蜜の蜜A※/京流




「………」
「スミマセン、遅くなりました」


京さんの家に着いて、チャイムを押すと不機嫌丸出しの表情で煙草を咥える、京さんが扉を開けた。
謝罪の言葉を告げ、顎で入るように示されて中へと入る。



「金」
「あ、はい」


ソファに座って、俺が渡した金をその場で遠慮無く数える。
その姿を、少し離れた位置でただ立って見守る。

京さんが煙草の灰を、落とす仕草も、一つ一つが目で追う対象。



「臭いなぁ…」
「え?」
「お前、ほんま臭い」


ダンッと乱暴に、俺が渡した金をテーブルに投げる。
散らばる札。

それよりも、京さんの言われた言葉にドキッとした。
やっぱ、風呂に入ればよかった。


「何や、そないな身体でも女抱けるんやな」
「……ッ」


嘲笑。

ヤバい。
バレた。

俺がどうしようと、俺の勝手。
そう思っていても、俺は京さんには逆らえ無い。

嫌がる?
関係を切られる?
切られるのだけは、嫌だ。

京さんが煙草を灰皿に押し付けて、ゆっくりと立ち上がる。
顔には笑みを張りつかせたまま。
何なのか、何をされるのか想像がつかなくて、ただ緊張に身体を強ばらせて立ち尽くす。


「るき」
「は──」


名前を呼ばれて返事をする前に、思い切り頬を殴られた。
構えも何をしていなく、身体が床へと飛ぶ。


「い…ッ」
いってぇ…。


それでも京さんが近づいて来て、間髪入れずに腹を蹴られた。
痛みに庇う様に身体を丸めても、痛みが治まる事は無く断続的に襲う。


「なぁ、どんな気分なん?女とヤった後に僕に掘られに来る気分て」
「あ"…っ、きょ、さ…!」
「聞いとんやろがコラ」
「が…っ」


返事をしたいけど、京さんが馬乗りになって殴って来て、上手く言葉が紡げ無い。
何て答えればいい?
いや、多分、どんな答えでも今のこの状況の中では無意味。
京さんにとって、理由や言い訳はどうでもいい。


だって、今。
まさに殴るのが楽しくて仕方が無いって表情。


痛みで涙が出て、視界が霞む中見える大好きな顔。
殴る事で京さんの気が済むのなら。


「ッは…あー…疲れた。オイ、舐めろや、ホラ」
「……ぅ…」
「早よせぇ」
「んン…っ」
「歯ぁ立てんなや」
「ん…」


殴られて、血の味がする基地ん中に、虐待する事で性的興奮を覚えるサディストの勃ち上がった物を無理矢理突っ込まれた。
首の横に膝を付き跨ぐ体勢で喉奥まで咥えさせられるソレ。
自分の血と、京さんの先走りが交じって気持ち悪い。
吐き出す事は許され無いから、力無く吸い付き首を動かす。



「なぁ、美味しい?女のマ○コ舐めるんとチ○コ舐めるん、どっちが好きやねん」
「んァ"…っ」

そんなの。
決まってる。

「きょ、さんの…」
「は、変態」
「ん"──ッ」


殴られて感覚が麻痺してんのか、いつもの様に口に力が入らない。
焦れったい愛撫に舌打ちをした京さんが、前髪を掴んで腰を動かして来た。

喉の奥まで容赦無く入って来るソレに、また涙が溢れる。
苦しい。


「フェラも満足に出来んのかアホ!!」
「んんン…ッ」
「役立たずの愚図やな…!」
「ん"ん"…っ」


御免なさい。
御免なさい京さん。

頑張りますから、捨て無いで下さい。


それだけを思って、好き勝手に動くソレに少しでも快感を与え様と力を振り絞って吸い上げる。
口の端から、唾液と血が交じった液体が流れて気持ち悪い。


「ッ、舌出せ…!」


口内で京さんのが堅さを増すと、一気に引き抜いて目の前で扱く。
言われた通り、口を開けて舌を出すと、その上に生温い白濁が放たれた。

何の躊躇いも無く、飲み下す。
精液と血の味。


「…ご馳走、様…でした…」
「……」

息も絶え絶えに挨拶すると、俺の上から退く京さんの姿が目に入った。
俺は身体中が痛くて起き上がれ無い。


転がってる俺に興味は失せたのか、京さんは無言で立ち上がりソファへと座る。
煙草を咥え、ジッポの音。
目線だけは京さんを捕らえて離さない。


「きょ…さん…」
「…あ"?」
「…また、呼んで…下さい…」
「………」
「お願い、します…」
「…お前、帰れや」
「……はい…」


先程、俺が女にした事を簡単に京さんもする。
ただの、貢ぎって立場はそんな軽いモンで、京さんの立場の気持ちは凄ぇよくわかる。
だから、悲しくて、痛い。

待つ事しか出来ねぇから。



痛みに震える身体を起こして、無理矢理、引き摺る様にして玄関へと向かう。
京さんの方をチラリと見るけど、視線が交わる事は無かった。




「                    」



「え?」
一瞬、何か聞こえた気がして振り向くも、京さんは煙草を吸って微動だにしないまま。

気の所為か…。
殴られ過ぎて幻聴が聞こえるとか?
笑える。

「…失礼、します」


返事は無い。

次も呼んでくれる事を願って、俺は金を用意します。
どんな手を使っても。



金でしか、京さんを繋ぎ止める術を知らない俺は、本当、救い様が無い。




20090104



『…誰も俺の事だけを見てくれへんのやなぁ…』



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