたばかりの肩口にある骸骨の刺青が目に入った。
それは彫られたばかりで皮膚は浮き上がり、痛々しい。
何年も彫り続けて来た京さんにとったら、何て事無い事で。
いつもは俯せで寝るのに、今日は彫ったばかりの刺青を庇ってるのか。
腹には虎。
似合っていて凄く格好良い。
でも、何か。
「いいなぁ…」
ポツリと呟く。
熱を帯びた骸骨の描かれた皮膚を、触れるか触れないかの加減で撫でる。
自分は彫ろうとか、思わねぇけど、何て言うか。
京さんの身体に刻み込まれる事が、イイ。
同じ所に同じ柄を彫れば、少しは貴方に近付けますか。
表面的な事じゃ無く。
内面的に。
…何て。
無理な話。
夜中起きてると考えが巡って、余計寝れねぇ。
昨日そのまま寝たから、下半身が気持ち悪いし、シャワーでも浴びよう。
そんな事を考えながら京さんを起こさない様に起き上がる。
「何処行くん」
一瞬、響いた声に呼吸が止まる。
振り返ると、京さんの両目は開かれて俺を見る。
「あ…起こしちゃいましたか。スミマセン」
「別に」
まだ夜中。
明日仕事あるって言ってましたよね。
「シャワー、浴びて来るんで」
「るき」
「はい」
「来いや」
京さんにそう言われたら、断る理由は無い。
大人しくもう一度、ベッドに戻る。
…と、同時に墨塗れの京さんの腕に強く引かれ抱き締められた。
体勢も何も整って無かったから、かする京さんの新しい刺青。
「あっ、すみませ…」
「るき」
反射的に身体を離そうとしたけど、力強い腕に負けて無理。
こんな事、されて嬉しく無いワケが無いから本気で離れたいワケじゃねぇし。
乱暴な様で、泣きそうなぐらい優しい腕。
「寝れんのか」
「…はい」
「ふーん」
「……」
「僕今な、寝呆けとんねん」
「え?」
「やから、話聞いたるわ」
「きょ…ぅさん」
嘘。
何でそんな事言うんですか。
そんな言葉、貴方には似合わない。
でも、何か。
ヤバい。
泣きそう。
「京、さん…」
「うん」
「置いて、行かないで下さい」
「うん」
「好きです」
「知っとる」
「怖いんです」
変化が。
外見が変わるだけなのに、何が変わるんだろうって思うのに。
どんな心境で、何を思って、ソレを増やすかは俺にはわからない。
けど増える度に不安になる。
過去の思い出が払拭出来て無い所為か。
「お前はな」
「はい」
「黙って俺に追い付きゃいいねん」
「…」
「必死んなって、藻掻いて、付いて来いや」
手は、差し伸べたるから。
夜中だから。
京さんが優しいのは。
そう、思わなきゃ、嬉しくて死にそう。
「お前は、ちゃんと此処におるから」
その意味を、俺なりに解釈していいですか京さん。
好き過ぎる。
ゆっくり、ただついばむだけのキスに意識が傾く。
「…るきのアホ」
うん。
下らない事で悩んでスミマセン。
それを払拭してくれる京さんの様に大人になれたらいい。
でも、こうして時折、甘やかしてくれんなら。
俺はガキのままでいいです。
終
20081224
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