必要不可欠/京流




京さんのいない部屋。
デカいベッドに1人寝て、起きて、変わらない朝。
でも寂しい。

朝起きてすぐにする事は煙草、と携帯チェック。
肺が煙に満たされる中、カチカチと操作して見る携帯。
メール。

あ。

オフィシャルの、京さんからのメール。
珍しい。
今は26日、ライブ終わったって事は22時?
時差、かなりあるんだな。
じゃぁ今電話しても向こうは夜中…声聞きてぇ…。

何だこのメール。
可愛すぎる。
俺とのメールで用件だけとか、内容が違い過ぎ。

ファンメで毒づいたり、たまにこう言うメール送って来たり。
ファンを振り回し過ぎだろ。
畜生。
ファンとしても大好きだ。


電話待ってるとは言われたけど。
さすがに、向こうが夜中ってわかってんのに電話をすんのも気が引けて、京さんにメールを送る。
灰皿に灰を弾きながら、ボタンを押して操作。

俺が京さんにメールを頻繁に送るけど、送る時間はまちまちだったりする。

から、メールを送ってすぐに電話が来た時は驚いて煙草を落としそうになった。


「ッ、もしもし」
『おーおはようさん』
「おはようございます。京さん、そっち夜中じゃ…」
『ん、そやで』
「寝なくて大丈夫ですか?」
『せやなぁ…めっちゃ眠い』
「寝て下さいよ。残り4本あるんですよね?」
『ならメールすんなやボケ。起きてもうたわ』
「マジっすか。すみません…」
『嘘や嘘。起きとったから』
「もー…何なんですか」


京さんの笑う声。
機嫌めちゃくちゃ良さそう。
ライブ後でテンション上がってんのかな。
そう考えながら、煙草を灰皿へと押し付ける。


『やって、るき絶対メール来ると思っとったから。アレ見て』
「…待っててくれたんですか?」
『どうやろな』
「嬉しいです」
『答え言うとらんやん』
「勝手に解釈したんで」
『前向きな奴やな〜』


他愛の無い会話。
でもそれが幸せで、嬉しすぎる。
それと同時に会えない寂しさも増す。

さっきは声が聞きたい、と。
声が聞けたら会いたい。
欲求は我儘すぎる。


「…京さん寂しいです」
『なん、どしたんいきなり』
「声聞いたら会いたくなりました」
『ほなら、こっち来たらえぇやん』
「えぇ!?マジですか!」
『嘘や。何やお前言うたらほんまに来そうで嫌やわ』
「えー…残念…」


いや、京さんの許可が出たらマジで行くよ、俺。
そうまでして、会いてぇし。


『もうすぐ帰るんやから、我慢せぇ』
「…はい」
『めっちゃ可愛がったるわ』
「すっげぇ、楽しみにしてます」
『は、淫乱』


あー…京さんの嘲笑混じりの声とかも超好き。
格好良い。
半月、会わないだけで寂しすぎる。

電話をくれたのが、京さんも寂しかったからって事にしてもいいですか。


携帯は、こうして声や文章だけでも届けてくれるから。
文明開化に感謝だな。


「残り4本、最高のライブにして下さい」
『当たり前やん』
「好きです」
『うん』
「愛してます」
『そうか』
「京さんは?」
『はッ』
「ちょ、鼻で笑わないで下さいよ!」
『いやだって、わざわざこの、僕が、こんな時間に電話してやっとんも察する事が出来ん程アホなんかと』
「…アホじゃないです」
『ほなわかるやろ』
「…はい」


京さん狡い。
でも好き。


『ほな僕寝るわ』
「あ、はい、おやすみなさい。愛してますから!」
『しつこいで』
「言いたいんです」
『ふーん』
「ゆっくり寝て下さいね」
『おー』
「おやすみなさい」
『ん』


京さんが電話を切るのを待って、通話終了ボタンを押す。
あーもう。
朝から何だ。
幸せ過ぎる。

まだ微かに残る京さんの匂いを求めて、京さんが寝る側へと寝転ぶ。


好きです愛してます。
残り4本、全力で。
そして俺の元に帰って来て下さい。

携帯の着信履歴を見て、思わず顔が綻んだ。




20090128

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