「人生の転換期はいつか」と聞かれたら、私は間違いなく今だと答えるだろう。



生まれも育ちもごくごく普通の私が、たまたま遊びに来た東京で何故かスカウトされ、あれよあれよというまに芸能界へと足を踏み入れたのは今から約2年前。

最初は右も左も分からず、人見知りの性格も相まってなかなか新しい環境にとけ込めないまま時が流れ、たまーに頂けた雑誌のモデルの仕事をこなしながらアルバイトで生計を立てる毎日。


そろそろ潮時かな…、なんて考えていた。
そんな日々にある日突然光が刺したのは、たった半年前の事だった。




元々幼少期の頃から歌うことが好きだった私。
保育園に通っていた頃なんかは、先生に「名前ちゃんはいつもお歌を歌ってるね」なんて呆れたように言われるくらい常に歌っていたし、両親もそんな私の歌を気に入ってくれて、時間が空けばカラオケに連れて行ってくれてた。

その甲斐あってか、人より少しだけ歌が上達したみたいで。

何の気なしにSNSに上げた私の歌声は、忽ちバズってしまいそこからドンドンと仕事が舞い込んできたのだ。


今ではモデルの仕事は愚か、アーティストとしてのお仕事を頂けるようになり、さらに最近ではCMやドラマに映画といった幅広いジャンルでオファーを貰えるまでに急成長したのだ。



正直自分でもまだ実感できてないくらいに目まぐるしい環境の変化に、私はまだまだ混乱中で。
でも、それと同時にもちろん喜びも感じていた。


そんなある日、私にあるドラマ撮影のオファーが舞い降りた。
今どきよくあるラブコメもののドラマらしく、私はヒロインとしてオファーが来たらしい。

どんな仕事もなるべく断らない、頂いた仕事は全て有難いもの、というポリシーのもとこれまで働いてきた私は、当然のようにこのオファーを受け入れた。
そう、キャスティングなんて一切見ずに受け入れたのだ。



あぁ、いまだからこそ言える。
「人生の転換期はいつか」と聞かれたら、私はやっぱり今だと答えるだろう。

このドラマ撮影で彼と出会わなければ、きっと私の人生は酷く味気ないものになっていたのだから。






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