深夜の我儘/京流
深夜。
連日の打ち合せで遅くなる京さんの晩ご飯の支度をして、テーブルに並べる。
俺は先に食べて風呂まで入ったけど。
席に付いて食べ始める京さんの前に座り、ずっとお願いしたかった事を切り出してみる。
「お願いします」
「嫌。無理。アホか」
「どうしても行きたいんです」
「やから無理」
「24日か25日のどっちかでいいんで!ライブのパス下さいお願いします!」
「煩い」
京さんは心底嫌そうな顔をしつつ、箸を進める。
飯食ってる時なら京さんも強行手段に出ないかなって思って。
お願いしてみたけどやっぱりダメで。
「俺も一緒にクリスマス過ごしたいです」
「無理やろ。お前関係者席におったら丸分かりやん」
「ステージの袖…」
「邪魔」
そうですよね(凹)
24日から26日、京さんはライブで。
世間的にはクリスマス。
クリスマスを一緒に過ごそうとか、そんな甘い雰囲気じゃ無くてクリスマスにある京さんのライブを見たいって言うか。
いちファンとして行きたい。
「…………」
お互い沈黙の中。
かちゃかちゃと食器の音だけが響く。
どうしよ。
実は普通にチケット取っちゃったんだけど(当選してよかった)
パス出してくんないって事は行ったら怒るんだろうか。
後ろで見たら帰ろうかな。
「…来たら怒るで」
「え」
「お前、チケット持っとるやろ」
「な、んで」
わかったんですか。
ってか、何で俺は此処まで拒否られんだろ。
「郵便物」
「…あ」
「ファンクラブ入るとか恥ずかしい事やめろや」
「ファンですから」
「は」
うわ、馬鹿にした様に笑われた。
でもその顔好き。
格好良い。
「…何でライブ行っちゃ駄目なんですか…」
「つーかパスで見たいなら29日でえぇやん」
「24日か25日がいいんです」
「ふーん」
京さんが晩ご飯を食べ終えて箸を置く。
煙草に手を伸ばし一服。
その一連の動作をじっと見つめる。
手元。
口元。
全ての流れが様になってる。
こうやって、京さんの全てを見ていたい。
ライブの京さんも、好きだから。
「るき」
「はい」
「僕がアカン言うとんの、言う事聞けへんの?」
「…すみません」
京さんの口から吐き出される、紫煙と言葉。
…ズルい。
そう言われると何も言えなくなんじゃん。
「横浜はキャパ以上やし、お前も一応ツラ割れとる仕事やし、騒動なっても困んねん」
「…はい」
京さんの言う事も、わかります。
それでもまだ素直に受け入れる程、大人になれていない俺は釈然としないまま、立ち上がって京さんが食べた後の食器を片付け始める。
チケットどうしようかな、とかそんな事を考えながらキッチンで洗い物。
他に譲っつってもなぁー…。
そんな事を考えてると。
「横浜な」
「…え?」
不意に聞こえた京さんの声に耳を傾け視線を向けると、煙草を灰皿に揉み消す姿。
「横浜。僕打ち上げ出ぇへんし。疲れてすぐ寝るけど、えぇ子にしとったらホテル教えたるわ」
「ッ、有難う御座居ます」
やった。
そう言うトコ、好きです京さん。
さっきとは打って変わって上機嫌で洗い物を再開して。
チラリと京さんの方を見るとまた煙草を吸いながらテレビのチャンネルを回してる。
ライブ見れ無いのは残念だけど。
ヤバい。
幸せ。
今から楽しみ。
終
20081222
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