×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
舌出して嘲笑え
▼寝る子は育つ
真選組屯所の中でも中庭の横にある特に日当たりの良い部屋に横たわったまま惰眠を貪る二人の元へと足音と共に騒音の主が近づくが、二人は寝転がったままなんの反応も見せず、動かない

「起きろテメェら!!!」


飛び込んで来た土方の大きな声とは対照的に、声をかけられたはずの沖田と山野は動かない。
これはよく見られる光景ではあるのだが…

運悪くもたまたまそれらが全て見える位置の廊下を歩いてしまっていた山崎が驚いたのは寝ている二人の体勢である。
一番隊隊長である沖田は隊士に恐れられている。それはその強さへの畏怖もあるがそういうことではない。単純に普段の行いがドS過ぎて下手に尾を踏むのが怖い、というやつである。山野はそんな沖田が締める一番隊の隊士であるが、特に沖田と仲が良い。一番隊には血気盛んな若手が多く配属されているがどちらかと言えばそいつらは沖田に従順な隊士である。対して山野は勤務中は沖田に従うが、勤務外では「沖田」と呼び捨て、普通の友人同士の様な距離感で接している。だからだろうか、

「なんで山野は沖田隊長の腹を枕にして寝れるんだ…え、こわ」

惰眠を貪る二人の体勢は思わず山崎が口にしてしまったそれであった。いつもの如くふざけたアイマスクを着けて横たわる沖田の腹を枕にして山野は眠っていた。山野は着流しを着ているが沖田は隊服であるためまだ勤務中なのであろう。土方が怒っているのは沖田がサボっているからか…。それにしても沖田の腹を枕に何ぞ恐ろしい…山野の肝はどうなっているのかと恐れを抱いているその時に、怒りを耐えかねた土方の雷が落ちたのであった。


「人の腹枕にして寝るたァいい度胸でィ」
「悪かったって俺枕ないと寝れないんだよ大体先にやって来たの沖田じゃん」
土方からの雷をおちょくり投げ返し頭にたんこぶを作った二人が正座を崩しながら口を開いた。
頭をかきながらジロリと山野を見る沖田を尻目に気にすることなくそう言えるのは山野の強みだろう。

「三時間も腹枕させられた俺に比べたらたった一時間しかやってないんだから俺ってばやさしー」
「嘘つけィ…土方さんが来なかったらそのまま三時間やり返すだっただろ」
「もっちろーん」
「死ね山野」
「仕事しろ沖田隊長」
「ッチ」

舌打ちと共に立ち上がった沖田は部屋から出ていき、部屋に残ったのは山野…

「ざきさーんいつまでもそこにいないでこっちおいでよ」

と山崎である。

「っえ」

嫌そうな顔をした山崎を有無を言わせず寝転がした
山野は山崎の腰の上に頭を乗せる。暫くぽつりぽつりと会話を続けていたが、ふと腰にかかる重みが増したことに山崎は気づいた…が

「え、山野?」

寝始めた山野は動かない。
最初は渋々受け入れてた山崎だったが、長時間腰へと負荷がかかり続けると流石に痛い。
人の腰の上で昼寝をしている山野の頭など落としてしまえばいいのだが、如何せんその後が恐ろしい。山野の仕返しはねちっこいのである。

モゾモゾと動くのをあきらめたらしい山崎の気配を察した山野は寝たフリをしたまま山崎の顔がみえないように寝返りを打ち、さていつまで続けるかと唇を歪めたのであった